アプリケーションのテスト目的などで、Windows 10上のHyper-Vで、ゲストOSとしてWindows 10を動かしたいというケースも多いのではないだろうか。インストール自体はそれほど難しくないのだが、意外な落とし穴もある。そこで、本稿ではWindows 10をゲストOSとする場合の注意点をまとめてみた。
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Windows 10上の「Hyper-V」で、ゲストOSとして何のOSを動作させたいだろうか。Webサイトの管理などからLinuxを動作させたいという人も多いと思うが、最も使う可能性が高いゲストOSはWindows 10ではないかと思う。
Windows Insider Programのプレビューや各種のソフトウェアテスト環境など用途はさまざまある。CPUやメモリに余力があるホストマシンなら、Hyper-V上でWindows 10をゲストにすることはそれほど難しくない。
ただ、Windows 10をゲストOSとして動作させる場合には、幾つか注意が必要だ。ここでは、Windows 10をゲストOSとしてインストール、設定する場合のポイントについて解説する。なお本記事は、Windows 10上のHyper-Vについての解説であり、Windows ServerでHyper-Vを使う場合とは多少事情が異なる場合がある。
Windows 10 May 2019 Update以降であれば、Windows 10をゲストOSとして利用できる「Windowsサンドボックス(Windows Sandbox)」がある(Windowsサンドボックスについては、Windows 10 The Latest「怪しいアプリも安全にテストできる新機能『Windowsサンドボックス』を使ってみる」参照のこと)。使い方や目的によっては、わざわざ仮想マシンを作ることなく、Windowsサンドボックスを使う方がよい場合もある。
下表は、仮想マシンのゲストOSとしてWindows 10をインストールする場合と、Windowsサンドボックスを比較したものだ。ソフトウェアのテストや怪しいソフトウェアの評価などには、Windowsサンドボックスの方が仮想ハードディスクファイルも使わず、手軽に利用できる。
Windows 10上のHyper-V | Windowsサンドボックス | |
---|---|---|
ゲストOSのWindows 10バージョン | 任意のバージョン、ビルドがインストール可能 | ホストWindows 10と常に同一バージョン、同一ビルド |
クリーンアップ作業 | チェックポイントを使い手動で行う | 自動(終了すれば変更は全て消去される) |
拡張セッション | エディションや設定、バージョンに依存 | 常に有効(Homeでは使えないため) |
インターネットアクセス | 仮想スイッチに依存 | ◯ |
LANアクセス | 仮想スイッチに依存 | サンドボックス設定でオン/オフ可能 |
ホストファイルアクセス | ネットワーク共有、拡張セッションを利用 | サンドボックス設定で指定フォルダへのアクセスが可能 |
フォルダファイルの読み取り専用アクセス | 共有先の設定による | サンドボックス設定で指定可能 |
サウンド、マイク | 拡張セッションモードで利用可能 | サンドボックス設定で利用可能 |
vGPU | RemoteFX vGPUは現時点では利用禁止状態 | ホストと同一のvGPU、ソフトGPUレンダリングをサンドボックス設定で指定可能 |
Windows Update(ゲストOS側) | 必要 | 不要(ホストOSと同一だから) |
ゲストOS言語 | 仮想マシン内で設定 | 英語のみ(変更不可) |
起動時スクリプト | ○ | ○(サンドボックス設定) |
終了時スクリプト | ○ | × |
チェックポイント | ○ | × |
コア数指定 | ○ | × |
動的メモリ割り当て | ○ | ×(最大量の指定のみ) |
Hyper-VとWindowsサンドボックスの違い(ゲストOSがWindows 10の場合) |
Hyper-Vでも、チェックポイントを使えば、終了時にチェックポイントを適用しないことで、Windowsサンドボックスと同等のことは行える(Hyper-Vのチェックポイントについては、Windows 10 Hyper-V入門「仮想マシンの状態を保存する『チェックポイント』」参照のこと)。Windows 10の複数バージョン、ビルドでソフトウェアの評価を行いたいといった場合には、Hyper-Vを使う方がいいだろう。
では、Windows 10の通常版やプレビュー版を、Windows 10上のHyper-VにゲストOSとしてインストールする方法を解説しよう。特に難しいところはないので、普通に作業を進めて構わないが、以下の3点には気を付けてほしい。特に、ゲストOSのWindows 10の初期設定では、アカウントをローカルユーザーとすることを強くお勧めする(理由は後述)。
まだHyper-Vを有効にしていない場合は、[コントロールパネル]の[プログラムと機能]をクリックして、[プログラムと機能]を開き、左ペインの[Windowsの機能の有効化または無効化]を選択し、[Windowsの機能]ダイアログを開く。このダイアログで「Hyper-V」にチェックを入れて、[OK]ボタンをクリックすると、再起動が促されるので、指示に従って再起動を行えば、Hyper-Vが有効化できる。既にHyper-Vが有効になっている場合は、この手順をスキップする。なお、Hyper-VはWindows 10 Pro以上のエディションでないと利用できない。Windows 10 Homeの場合は、Pro以上のエディションにアップグレードする必要がある。
