Windows 10 Homeだってできるもん――Homeエディションでも「できること/できないこと」まとめその知識、ホントに正しい? Windowsにまつわる都市伝説(175)

Windows 10は、ProやEnterpriseエディションにはあって、Homeエディションではサポートされない機能が幾つかあります。しかし、できることも増えてきました。今回は、ここ最近、Homeエディションでもできるようになったことを紹介します。ただし、これは2020年12月時点の話です。もし本稿を数年後に読んでいるのなら、できることがもっと増えているかもしれません。

» 2020年12月16日 05時00分 公開
[山市良テクニカルライター]

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「Windowsにまつわる都市伝説」のインデックス

Windowsにまつわる都市伝説

Windows 10 Homeが企業用途に向かない理由

 WindowsのHomeエディションは、「Windows 10」よりも前のバージョンから「Active Directoryドメイン参加不可」「グループポリシーやローカルコンピューターポリシーによるポリシー管理不可」「リモートデスクトップ接続(サーバ機能)の非搭載」「BitLockerドライブ暗号化の非搭載」(注:BitLockerデバイス暗号化はHomeでもサポート)という、主に企業向けの機能に制限があります。

 Windows 10ではこの他にも、以下のドキュメントにあるように「Windows情報保護(WIP)」「モバイルデバイス管理」「ビジネス向けMicrosoft Store」「Windows Update for Business(WUfB)」「Azure Active Directory(Azure AD)のサポート」といった企業向け機能がサポートされません。

 実は、この一覧には含まれない機能差も幾つか存在します。例えば、「Hyper-V」の機能はサポートされないため、Hyper-Vの仮想マシンやHyper-Vに依存する以下の機能は利用できません。

  • Microsoft Defender Application Guard(旧称、Windows Defender Application Guard)
  • Windowsサンドボックス
  • デバイスガード(デバイスガードのフル機能はEnterprise/Educationエディション限定機能)

 また、ポリシー設定に依存する「Internet Explorerのエンタープライズモード」も利用できません。「Windows 8.1」以前はポリシーに対応するレジストリ設定を作成することで、Homeエディションを「Windows Server Update Services(WSUS)」のクライアントとして構成できましたが、Windows 10 Homeではこのテクニックは利用できなくなりました。

Windows Updateは止められる――「更新の一時停止」機能

 Windows 10 HomeのWindows Updateは「自動更新」であり、それ以外の選択肢がないというイメージをお持ちの方は多いでしょう。それを理由に、機能更新プログラムや品質更新プログラムの延期設定が可能なPro以上の企業向けエディションを選択する個人ユーザーはいると思います。

 Windows 10 バージョン1803(April 2018 Update)では、Pro以上のエディションに「更新の一時停止」という機能が搭載されました。この機能を利用すると、「更新を7日間一時停止」ボタンをクリックすることで7日間、「詳細オプション」からは最大35日間あるいは「更新の再開」ボタンをクリックするまで、新しい更新プログラムの受け取りを一時停止することができます。

 この機能はWindows 10 バージョン1903(May 2019 Update)において、Homeエディションにも搭載されました。Windows Updateの毎月1回(米国時間の第2火曜日)の更新日前日に一時停止しておけば、“不具合があるかもしれない更新プログラム”の受け取りを延期して、その後数日の間に報告されるかもしれない問題の有無を確認できます。更新の確認やダウンロードが始まってしまっていたとしても、タイミングによっては「更新を7日間一時停止」ボタンをクリックすることで中止できるようです。

 Windows 10 バージョン1903以降は、新しい機能更新プログラムが勝手にインストールされるということもなくなりました。Microsoftがブロード展開を開始するまでの数カ月間は、新しい機能更新プログラムが利用可能であることを示す案内が表示され、利用者の都合に合わせてインストールを開始できるように改善されています(画面1)。この機能更新プログラムの案内機能はWindows 10 バージョン1903がリリースされる直前、2019年5月にWindows 10 バージョン1803および1809(October 2018 Update)にも追加されました。

画面1 画面1 「更新の一時停止」機能はWindows 10 バージョン1903からHomeエディションでも利用可能になった。このバージョンから機能更新プログラムのリリース後、すぐには勝手にインストールされることもなくなった

 Windows 10 バージョン2004(May 2020 Update)では、それまでPro以上のエディションにあった機能更新プログラムおよび品質更新プログラムの延期設定が、Windows Updateの「詳細オプション」から削除されました。そのため、「設定」アプリのWindows Updateの機能に関しては、Windows 10 バージョン2004以降、エディションによる機能差はなくなっているといえます(画面2)。なお、Pro以上のエディションの場合は、Windows Update for Businessのポリシーによる延期については引き続き利用可能です。

画面2 画面2 Windows 10バージョン2004のWindows Updateの「詳細オプション」。HomeとProでエディションによる機能差はない

Linuxシェル環境も利用可能に――WSL 2

 「Windows Subsystem for Linux(WSL)」は、Windows上のLinuxシェル環境で、Linuxバイナリをネイティブに実行できるエミュレーションを提供します。Windows 10 バージョン2004の新機能として、エミュレーションではなく、Hyper-Vの分離環境を利用して“本物のLinuxカーネル”を動かし、完全な互換性と高いパフォーマンスを提供する「WSL 2」が利用可能になりました。

