あの子が「できる」といったから、僕は“モノづくり”に目覚めたGo AbekawaのGo Global!〜Adrian Zulnedi編(前)(2/2 ページ)

» 2021年12月24日 05時00分 公開
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学校でもモノづくりは継続

阿部川 乗り物を作ったときにはPCなどは使っていたのですか。

ズルネディ氏 いいえ、設計図などは手で書いていました。一応、父のPCが家にあったのでちょくちょく触っていました。ほとんど海外のゲームで遊んでいただけですけどね。

阿部川 それがズルネディさんの最初のPCというわけですね。クリエイティビティを存分に発揮していた小学校を卒業し、中学校に入学します。中学校でも何か制作していたのでしょうか。

ズルネディ氏 そうですね。ゲームのコスプレ衣装などを作っていました。

阿部川 え、それは飾っておく目的ではなく、実際にかぶったり着たりできるものなのですか。

ズルネディ氏 はい、実際に着られます。美術部の活動として作っていたので結構しっかりしていました。紙で下地を作って、FRP(Fiber Reinforced Plastics)で固めて……といった具合に。

画像 実際かぶれます

阿部川 部活としては珍しい活動だと思うのですが、美術部の皆さんで作っていたのですか。

ズルネディ氏 いいえ、基本的に1人で作っていました。他の部員は絵を描いている人が多かったですね。結構、注目を浴びていた気がします(笑)。ちょうど父からマイコン制御について教えてもらっていたので、マイコンでLEDが発光するように加工をしました。作った作品をどこかに応募するといったことはなかったのですが、出来が良かったので今でも母校の美術室に飾られているそうです。

阿部川 すごいじゃないですか。小さいころから興味があったモノづくりがどんどん現実的なプロダクトになってきましたね。さて、その後工業高校に進まれます。やはり「モノづくりの道」に進むことを考えていたからでしょうか。

ズルネディ氏 はい、「工業高校ではどんなことが学べるのか」と期待でいっぱいでした。ただ、実際に勉強してみるとちょっと違うなと悩むことが多くなりました。そのうち「ここで『何か違う』と思いながら学ぶより大学で勉強する方が自分のためになるのではないか」と考えるようになりました。

「やるだけやってみて駄目なら違う方法で頑張ろう」

阿部川 3年生になる前に、大学入学のために高卒認定試験を受けたのはそういういきさつだったのですね。

ズルネディ氏 はい。残念ながら大学入試には落ちてしまいました。ただ、やるだけやってみた結果なので、悲観するのではなく違う方向を目指してみようと思い直しました。

阿部川 切り替えが早いですね。日本で大学入試というと「落ちたら受かるまで浪人して頑張る」ことが半ば当たり前のようになっていますが、進学しないことについてご両親は何かおっしゃっていましたか。

ズルネディ氏 「進学はしないの?」と聞かれましたが、私の意志が固いことを知ったら納得してくれました。同じことを同じように頑張っても次も失敗する可能性って高い気がするんですよね。それであれば、違う方向で頑張ってみて、それでも大学に行きたいとなったらそのときまたチャレンジした方がいいんじゃないかと思ったのです。

画像 部活でロボットを作っているズルネディ氏

阿部川 おっしゃる通りだと思います。単に同じことを繰り返すだけでは駄目で、正しい「勉強の型」を見つける必要があります。

ズルネディ氏 当時を振り返ると、「学ぶこと」がどんなことなのかをよく分かっていなかったと思います。ただ知識をため込むのではなく、「知識はどう身に付けるのか。何のために学ぶのか」ということを意識することは重要ですよね。社会人を経験することでようやくその辺が理解できたと思います。だから、きっと当時より今の方が大学に行きたいです。近い将来、お金がたまったらまた大学入試にチャレンジしたいですね。

阿部川 素晴らしい。学びたいと思ったら遅過ぎることはありません。それにいろいろ経験することで学ぶ姿勢も変わってくることでしょう。さて、進学しないことに決めて、それからどうしたのですか。

ズルネディ氏 まずはお金を稼ぐ必要がありましたので、姉が働いていたユニクロ(ファーストリテイリング)を紹介してもらって働くことにしました。旗艦店で海外の観光客が多い店舗でした。私は日本語とインドネシア語と英語が分かるので、接客で役に立てると考えたのです。実際、中国やベトナム、米国などさまざまな国の方が来ていました。接客をしながらいろいろな文化に携われたので良い経験になったと思います。



 モノづくりにはまり、小学校中学校高校と着実にプロダクトを生みだしていたズルネディ氏。大学進学は失敗したが、同氏はめげずに社会人としての経験を積み始める。後編はエンジニアとしての道を歩み始めたズルネディ氏が「将来実現したいこと」について聞く。

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