ある日突然、4人家族の家事育児をワンオペで担うことになったエンジニアリングマネジャー。山積する困り事のどこからどうやって手を付けていいのか分からず不安に苛(さいな)まれたが、「仕事で取り組んできたエンジニアリングスキルを活用すればいいのではないか」と気付いてから、着々とカイゼンを進めていく。
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はじめまして、高橋陽太郎です。リクルートでエンジニアリングマネージャーをしています。
わが家は、小学校4年生と小学校2年生の子ども2人と、トイプードルの娘と、妻1人がいる5人家族です。先日まで妻が渡米しており、1年弱子どもたちと4人暮らしをしていました。
最初は文字通り地獄のような日々でしたが、カイゼンを繰り返すうちに、日々のソフトウェア開発の知識が、家事育児の多くの場面で応用できることに気が付きました。ご縁あってこの取り組みを、@IT自分戦略研究所で連載することになりました。
本連載は、仕事と家事の両立が当たり前のトピックとなってきた昨今、エンジニアが普段持っていて使っている知識や経験を生かして、家事育児を楽しみながらカイゼンするコツをお伝えしていきます。どうぞよろしくお願いします。
「ねぇ、1年間米国に行ってきていい?」
妻からこの一言を聞いたのは、渡米の4カ月ほど前。とある研究所で「客員研究員」をするとのことでした。響きのカッコ良さにつられて二つ返事で「いいよ」と言ったものの、冷静になって考えてみると、さまざまな不安に苛まれます。「あ、自分料理できないじゃん」「自分朝苦手じゃん」「子どもの宿題見たことないや」「トイレ掃除どうしよ」などなど、次々に浮かぶ困り事。それら全てに対応できる気は到底しませんでした。
この困難な状況に対して、当初は直感的に足りていないと思う部分から対策を始めていました。しかし、どうもうまくいきません。しかしあるとき、仕事で行ってきたことを家庭の状況に生かしていけばいいのではないか、と気が付いたのです。
仕事でも「困ったことは数多くあるけれど、そこからどうしたらいいのか分からない」状況はよくあります。そんなときに役立つのが「制約条件の理論」です。家事場のシス力(ぢから)、初回は制約条件の理論を活用して、家事で発生する課題の優先順位付けを行い、コアとなる課題と向き合います。
制約条件の理論(Theory of Constraints、制約理論と呼ばれることもある)は、イスラエルの物理学者エリヤフ・ゴールドラットが、『ザ・ゴール』(ダイヤモンド社)で説明した生産管理の手法を起源とする全体最適のマネジメント理論です(※1)。
一言で言い表すならば「チェーンのようにつながりとバラツキがあるシステムには必ずどこかに制約がある」「その制約に集中することが全体最適になる」(※2)という考え方です。そして、これらの制約を見極め、スループットを上げる工程が「5つの集中ステップ」です。
これらの考え方は生産管理の理論として提示されましたが、ソフトウェア開発にもなじみが深く、特に近年ではDevOpsの文脈で、参考にされることが多くなっています(※3)。私の仕事でも、制約条件の理論を参考にしたカイゼンは多く実施されており、新人研修のコンテンツとして制約条件の理論を教えるなどしています。
私が取り組んだ事例:タウンワークをドライブさせるためになんちゃってアジャイルをやめた話
社内事例:SUUMOアプリチームがスプリントを廃止してカンバン方式に移行した話
新人研修事例:ToC(制約理論)入門 / ToC Introduction
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