 WSL 2のサポートは2020年8月の累積更新プログラムのプレビューによって、Windows 10 バージョン1903およびバージョン1909(November 2019 Update)にもバックポートされ利用可能になっています。

 Windows 10 HomeエディションはHyper-Vの機能を搭載していませんが、Windows 10 バージョン1903以降、Hyper-Vのサブセットである「仮想マシンプラットフォーム」の機能が搭載され、この機能によってWSL 2がHomeエディションでもサポートされます(画面3)。

画面3 画面3 Hyper-Vの分離環境を利用するWSL 2は、Hyper-Vを搭載していないHomeエディションでも利用できる

 なお、WSL 2と同じようにHyper-Vの隔離環境を利用する「Microsoft Defender Application Guard」や「Windowsサンドボックス」については、現状、Homeエディションはサポートされていません。

 WSL 2はアプリ開発者やLinuxフリーク向けの機能であり、一般ユーザー向けではありません。導入方法について詳しく知りたい方は、以下のドキュメントや公式ブログをご覧ください。

コンテナだって実行できちゃう――Docker Desktop Community

 Windows 10 HomeエディションでWSL 2がサポートされたことで、「Docker Desktop Community for Windows」がWSL 2バックエンド構成で利用できるようになりました。以前のDocker Desktopは、Hyper-Vおよび「Windowsコンテナ」機能に依存するLinuxコンテナ、およびWindowsコンテナのためのコンテナホスト環境でした。

 現在のDocker DesktopはWindowsコンテナ環境に加えて、WSL 2をバックエンドとして利用するLinuxコンテナ環境をサポートしており、Homeエディションにも導入可能です。以前はHyper-Vの仮想マシンで実行していたLinuxホスト環境を、WSL 2で実行する構成です(画面4)。つまり、Windows 10 Homeエディションは、Linuxコンテナ専用の開発および実行環境を提供できますが、WindowsでありながらWindowsコンテナを実行する環境は持ち合わせていません。

画面4 画面4 Windows 10とDocker DesktopにおけるWSL 2のサポートにより、HomeエディションでもDocker Desktopを利用可能に

Web閲覧の互換性も大丈夫――新しいMicrosoft EdgeのIEモード

 「Internet Explorer(IE)」の「エンタープライズモード」は、エンタープライズモードサイト一覧、または全てのイントラネットサイトをIEに誘導し、それ以外を「Microsoft Edge」で開く、レガシーなWebサイトのための互換性機能を企業に提供するものです。Chromiumベースの新しいMicrosoft Edgeになると、この機能はMicrosoft Edgeの「IEモード」に置き換わり、Microsoft Edgeのタブ内でIEエンジンを利用したレガシーWebサイトのブラウジングが可能になります。

 エンタープライズモードと新しいMicrosoft EdgeのIEモードは、グループポリシーやローカルコンピューターポリシーによる構成が必要なため、Windows 10 Homeエディションでは利用できません。しかしながら、2020年10月にリリースされた安定版のMicrosoft Edge バージョン86からは、IEモードの一部の機能がHomeエディションでも利用可能になっています。

 Microsoft Edge バージョン86からは「設定」の「既定のブラウザー」に「Internet Explorerの互換性」オプションが追加されました(画面5)。

画面5 画面5 Microsoft Edge バージョン86では、IEモードのサブセット機能の設定オプションが「設定」の「既定のブラウザー」に追加された

 「Internet ExplorerにMicrosoft Edgeでサイトを開かせる」は、Pro以上のポリシー設定「Internet Explorer統合を構成する」に相当するもので、IEで開こうとした互換性のないサイトまたは全てのサイトを、Microsoft Edgeのタブで開きます。

 「Internet Explorerモードでサイトの再読み込みを許可」は、「・・・」→「その他のツール」→「Internet Explorerモードで再度読み込む」メニューを利用可能にするもので、Microsoft EdgeのChromiumエンジンで、参照中のページをIEモードで再読み込みして表示する機能を提供します。Pro以上のエディションのIEモードとは異なり、エンタープライズモードサイト一覧によるIEモードへの自動的な切り替えには対応していませんが、手動でIEモードに切り替えることは可能です(画面6)。

画面6 画面6 「・・・」→「その他のツール」→「Internet Explorerモードで再度読み込む」および「Internet Explorerモードを終了」メニューを利用すると、ChromiumエンジンとIEモードによる表示を手動で切り替えることができる

筆者紹介

山市 良(やまいち りょう)

岩手県花巻市在住。Microsoft MVP:Cloud and Datacenter Management(2020-2021)。SIer、IT出版社、中堅企業のシステム管理者を経て、フリーのテクニカルライターに。Microsoft製品、テクノロジーを中心に、IT雑誌、Webサイトへの記事の寄稿、ドキュメント作成、事例取材などを手掛ける。個人ブログは『山市良のえぬなんとかわーるど』。近著は『Windows版Docker&Windowsコンテナーテクノロジ入門』(日経BP社)、『ITプロフェッショナル向けWindowsトラブル解決 コマンド&テクニック集』(日経BP社)。


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