NIIの研究チームは、自動運転システムを想定した「自動車の多様な振る舞い」をテストできるシミュレーション設定を自動的に見つける技術を開発した。「進化計算」と呼ばれる最適化技術を用いた。
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国立情報学研究所(NII)のアーキテクチャ科学研究系准教授を務める石川冬樹氏らの研究チームは2021年4月12日、自動運転システムを想定した「自動車の多様な振る舞い」をテストできるシミュレーション設定を自動的に見つける技術を開発したと発表した。「進化計算」と呼ばれる最適化技術を用いた。
自動運転は、経路計画が重要な位置を占める。経路計画とは、他車や歩行者などの周辺状況を踏まえて、継続的に自車が進行すべき向きや速度を定めていく機能だ。他車や歩行者にぶつからないだけでなく、加減速や曲がり方の度合い、走行レーン順守など、複数の観点から経路を決める必要がある。
こうした機能をテストするには多様なシナリオを用意する必要がある。同じ右折時でも「減速なく右折できる」「長時間減速し停止する」など、道路状況に応じて振る舞いは異なる。ところが多くのテストを実施しても、問題ないことがほとんどで「やむなく長時間減速・停止する」といった、検査したい特定の振る舞いはなかなか起きない。しかも「強いアクセルと大きなハンドル操作が同時に起きる」といった、複合的な振る舞いを意図的に引き起こすシミュレーション設定を見つけ出すことは非常に困難だった。
研究グループが開発したのは、急加速や急ブレーキ、大きなステアリング操作が長時間起きるようなシミュレーション設定を自動探索するテスト生成技術だ。
進化計算によるシミュレーションの試行を繰り返し、設定を調節することで「特徴的な運転の振る舞い」が長期間起きるシミュレーションの設定を見つけることができる。
通常の走行では起こりにくい、「強いアクセルと大きなハンドル操作が同時に起きる」「大きな加速の後に大きく減速する」といった、異なる2つの特徴的な振る舞いを意図的に引き起こすシミュレーション設定の探索も可能だ。
マツダが提供した経路計画プログラムにこの技術を適用したところ、ランダムシミュレーションではなかなか起きないような特徴的な振る舞いを生成できたという。例えば、信号がない交差点での右折時に、向かいから来る車と右から来る車のタイミングによって、大きく減速すると同時に大きくステアリングを切るといった振る舞いを起こすシミュレーション設定を生成できた。
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