グローバルに活躍するエンジニアを紹介する本連載。前回に引き続きプラゴのAdrian Zulnedi(アドリアン・ズルネディ)氏にご登場いただく。ずっと変わらない「モノづくりへの思い」を持ち、エンジニアとして働き始めたズルネディ氏が挑戦してみたいこととは。
世界で活躍するエンジニアにお話を伺う「Go Global!」シリーズ。今回もプラゴのAdrian Zulnedi(アドリアン・ズルネディ)氏に話を聞く。「やりたいことは大抵できている」と充実した毎日を送るズルネディ氏が今、興味を持っていることとは。聞き手は、アップルやディズニーなどの外資系企業でマーケティングを担当し、グローバルでのビジネス展開に深い知見を持つ阿部川“Go”久広。
阿部川“Go”久広(以降、阿部川) ユニクロ(ファーストリテイリング)に1年くらいお勤めになった後、IoT(Internet of Things)機器を扱うArkthに転職されます。
ズルネディ氏 はい。もともとプログラミングに興味があって、いつかはエンジニアになりたいと考えていました。ですのでユニクロに勤めながら転職活動をしていたのです。Arkthに入社する前に半年ほどプログラミングスクールにも通っていたんですよ。
阿部川 プログラミングスクールに通った理由は何でしょうか。
ズルネディ氏 転職活動をして分かったのですが、高卒で外国人となるとなかなか採用してくれる企業がなかったのです。そこでプログラミングスクールに通ったのです。プログラミングスクールで学ぶことで「最低限の基準」はクリアできると考えました。無事就職できましたので通ったかいがありました。
Go Globalでさまざまなエンジニアのお話を聞きますが、来日してまずは飲食業界やアパレル業界で働くといった方が多いように思います。言葉や文化を学ぶという点で、接客業は確かに良い経験になります。ただ私は、技術の仕事をしようと日本に来てくれたのに「足止め」をさせているような気持ちになってしまいます。もちろん日本人であっても未経験でIT企業に入社するハードルは高いのですが、伸びしろのある若者がチャレンジしやすいIT企業が増えるといいですね。
阿部川 良かったですね。アークスではどんなお仕事をされたのですか。
ズルネディ氏 主にIoT機器の実証実験をしていました。顧客の要望に合わせて「コストを考えるとAの機器がよいが、拡張性を考えると多少高くてもBの機器を採用した方がいい」といった提案をするんです。そのため、さまざまなIoTのセンサーを調べ、機器ごとの違いや値段を調査するといったこともしていました。
とても楽しい仕事でしたが、実証実験をする会社なので、顧客が実際にどのように使っているかを知ることはできません。ですので、もっと顧客に近い場所で働きたいと考えるようになりました。
阿部川 それでプラゴに入社されたのですね。なぜプラゴだったのでしょうか。
ズルネディ氏 プラゴは面談の印象がとても良かったのです。マネジャーの大井さんがとても細かいレベルで仕事の内容を説明してくれました。その説明の中には私が今まで扱ったことがあるマイコンもあって、「こうやって実際の製品になるんだ」とすごく納得したことを覚えています。
阿部川 ご自身の経験がどのように製品につながるかが分かって感動したんですね。
ズルネディ氏 はい。大井さんが「これ、こういうふうに作るんだよ」と説明してくれたときに、「ここに入りたい」と一瞬で思って、それで入社しました。今はEV充電器の工事や充電器の回路設計などをしています。
阿部川 「入りたいな」と思っても、入れるかどうかは別の話ですが(笑)。入社されて「思っていたことと違う」といったことはありましたか。
ズルネディ氏 特にありません。もちろん入社した当時は苦労しました。理屈は分かっても実際にどのように作るかが分かっていない状態でしたから。でも今は大丈夫です。
阿部川 どうして大丈夫と思えるようになったのですか。
ズルネディ氏 上司が私のことを信じてくれたからです。上司が信じてくれたから、私はチャレンジを続けられたのだと思います。
阿部川 信頼されているので頑張れる、素晴らしいと思います。今何かチャレンジしたいと思っていることや作ってみたいものなどはありますか。
ズルネディ氏 うーんそうですね、やりたいことは大抵できているので……。あえていうなら小学校のときに失敗した電気自動車を作ってみたいです。今度は子どもの工作ではなく、本物の、商品化できるものを作ってみたいという思いがあります。
阿部川 なるほど。お話を聞いて、私の友人のことを思い出しました。彼は幼稚園のころからずっと車が好きで、やることなすこと全部が車のことでした。そんな彼は幼稚園のころから60年近くたった今も、エンジニアとして車に関わっています。ズルネディさんもきっと私の友人と同じで、小さいころから持っている情熱が今のお仕事につながっているのですね。
ズルネディ氏 そうかもしれません。「モノづくりへの思い」は昔からずっと変わっていませんから。
「やりたいことは大体やっている」と断言できる人は少ないと思います。自分が楽しいと思って取り組んできたモノづくりが認められ、信頼できる会社、上司にも恵まれたといっていますが、それはズルネディ氏の「モノづくりって楽しい!」という気持ちが引き寄せたのだと思います。これから10年、20年とたったときその情熱は何を成し遂げるのか楽しみです。
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