VMwareは新CEOの下で、大きく舵(かじ)を切っている。VMwareは年次イベントVMworld 2021で、マルチクラウドの世界に進むユーザー企業が直面する、次の課題を解決する企業になることを宣言し、関連製品・サービスを発表した。
VMwareは、ここ数年にわたり「マルチクラウド」という言葉を使ってきた。2021年10月上旬に開催した年次イベント「VMworld 2021」でも、このことは変わらなかった。
しかし新CEOの下で、同社は大きく舵(かじ)を切っている。複数のクラウドを使うという意味での「マルチクラウド」という言葉は浸透し、実践する企業が増えてきた。VMwareは、「マルチクラウドの世界に進む企業が直面しつつある、次の課題を解決する企業になる」と宣言し、関連製品・サービスを発表した。
2021年5月にVMwareのCEOとなったラグー・ラグラム氏に、VMworld 2021で前任のパット・ゲルシンガー氏との違いを聞くと、次のように答えた。
「マルチクラウドのリーダーになるために、当社のポジショニングを変え、積極的に戦略を遂行していくつもりだ。また、顧客はSaaSやサブスクリプションサービスをますます望むようになる(ので、対応を進める)。 この2つは、パットがいた頃から始めていたが、これまではバランスを取ったやり方をしていた。私はもっと積極的に進めていきたい」
ラグラム氏は「新しいチャプター(章)に入った」とも表現する。
具体的には、第1にVMwareが永続ライセンスを積極的に減らし、全ての製品をSaaSあるいはサブスクリプションのサービスとして提供する企業になること。これは、顧客自身による運用をできるだけ減らしていくことも意味する。
第2にVMwareは、マルチクラウド化を進める企業が抱える、次のような課題の解決を助ける企業になるという。
クラウドは購入モデルがバラバラ。運用やセキュリティ、ガバナンスの統合が難しい。アプリケーションは既存のものと新しいものとが混在する。開発チームと運用チーム、業務部門とIT部門の考えは異なり、対立しがちだ。あるクラウドを使い始めると、一般的には他のクラウドとの併用が難しくなり、ユーザー企業におけるさまざまな立場の人々それぞれにとって、自由や選択肢、柔軟性が失われがちになる。
VMwareは、こうしたマルチクラウドに伴う複雑さを低減し、ユーザー企業が自由と選択肢を保てるよう、さまざまなクラウドに共通して適用できるサービスを開発していくとしている。
注力する分野は、アプリケーションプラットフォーム、クラウドインフラ、クラウド管理、ネットワークとセキュリティ、安全なエッジとエンドユーザーの5つだという。
第1の点に関して、まずVMwareのインフラソフトウェアである「VMware Cloud Foundation(VCF)」は、ハイパースケーラーをはじめ、主要なクラウド事業者全てに採用されていると言っても過言ではない。
各国の規制に対応したセキュリティ/管理を提供するローカルなクラウド事業者も、「ソヴリンクラウド(Sovereign Cloud)」の流れに伴って、脚光を浴びている。こうしたクラウド事業者の多くも、基盤としてVMwareを採用している。
それ以前に、「VMware vSphere」やVCFは、企業の社内インフラとして浸透している。このため、同じVMware基盤によるハイブリッド/マルチクラウドの構成が可能だ。だが、それだけではユーザー企業にとって支出の無駄が生じやすい、
そこで、VMwareが2021年3月に発表したのが「VMware Cloud Universal」。
このプログラムで、顧客がVMware Cloudのサブスクリプションを購入すると、これがクレジットとして使え、オンプレミスのVCFだけでなく、「VMware Cloud on AWS」「VMware Cloud on Dell EMC」に振り分けられる。クレジットの振り分けは、ユーザー企業が自ら「VMCコンソール(VMware Cloud Console)」で行える。このプログラムの対象に、「Microsoft Azure」「Google Cloud Platform」やその他パートナーのVMwareクラウドが今後加わるのかどうかは公表していない。
VMworld 2021で、VMware Cloud Universalの対象にコンテナプラットフォーム製品「VMware Tanzu」の「Standard Edition」を追加すると発表した。興味深いのは、Tanzu Standardについては、クレジット利用がVCF上に限定されず、はるかに広く適用できることだ。
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