業務部門がノーコード・ローコードツールを使って業務のデジタル化を進めるようになると、情シスは不要になるのだろうか?
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2019年3月の経済産業省の調査によると、2025年にはIT人材不足が約43万人に拡大、2030年には最大79万人になると試算されている。
一方で、優れたノーコード・ローコードツールを使って業務のデジタル化を推進し、効率化を図りたいという企業が増えている。
ノーコード・ローコードツールをうまく運用や利活用していくためには、これまでのように情報システム部門(以降、情シス)が業務部門のデジタル化を進めるのではなく、業務部門自らが業務のデジタル化を推進し、組織横断で協創していく「デジタルの民主化」という考え方が鍵となる。
ITの専門知識がない業務部門の社員によるノーコード・ローコードツールを用いたアプリケーション開発を指す「市民開発(※1)」の考え方とも類似しているデジタルの民主化は、圧倒的IT人材不足を救う手段として有効と考えられている。デジタルの民主化を推進することで、情シスも業務部門も幸せになれる組織へ変化していくとわれわれは考えている。
本連載は、デジタルの民主化を推進する意義や残念な結果に終わらせないためのコツを、数多くのお客さま事例を見てきた「ドリーム・アーツ」のエンジニアが、生々しい事例も交えつつ解説する。
必要なものを必要なときに自分で開発できる市民開発への取り組みが、多くの企業で普及してきている。
業務に最も精通する業務部門が自律的にデジタルを活用し、今までにないスピードで業務のデジタライゼーションを推進する。そうした取り組みが1人、2人と広がり、やがて全社の動きになっていき、組織としてのデジタルリテラシーや変革マインドが醸成される。それこそが、DX(デジタルトランスフォーメーション)に立ち向かう企業カルチャーの土台になるデジタルの民主化という考え方である。
現場で開発してもらいたいと思っている企業、デジタル化に関心のある業務部門の人が増えてきていることは、当社の調査結果からも明らかだ。
グラフ1は、2022年1月にドリーム・アーツが行った調査「大企業の“ヤバい”市民開発の実態 調査レポート」の「自社のDX推進状態を把握し、かつノーコード・ローコードツールを知っている1000人」に聞いた市民開発の取り組み進捗(しんちょく)度だ。
ノーコード・ローコードツールを知っている人の6割弱が実施済み、7割が検討中、そして9割弱の人が興味を持っていることが分かる。
DX推進度との関係性を見てみよう。
表1は、DX推進度とノーコード・ローコードツールの導入進捗度の関係を表したものだ。DX推進企業の約5割がノーコード・ローコードツールを導入済み、または検討中であった。
ノーコード・ローコードツールの導入は、「ITベンダー依存」の解決案の一つとしても考えられる。
システム導入/開発時に、情シスを中心に検討を進めるが、開発自体は別の企業に委託したり、運用まで全て任せたりするケースがこれまでは主流とされてきた。ITの専門的な知識が求められる分野は専門家に任せ、本業に注力すべきという考え方は決して間違いではない。
しかし先行きが不透明なVUCA(ブーカ)時代、企業も外部環境の変化にしなやかに対応していくことが求められている。これまでの外部中心の進め方だと時間も費用もかかる上、本来実現したいことに素早く対応できない。結果として手間やコストをかけた割にユーザーが使いにくいものが出来上がってしまう。改善しようにもさらに時間や費用がかかり、時間がたつにつれて利用されなくなることも容易に想像できる。
こうした最悪のケースを避けるにはどうすればいいのだろうか?
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