意外と知られていない会計の知識。元ITエンジニアの吉田延史氏が、会計用語や事象をシンプルに解説します。お仕事の合間や、ティータイムなど、すき間時間を利用して会計を気軽に学んでいただければと思います。
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本連載の趣旨について、詳しくは「ITエンジニアになぜ会計は必要なのか」をご覧ください。
秋本番、かなり過ごしやすくなってきましたね。秋の夜長に読書を楽しむ人も多くいらっしゃるのではないでしょうか。そこで、今回は趣向を変えて「会計関係の書籍」を厳選して紹介します。
「簿記の基本から知りたい」という人向けの本です。ファッションショップを開業した簿記を知らない青年が、ベテラン経理ウーマンに簿記を一から教えてもらうストーリーです。
入門書は、いろいろ出回っていると思いますが、この本は文章量が比較的少なく、イラストや押さえておくべきポイントの配置が定まっていて、読みやすい構成となっています。簿記3級の取得を目指している人にとって、とっかかりとしてよいでしょう(簿記3級の試験範囲のうち、半分くらいをカバーしています)。
時価会計やIFRS(イファース)など、新聞に頻繁に登場する言葉や会計監査の仕組みについて理解できるマンガです。1話完結で12話収録されています。
マンガは、バー「レモン・ハート」の常連さんの会話がベースとなって進行します。まじめな会話がバーで繰り広げられるのはあまり見掛けない光景かと思いますが、意外と違和感がありません。
公認会計士たちにより組成された日本公認会計士協会が監修していて、しっかりした内容になっています。一方で、マンガ形式になっていることから、理解しやすい内容となっています。
TOC(制約理論)という管理会計の手法について、物語調で記載している本です。【1】【2】は財務会計(制度会計)の話ですが、こちらは内部管理のための管理会計の本といえるでしょう。
メーカーの工場長を務める主人公が、本社より慢性的になった赤字を理由に3カ月で工場を閉鎖すると宣告されるところから、物語はスタートします。主人公の奮闘ぶりに感情移入していく中で、会計のエッセンスが自然と身に付きます。メーカーにおける在庫の考え方が理解できる良書です。
5年ほど前に世間を騒がせたライブドア事件において、堀江氏・宮内氏にかけられた容疑について、説明できる人は非常に少ないと思います。それは、事件が複雑なスキームを利用したものであるためです。
この本には、ライブドアの監査を担当していた会計士の目から見た事件の全貌が記されています。事件を理解するためには、連結会計・資本会計・企業結合などの会計知識ばかりでなく、株式分割や株式交換・投資事業組合など法務知識も必要です。
本の中でも1つひとつ丁寧に説明されていますが、初心者には難しいものがあるかと思います。しかし、表面的なルールではない「会計の考え方における基礎」を記載しており、経理関係のプロフェッショナルになろうと考えている人には、とても参考になると思います。
事件の内容だけでなく、ライブドアが抱えていた本質的な問題や、監査業界の実態や課題についても記載されている良書です。
会計業界も、IT業界と同様に知識のアップデートが頻繁に必要になります。毎年新たな会計基準が出ますし、税法は景気の動向や政策の実施によって毎年変わります。知識が陳腐化しないように、どんどんインプットしていかなければいけませんね。それではまた。
●紹介した書籍の一覧
吉田延史(よしだのぶふみ)
京都生まれ。京都大学理学部卒業後、コンピュータの世界に興味を持ち、オービックにネットワークエンジニアとして入社。その後、公認会計士を志し同社を退社。2007年、会計士試験合格。仰星監査法人に入所し現在に至る。共著に「会社経理実務辞典」(日本実業出版社)がある。
イラスト:Ayumi
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