動画サイトにアップロードした自作の動画を勝手に使われたと訴えられた情報サイト。利用規約にのっとり、公式引用タグを利用しても、著作権侵害に当たるのだろうか――IT訴訟事例を例にとり、システム開発にまつわるトラブルの予防と対策法を解説する人気連載。今回は、Web上のコンテンツの「著作権」をテーマに解説する。
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IT訴訟事例を例にとり、トラブルの予防策と対処法を解説する本連載。今回は、久しぶりに著作権の問題を取り上げる。ただしいつもとは異なり、システム開発の成果物に関する著作権ではなく、動画閲覧サイトに個人がアップした動画を他者が自己の運営するサイトにリンクを張り、同サイトから動画を閲覧可能にしたことが著作権侵害に当たるのか、という判例だ。
まずは、簡単に事件の概要を振り返る。
ある個人Xが、自己の特異な行動を撮影して動画サイト(ニコニコ動画)にアップした。動画は本人が上半身裸で飲食店に入る様子を撮影したもので、時に、自分の顔を中心に据えて撮影するなど特徴的なアングルのものだった。
この動画に着目をした、ある情報提供サイトの運営者Yは自社のサイトにこの動画へのリンクを張って公開し、視聴者は動画をサイト上から閲覧することができる状態だった。
これに気付いたXは、これは情報提供サイトによる著作権侵害だとして、動画および、動画の紹介記事、寄せられたコメントの削除を求めるとともに損害賠償を求めて裁判となった。
上半身裸で飲食店に入り、その様子を撮影して公開するという行為自体、迷惑行為あるいは営業妨害に当たるのではという論もあるかもしれない。その可能性もあるが、裁判は著作権侵害をXが訴えたものなので、本記事はそれとは区別して考える。
さて、個人あるいは自社でWebサイトを持っているなら、他の人気サイトや記事などのリンクを張るのはよくあることだ。私が現在勤めている経済産業省においても、国民に向けた情報提供などを目的としたサイトにリンクを張っている。
本事件は、動画の著作権を主張する個人Xが、勝手にリンクを埋め込まれたことをもって、著作権侵害だと訴えている。こうした主張が通るのであれば、困惑する人や企業も少なくないのではないだろうか。
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