グローバルに活躍するエンジニアを紹介する本連載。前編に引き続きPhilippe Godbout(フィリップ・ゴドブ)氏にお話を伺う。日本法人のリーダーとして働く同氏が仕事で最も魅力を感じるところとは何だろうか。
世界で活躍するエンジニアにお話を伺う「Go Global!」シリーズ。前編に引き続き、Dassault Systemes(以下、ダッソー)の日本法人でマネージング・ディレクターを務めるPhilippe Godbout(フィリップ・ゴドブ)氏にご登場いただく。つながりやすくなった世界でエンジニアは、企業は、何に注力すべきなのか。聞き手は、アップルやディズニーなどの外資系企業でマーケティングを担当し、グローバルでのビジネス展開に深い知見を持つ阿部川“Go”久広。
阿部川“Go”久広(以降、阿部川) シアトルでボーイングとの仕事を何年かされた後、また日本にいらっしゃったんですよね。以前とは立場も変わり、アジアパシフィックを統括する、インダストリー担当のバイスプレジデントとして来日されます。
フィリップ氏 はい。次は、ボーイングのように大きなプラットフォームに皆が集まるのではなく、各企業の事情に合わせた個別のアプローチが必要になる仕事でした。本来は仕事を始める前にどういったアプローチが効果的か、どのようなプロセスにすべきかといったことをコンサルタントと検討すべきなのですが、当時ダッソーにはコンサルタントがいませんでした。そのため、早急にコンサルティングできる組織を構築する必要がありました。
私のミッションはアジアでそういったコンサルティングができる組織を育てることでした。さまざまなスキルセットを持った方々を採用し、日本と、当時成長著しかった韓国にチームを構築し、他にも中国、インドでも採用を強化し、ベストプラクティスの構築を目指しました。そのような業務を4年ほど行い、現在ではコンサルティング機能を持った組織が精力的に活動しています。
その仕事が一段落した後、少しの間モントリオールに戻っていました。私はしばらくそこで暮らしたかったのですが、妻に「寒い」と言われてしまって……(笑)。
阿部川 カナダは寒いですからね(笑)。いつ結婚されたのですか。
フィリップ氏 2000年に日本に来た時は独身でしたが、すぐに日本は私にとって特別な地になり、そして私の人生をより素晴らしいものに変えてくれる女性とも出会い、2001年に結婚しました。モントリオールは私の生まれ故郷なので好きなのですが、妻が言うには「カナダは寒すぎる」と。ご承知の通り、冬のモントリオールは、(寒さで)町がシーンとしています(笑)。ここに一生住むつもりなの、と聞いてくるわけです。
阿部川 なるほど、それは手厳しい(笑)。
フィリップ氏 ただ、妻の言うことも分かります。私自身、故郷を離れて20年近くたってみると、「冬のカナダは寒い」と思いましたから(笑)。幸いなことに、当時の私の統括していた範囲は北米だったので、仕事ができるのであれば、どこでも行けたわけです。以前住んでいたシアトルを妻は気に入っていましたので、その話をした翌年にはシアトルに引っ越しました。
阿部川 シアトルでの業務はこれまでとどう変わりましたか。
フィリップ氏 パートナーと関連する仕事が多くなりました。顧客をサポートするために、多くのリセラーやビジネスパートナーと協業したり、新しいビジネスを開拓したりしていました。ビジネスパートナーの多くは、中小企業やスタートアップ企業で、現在、至るところで起こっている「デジタルトランスフォーメーション」(DX)を、このとき既に経験できました。
阿部川 未来を先取りして、現在へ持ってくる「タイムマシン経営」のようなものですね。
フィリップ氏 はい。2019年に、当社のCEOのベルナール・シャーレスは、今後20年にわたる企業のビジョンを新たに発表しました。私もそのビジョン策定メンバーで、多くの議論を交わしました。その中で彼に「日本に行って、ここで議論されているような20年後の『わが社の在り方』に沿った日本法人を作ってくれないか」と言われました。
当時は現在と比べてDXは注目されていませんでしたが、既にダッソーは多くのDX案件を進行させていました。私は顧客のDXと同時に、当社自身のDX推進のために家族とともに日本に来たのです。
阿部川 2つのDXを推進されているということですね。日本法人のリーダーとしてどういった点に力を入れていますか。
フィリップ氏 どのようにすれば日本市場にダッソーが根付き、日本の顧客に貢献できるかを考えることです。ダッソーはグローバル企業であり、グローバルなビジョンを持っています。そのビジョンを基に、どのようにすればダッソーが日本の発展の助けになるかを見極めなければなりません。
「人」も重要です。私が常に意識しているのは、どうすれば顧客と私たちがより深く結び付くのか、互いに業務を尊重し合うことができるのか、ということです。そのためには顧客をよく知らなければなりませんし、顧客を助けられる適切な能力を持った人材が必要です。私の仕事はそういった人材を育て、正しい組織に配置することだと考えています。
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