Hyper-Vが有効になったら、仮想マシン上にインストールするWindows 10通常版/プレビュー版のISOイメージを用意する。仮想マシン上にインストールするWindows 10にも別途ライセンスが必要な点には注意してほしい。開発用途などで、一時的に利用するのであれば、「Windows 10の開発環境を取得する」ページからHyper-V用の「Windows 10開発環境」をダウンロードするという手もある。ただし、「Windows 10開発環境」はライセンスを購入する必要はないが60日間しか利用できないので注意してほしい。
入手とISOイメージの作成に関しては、以下の記事を参考にしていただきたい。
●Windows10通常版
●Windows10プレビュー版
仮想マシンを作成するには、[Windows管理ツール]にある[Hyper-Vクイック作成]を選択して、ISOイメージを選択してインストールするという方法がある。ただ、この方法では作成時に仮想マシン名ぐらいしか変更できず、汎用(はんよう)的ではない。ここでは「Hyper-Vマネージャー」を用いた汎用的な仮想マシンの作成方法を取り上げることにする。
作成手順を説明する前に、仮想マシンやホスト側の性能に影響する、重要な設定上のポイントについて先に触れておく。仮想マシンの性能は、仮想ハードディスクファイルを置く物理ドライブの性能に左右されやすい。このため、ハードディスクよりもSSDの方が望ましい。外付けよりも高速接続が可能な内蔵ドライブが望ましく、外付けの場合でもなるべくUSB 3.2やThunderboltといった高速接続のものを選ぼう。
メモリに関しては、Hyper-Vは動的メモリ割り当てを行うため、仮想マシンの起動時に必要になるメモリサイズを指定しておけばよい。動的メモリ割り当ては、ホストマシン側の状態や他の仮想マシンなどの状況に応じて割り当てが行われ、複数の仮想マシンを同時に起動しないのであれば、初期(起動)メモリに2G〜4GB程度を割り当てれば問題ないと思われる。
動的メモリ割り当てをせず、固定した割り当てにすることもできる。だが、最初の段階で4G〜8GBといったメモリが仮想マシンで確保されてしまうため、PCのメモリ容量によってはホスト側のWindows 10の使い勝手に影響してしまう。
さて、ISOイメージが用意できたら、[スタート]メニューの[Windows管理ツール]にある[Hyper-Vマネージャー]を選択して起動する。左ペインでホストマシン名を選択し、右側の操作ペインで[新規]−[仮想マシン]を選択する。「仮想マシンの新規作成]ウィザードが起動するので、これに従って作業を行う。以下の画面の手順通りにウィザードを進めていけばいい。
なお、上記の「仮想ハードディスクの接続」で[仮想ハードディスクを作成する]を選ぶと、次の「インストールオプション」でインストール用ISOイメージを指定して、仮想マシンの初回起動時にインストール処理をすぐ開始させることも可能だ。
後は指示に従ってウィザードを完了させれば、仮想マシンの作成は完了だ。
仮想マシンが作成できたら、作成した仮想マシン名が「仮想マシン」欄に追加されるはずだ。それを選択してから「操作」ペインの[接続]を選択すると、[仮想マシン接続]ウィンドウが開くので、画面の中の[起動]ボタンをクリックする。
仮想マシンが起動するので、素早く[Space]キーなどを押して、ISOイメージからから起動する(「Press any key to boot from CD or DVD」のメッセージが表示されたら何らかのキーを押す)。Windows 10のインストーラーが起動するので、物理PCにインストールするのと同様、インストールウィザードを進めればいい。
ただし、初期アカウント登録は「ローカルユーザー」にしておく(理由は、「Windows 10 May 2020 Updateと拡張セッションモードの関係に問題あり」参照のこと)。ただ、ローカルユーザーに設定する方法は少々分かりにくいので、簡単にやり方を紹介しておこう。
インストールウィザードを進めて[設定する方法を指定してください。]画面になったら、用途に合わせて「個人用に設定」「組織用に設定」のどちらかを選択する。ここでは「個人用に設定」で設定する手順で紹介する(インストール後「組織用」に変更することも可能)。
「個人用に設定」を選択すると、[アカウントを追加しましょう]画面になるので、ここでメールアドレスを入力しないで、左下の[オフラインアカウント]をクリックする。[サインインして、……]画面になるので、左下の[制限付きエクスペリエンス]をクリックして、画面を進める。[このPCを使うのはだれですか?]画面が表示されるので、ここでローカルユーザーのアカウント名を入力する。[次へ]ボタンをクリックし、後は指示に従って、パスワードやセキュリティの質問を設定すると、ローカルユーザーによるアカウントが作成できる。
次ページでは、ゲストOSとしてWindows 10をインストールする場合の注意点について解説する。
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