1年以上前に筆者のラボ環境の仮想マシンにインストールした「Microsoft Endpoint Configuration Manager」を、最近リリースされた最新バージョンにアップデートしようと思ったら、あれやこれやで丸一週間かかりました。
この記事は会員限定です。会員登録(無料)すると全てご覧いただけます。
「Microsoft Endpoint Configuration Manager(略称:MEMまたはConfigMgr)Current Branch」は、かつては「System Center Configuration Manager(略称:SCCMまたはConfigMgr)」、もっと昔には「Systems Management Server(略称:SMS)」と呼ばれていた統合システム運用管理ツールです。ConfigMgr 1910からは「Microsoft Intune」などとともに「Microsoft Endpoint Manager」の一部になりました。
ConfigMgrは、2015年12月リリースのバージョン1511から「Current Branch」のサービスチャネルで提供され、1年に3バージョンのサイクルでリリースされています。「System Center 2016」ファミリー製品のリリースに合わせ、2016年10月1日以降にソフトウェアアシュアランス(SA)契約が失効するCurrent Branchユーザー向けに「Long Term Servicing Branch(LTSB)」版の「System Center 2016 Configuration Manager」が提供されましたが、これはCurrent Branchのバージョン1606をベースにしたものです。
筆者にとってこの製品は、遠い昔に勤めていた会社でシステム構築を担当した「Windows NT Server 3.5」上のSMS 1.0以来の長い付き合いです。ここ10年はあいさつ程度の付き合いといった感じです。歴史が長く、名称変更やブランド変更、サービス提供方法変更など、少し目を離していると、すっかり知らない世界になっています。
1年以上前、新しいブランドへの名称変更を機に、筆者のラボ環境の「Windows Server 2016」仮想マシンにConfigMgr バージョン1910のサイトサーバ兼データベースサーバをインストールしてみたことがあります。その際、直接ConfigMgr バージョン1910を新規インストールする方法はなく、ベースラインバージョンであるConfigMgr バージョン1902を新規インストールしてから、ConfigMgrの更新機能でバージョン1910にアップデートする必要がありました。
前回のConfigMgr バージョン1910へのアップデートはさほど苦労しなかったと記憶しています。前回はスクリーンショットを撮っただけで、特定の機能を評価したわけではありませんし、その後、使用することも一切ありませんでした。
ただ、Windows Server 2016のWindows Updateだけは続けていました。以下のドキュメントで説明されているように、ConfigMgr バージョン1910のサポートが「2021年5月29日」に終了したことと、2021年4月に最新バージョン「2103」が正式にリリースされたことを受け、最新バージョンにアップデートすることにしました。幸い、バージョン2103はバージョン1910以降からのアップデートにギリギリ対応しています。
結果から言うと、通常の手順でアップデートすることはできました。ただし、それに要した時間はなんと延べ1週間です。仮想マシンなので、状態の保存と復元を繰り返しながら、実質的な営業時間では2〜3日くらいだったと思います(画面1、画面2)。
ちなみに、開始したときには「Early update ring」向けのリリースであり、そのための追加手順が必要でしたが、完了した日(4月20日)はEarly update ringステージは終了し、一般向けに提供が始まった日でした。
こんなにも時間がかかった原因は分かっています。仮想マシンに割り当てたコンピューティングリソースが少な過ぎたのです。筆者のラボ環境にあるサーバは、10年以上前に導入した4コア(8論理コア)のIntel Xeon(Nehalem EP)プロセッサ、12GBのDDR3メモリ、SAS HDD(1万5000RPM)×3台と増設の1TB ATAディスク×2台というスペックです。
CPUやメモリ、ディスク性能全てにおいて、2020年にリプレースしたメインのデスクトップPCよりも劣るスペックです。今回の仮想マシンには、8コアの仮想CPUと7.5GBのメモリを割り当てています。ホストのシステムが予約している分があるため、8GBを割り当てることはできませんでした。前回の経験から、ConfigMgrの機能を評価できなくても、この構成でインストールするくらいなら何とかなると思っていましたが、そう簡単ではありませんでした。
「クラウドのIaaSを使えばいいじゃないか」という声が聞こえてきそうですが、機能をしっかり評価したいならともかく、インストール(アップデート)して終わりの前提です。クラウドは潤沢なリソースを割り当てられますが、その分、お金がかかります。
ConfigMgrのシステム要件を再確認してみましょう。以下のドキュメントによると、今回の仮想マシンで構築した環境は、「同じサーバー上でデータベースサイトの役割を持つスタンドアロンプライマリサイトサーバー」に相当します。推奨要件は「16コアのCPU、96GBのメモリ」です。筆者のラボ環境では、とても太刀打ちできません。最小要件の記載はありませんが、同じドキュメントの「ラボ展開」に、最大100クライアントを想定した最小ハードウェア推奨要件もあります。こちらには「2〜4コアCPU、8〜12GBのメモリ」とあります。メモリは最低でも8GBないと厳しいようです。
過去のバージョンのシステム要件はどうだったのでしょうか。以下のドキュメントにConfigMgr バージョン2012およびバージョン2012 R2のシステム要件が記されています。
「SQL ServerのStandard Editionを使用した中央管理サイト」の最小構成の例は、「8コア(Intel Xeon 5505プロセッサまたは同等のCPU)、32GBのメモリ」とあります。ただし、この構成は最大5万クライアントまでサポートするものです。当時の筆者のラボ環境(現在のスペックよりさらに劣る)でも、仮想マシンのリソースの割り当てに苦労することはなかったと記憶しています。
さらにさかのぼってみましょう。しかし、MicrosoftのサイトからはConfigMgr バージョン2007のドキュメントは削除されてしまったようで、以下のサイトのリンク先が存在しません(画面3)。
Webアーカイブサイトで失われたドキュメントを探したところ、「最小733MHz Pentium IIIのCPU、最小256MBのメモリ」(推奨2.0GHz以上のCPU、1GB以上のメモリ)というConfigMgr バージョン2007のシステム要件を掘り起こすことができました。ConfigMgr バージョン2007がリリースされた2007年といえば、「Windows Vista」がリリースされた年でもあります。Windows Vistaのシステム要件は「800MHz以上のx86またはx64 CPU、512MB以上のメモリ」(推奨1GHz以上のCPU、1GB以上のメモリ)であり、ConfigMgr バージョン2007と大差ありません。
そういえば、この当時以前は、クライアントとサーバのシステム要件の違いって特別なハードウェアに依存するものでない限り、大差ないことが多かった気がします。デスクトップアプリの方が、サーバアプリよりも厳しい要件の場合もあったと思います。
というか、ここ10年くらいでConfigMgrの求めるスペックが極端に大きくなったような気がします。ハードウェアの性能が良くなり、単価も安くなっているのに、ソフトウェアのせいで燃費が著しく悪いという印象を持つのは、アプリ開発に携わったことのない筆者の素人考えでしょうか。
岩手県花巻市在住。Microsoft MVP:Cloud and Datacenter Management(2020-2021)。SIer、IT出版社、中堅企業のシステム管理者を経て、フリーのテクニカルライターに。Microsoft製品、テクノロジーを中心に、IT雑誌、Webサイトへの記事の寄稿、ドキュメント作成、事例取材などを手掛ける。個人ブログは『山市良のえぬなんとかわーるど』。近著は『Windows版Docker&Windowsコンテナーテクノロジ入門』(日経BP社)、『ITプロフェッショナル向けWindowsトラブル解決 コマンド&テクニック集』(日経BP社)。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.