Microsoftは2021年9月にリリース予定のChromium版Microsoft Edge バージョン94以降、メジャーバージョンのリリースサイクルをこれまでの「6週ごと」から「4週ごと」に短縮します。また、リリースサイクルの短縮に合わせて、より長い「8週ごと」の「拡張安定版(Extended Stable)」オプションを追加する予定です。
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Microsoftは2020年1月に新しいChromium版「Microsoft Edge」の安定版(Stable)を初めてリリースして以降、レガシーなEdgeHTML版Microsoft Edgeを新しいMicrosoft Edgeに段階的に置き換えてきました。レガシーなMicrosoft Edgeのライフサイクルは「2021年3月9日」に終了し、4月13日(米国時間)の累積更新プログラムによって(および3月の累積更新プログラムのプレビューで先行的に)、ライフサイクル期間中の「Windows 10」の「半期チャネル(SAC)」バージョンからレガシーなMicrosoft Edgeのコンポーネントを完全に削除しました。
つまり、更新管理が適切に行われている企業や組織では、既にレガシーなMicrosoft Edgeは存在しないことになります。言い換えれば、企業や組織は、新しいMicrosoft Edgeの更新管理と構成管理を本格化しなければならないということです。
新しいMicrosoft Edgeは「Microsoft Edge Update」という更新用コンポーネントを備え、アプリ自身で自動更新されます。企業や組織では、Windowsやその他にMicrosoft製品と同じように、Windows Updateや「Windows Server Update Services(WSUS)」「Microsoft Endpoint Manager(Microsoft IntuneやEndpoint Configuration Manager)」で更新を配布でき(画面1)、Active DirectoryのグループポリシーやMicrosoft Endpoint Managerで設定を管理できます(画面2)。
なお、新しいMicrosoft Edgeのグループポリシー管理用テンプレート(.admxおよび.adml)は、WindowsやWindows Serverには標準で含まれません。管理用テンプレートは、以下の企業向けのMicrosoft Edgeのダウンロードサイトで少なくとも「チャネル/バージョン」と「ビルド」を選択し、「ポリシーファイルを取得」リンクをクリックして入手します。
ダウンロードした「MicrosoftEdgePolicyTemplates.zip」に含まれる「\windows\admx」と「windows\admx\ja-jp(日本語環境の場合)」ディレクトリにある.admxと.admlを、それぞれポリシーを編集するコンピュータの「%Windir%\PolicyDefinitions」と「%Windir%\PolicyDefinitions\ja-jp(日本語環境の場合)」、またはポリシーのセントラルストアに配置します(画面3)。管理用テンプレートはメジャーバージョンごとに更新版が提供されるので、常に適切な管理用テンプレートを使用するように留意してください。
新しいMicrosoft Edgeは、Windows 10のコンポーネントの一部として提供されてきたレガシーなMicrosoft Edgeとは異なり、Windows 10とは別にメジャーバージョンおよびマイナーバージョンを更新する必要があります。新しいMicrosoft Edgeになることで、管理すべき対象と範囲が増えるということです。
Microsoftはこれまで「6週ごと」という安定版Chromiumのリリースに合わせ、安定版Microsoft Edgeを「6週ごと」のサイクルでリリースしてきました。同じChromiumを採用する「Google Chrome」の安定版も同様です。Microsoft EdgeとGoogle Chromeの現在の「6週ごと」というリリースサイクルが、2021年9月後半リリース予定のバージョン94以降、「4週ごと」に短縮されることが2021年3月に発表されました。
Microsoft Edge バージョン94以降、安定版の既定は「4週ごと」にメジャーバージョンがリリースされることになりますが、このリリースサイクルの変更に合わせて、「拡張安定版(Extended Stable)」オプションが利用可能になることも発表されています。
新たな拡張安定版オプションは、複雑な環境を管理し、厳しい計画やテストに基づいてアプリを展開しなければならない企業や組織のために設けられるもので、より長い「8週ごと」というリリースサイクルで提供されます。
設定や機能の詳細は明らかになっていませんが、最初の4週間は通常の安定版と同じ品質とセキュリティ更新を同じタイミングで取得でき、残りの4週間は最も重要な修正とセキュリティ更新を隔週で受け取ることができるとされています。拡張安定版オプションで新機能が追加されることはなく、全てのセキュリティ更新が提供されるわけでもないようです。
多くの企業や組織には、現在の「6週ごと」というリリースサイクルでも早過ぎるのではないでしょうか。セキュリティ修正やバグ修正のためのマイナーバージョンに至っては数日置きにリリースされています(例えば、2021年4月16日にバージョン90がリリースされましたが、その2日後、さらにその2日後にマイナーバージョンがリリースされています)。
また、グループポリシーで構成を厳密に管理している場合、メジャーバージョンに合わせて管理用テンプレートも新版が出るため、あらためてテストする必要があります。拡張安定版オプションにより、リリースサイクルを今以上に緩和でき、その分、余裕を持ってテストし、企業や組織内に展開できるようになるでしょう。
岩手県花巻市在住。Microsoft MVP:Cloud and Datacenter Management(2020-2021)。SIer、IT出版社、中堅企業のシステム管理者を経て、フリーのテクニカルライターに。Microsoft製品、テクノロジーを中心に、IT雑誌、Webサイトへの記事の寄稿、ドキュメント作成、事例取材などを手掛ける。個人ブログは『山市良のえぬなんとかわーるど』。近著は『Windows版Docker&Windowsコンテナーテクノロジ入門』(日経BP社)、『ITプロフェッショナル向けWindowsトラブル解決 コマンド&テクニック集』(日経BP社)。
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