IT業界で働いているなら最低限押さえておきたい2021年施行予定、審議予定の法律を紹介する。
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2021年が始まった。2021年も新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響が大きくなる一方、デジタル庁設立が9月1日に予定されるなど、行政、民間のデジタル活用に向けた動きは加速し続けている。デジタル化の動きを受け、各種法律も改正や改正に向けた審議が予定されている。本記事では、IT業界で働いているなら最低限押さえておきたい2021年に施行予定、審議予定の法律(施行済のものも含む)をまとめた。それぞれに所轄官公庁、行政委員会の情報提供ページと法令へのリンクを記載しているので、詳しく知りたい方は確認してほしい。
2020年6月に成立した改正の一部が2021年1月1日から施行された。1月1日から施行された内容は「侵害コンテンツのダウンロード違法化」「アクセスコントロールに関する保護の強化」などだ。
従来、音楽と映像に限定されていた「違法アップロードされた著作物」のダウンロード規制(私的利用目的であっても違法)の対象範囲が拡大。対象範囲は漫画、書籍、論文、コンピュータプログラムなど著作物全般だが、全てのダウンロードが規制対象となるわけではなく、違法にアップロードされたことを知りながらダウンロードする場合に限定される。
コンテンツの不正利用を防止するアクセスコントロールに関して、これまではCD、DVDのみを念頭に規定していた条文について、ソフトウェアに用いられるライセンス認証も保護対象に含むことが明文化された。また、ライセンス認証などを回避するための不正なシリアルコードを提供することへの規制(3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金)も盛り込まれた。
意匠法に当たっては「複数意匠一括出願の導入」「物品区分の扱いの見直し」「手続き救済規定の拡充」の3点が2021年4月1日に施行予定だ。改正により、意匠出願時の手続きが簡略化される。
改正割賦販売法(割賦販売法の一部を改正する法律)は、FinTechの拡大に伴い多様化した決済サービスに対応できるよう「少額の分割後払い規制の導入」「審査手法の高度化への対応」「QRコード決済事業者などでのキュリティ対策強化」などを盛り込んでいる。2021年4月1日に施行予定だ。
「審査手法の高度化への対応」では、利用、返済実績や取引履歴などのデータを活用してより精度の高い限度額を設定できるようになる。
「割賦販売法の一部を改正する法律案」が閣議決定されました 経済産業省
デジタルプラットフォーム取引透明化法(特定デジタルプラットフォームの透明性及び公正性の向上に関する法律)は2021年春に施行予定の新しい法律だ。デジタルプラットフォームにおける取引の透明性と公正性の向上を図ることを趣旨としており、取引条件などの情報の開示や、自主的な手続きと体制の整備など、特定デジタルプラットフォーム提供者に対する措置などを定めている。
「特定デジタルプラットフォームの透明性及び公正性の向上に関する法律案」が閣議決定されました 経済産業省
改正法の施行時期は2021年後半から2022年前半とされており、具体的な施行日は未定だが、「個人による個人情報請求権の要件緩和」「漏えい等報告及び本人通知の義務化」「『仮名加工情報』の新設」「法の域外適用」などを盛り込んでいる。
個人情報の利用停止・消去などを個人が請求する場合、不正取得などの違反行為が認められるケースでしか請求ができなかった。改正法ではこれに加えて個人の権利または正当な利益が害される場合でも利用停止、消去などを請求できるようになる。また、6カ月以内に消去する短期保存データが保有個人データに含められ、開示、利用停止などの対象になる。
個人情報の漏えいが発生し、個人の権利利益を害するおそれがある(一定の類型に該当する場合に限定)場合、個人情報保護委員会への報告と本人への通知を義務化する。改正前は努力義務だった。
仮名加工情報は「他の情報と照合しない限り特定の個人を識別することができないように個人情報を加工して得られる個人に関する情報」と定義している。2015年改正で創設した「匿名加工情報」は個人情報を復元できないことが要件にあるが、仮名加工情報にはこの要件はなく、データ利活用の規制が実質緩和されるといえる。
改正により、外国事業者も適用範囲の該当し、改正法全ての規制対象となる。また、外国にある第三者への個人データを提供する際は、移転先事業者での個人情報の取り扱われ方などを本人へ情報提供することを求めている。
2021年にはこの他にもデジタル庁設置に向けた法案や、IT政策の基本方針を定めた「IT基本法(高度情報通信ネットワーク社会形成基本法)」の改正、行政手続きにおける書面主義、押印原則、対面主義の見直しに向けた方針などが国会で審議される予定だ。
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