Windows Server 2022ベースの「Azure Stack HCIバージョン21H2」が正式リリース 何ができる? 新機能は?Microsoft Azure最新機能フォローアップ(159)

Microsoftは2021年10月19日、Azure Stack HCIの新バージョンのGAリリースを発表しました。新バージョンは、Windows Server 2022と共通のOSビルドで構築されたAzure Stack HCIクラスター専用OSです。

» 2021年10月28日 05時00分 公開
[山市良テクニカルライター]

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「Microsoft Azure最新機能フォローアップ」のインデックス

Microsoft Azure最新機能フォローアップ

あらためて、Azure Stack HCIとは何か?

 「Azure Stack HCI」は、検証済みの認定ハードウェアで構築される、仮想化専用のハイパーコンバージドインフラストラクチャ(HCI)のクラスターソリューション専用OSです。Azure Stack HCIが登場する以前、OEMベンダー各社は「Windows Server 2016」や「Windows Server 2019」をベースに、OS標準の仮想化機能(Hyper-V)、ソフトウェア定義のストレージ機能(記憶域スペースなど)、ソフトウェア定義のネットワーク機能(ネットワーク仮想化やソフトウェアロードバランサー、ネットワークコントローラーなど)で、HCIクラスターソリューションを提供していました。Azure Stack HCIは、HCIクラスター専用のOSであり、HCIクラスターソリューションをサービス化したものです。

 Azure Stack HCIクラスターは、オンプレミスのHyper-V仮想化基盤を置き換えられる他、「Azure Kubernetes Service(ASK)for Azure Stack HCI」(有料)を導入して、Microsoft AzureのAKSと一貫性のあるKubernetesクラスターとして利用することもできます。

 Azure Stack HCIは、HCIクラスターのハードウェアとAzure Stack HCIが提供する仮想化機能(ハードウェア購入費は別)を、コア数に基づいた月額固定料金のサブスクリプションサービスとして利用可能にします。利用には「Windows Admin Center」でAzure Stack HCIクラスターとしてセットアップし(画面1)、そのクラスターをAzureに登録してアクティブ化する必要があります(最初の60日間は無料)。登録後は少なくとも30日に1回、Azureと情報を同期し、同期されない場合は機能制限モードになります。

画面1 画面1 検証済みハードウェアであるため、複雑な記憶域スペースダイレクト(S2D)やSDNの構成もウィザード操作で簡単かつ短時間に完了する

新バージョンはWindows Server 2022と共通のビルドベース

 Azure Stack HCIの最初のバージョン「20H2」は、Windows Server 2019のServer Coreをベースに構築され、HCIインフラ向け機能(Hyper-Vなど)はWindows Server 2019と共通でしたが、Windows Server 2019(バージョン1809、OSビルド17763)とは異なるバージョン20H2、OSビルド17784での提供でした。「Windows Server 2022」ベースのAzure Stack HCIバージョン21H2は、Windows Server 2022と同じバージョン21H2、同じOSビルド20348での提供となります(画面2)。

画面2 画面2 Azure Stack HCIバージョン21H2は、Windows Server 2022と共通のOSビルドであり、品質更新プログラムも共通

 Azure Stack HCIバージョン21H2の新機能は以下の通りです。

  • クラスター化された仮想マシンでのGPUの使用
  • 動的なCPU互換性モード
  • 記憶域スペースダイレクトのストレージのシンプロビジョニング
  • 記憶域スペースダイレクトでの記憶域の修復速度の調整
  • Network ATCによるホストネットワークの構成と管理の簡素化
  • AMDプロセッサにおける「入れ子になった仮想化」のサポート
  • カーネルソフトリブート

 新機能の多くはWindows Server 2022と共通ですが、最後の「カーネルソフトリブート」については、検証済みの認定ハードウェアだから提供できるAzure Stack HCI統合システムだけの機能です。この機能により、ブート時のハードウェアのチェックや初期化の工程が省かれ、再起動が素早く完了するため、「クラスター対応更新」の全体の完了時間(つまり、ノードの少ない縮退運転の期間)が短縮されます。新機能の詳細は、以下のドキュメントを参照してください。

新バージョンが機能更新プログラムとして定期的に提供されるので、常に最新

 Azure Stack HCIは通常、OEMベンダーのハードウェアソリューションとしてプリインストールされた形で導入します。また、自前で用意したハードウェア(Azure Stack HCI認定ハードウェアを強く推奨)に、以下の無料試用版をインストールして、評価後に正式利用に移行することも可能です。無料試用版はAzure Stack HCIバージョン21H2のGA(General Availability:一般提供)に合わせて、バージョン21H2のイメージ(AzureStackHCI_20348.288_ja-jp.isoなど)に置き換えられています。

 既にAzureに登録済みのAzure Stack HCIバージョン20H2を導入済みであれば、Windows Admin Centerから「クラスター対応更新」を開始して、Azure Stack HCIバージョン21H2にローリングアップグレード(仮想マシンを稼働しながらのアップグレード)できるようになるはずです。

 この方法は、2021年夏以降、Azure Stack HCIプレビューチャネルに参加することで利用できました(画面3)。なお、Azure Stack HCIバージョン21H2のGAに合わせて、バージョン21H2は運用環境で利用可能となり、それまでのプレビュー価格は適用されなくなります。

画面3 画面3 クラスター対応更新による無停止でのアップグレード(画面は「Azure Stack HCIプレビューチャネルに参加する」から引用)

筆者紹介

山市 良(やまいち りょう)

岩手県花巻市在住。Microsoft MVP 2009 to 2022(Cloud and Datacenter Management)。SIer、IT出版社、中堅企業のシステム管理者を経て、フリーのテクニカルライターに。Microsoft製品、テクノロジーを中心に、IT雑誌、Webサイトへの記事の寄稿、ドキュメント作成、事例取材などを手掛ける。個人ブログは『山市良のえぬなんとかわーるど』。近著は『Windows版Docker&Windowsコンテナーテクノロジ入門』(日経BP社)、『ITプロフェッショナル向けWindowsトラブル解決 コマンド&テクニック集』(日経BP社)。


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