Windows 11へのアップグレードの機会に、PCをリフレッシュしてみない?[後編]要件に満たないPCはどうなる?山市良のうぃんどうず日記(230)

前回は人から譲り受けたWindows 10 PCを再利用するためにきれいな状態にリフレッシュしました。直接Windows 11を新規インストールしなかったのは、無料アップグレードのためでもありますし、メーカー提供のユーティリティーやドライバのためでもあります。

» 2022年04月27日 05時00分 公開
[山市良テクニカルライター]

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アップグレード前のフルバックアップ

 前回、「PCのリセット」で「Windows 10」のHomeエディション(x64版)、バージョン21H2をクリーンな状態にリフレッシュしました。今回は、その続きで、「Windows 11」への無料アップグレードを行います。その前に、今回もシステムイメージの作成から始めます。前回までの作業で作り上げたWindows 10環境をフルバックアップしておくことで、万が一のときにアップグレード前のWindows 10環境を完全に復元できるようにしておきます(画面1

画面1 画面1 今回もシステムイメージの作成によるフルバックアップから(システム修復ディスクの作成は不要)

インストールメディアからの無料アップグレード

 前回も説明しましたが、今回セットアップしているPCは人から譲り受けたPCであり、惜しくもCPUモデルだけがWindows 11のシステム要件を満たしていません。そのため、Windows 11がWindows Updateを通じて配布されることはありません。今回は以下のサイトで公開されているツールで作成したインストールメディアを使用します。

 Windows 11のシステム要件を満たしていないPCでWindows 11のセットアップを開始しても、「このPCは現在Windows 11のシステム要件を満たしていません」と表示され、続行することはできません(画面2)。

画面2 画面2 CPUモデルだけがWindows 11の要件を満たしておらず、セットアップを続行できない

 しかし、Microsoftが公開している“ある方法”を用いれば、この制限を突破してセットアップを続行することができます(画面3)。今回は、Windows 11対応ハードウェアをアップグレードする手順を示す目的で(そして、無理にアップグレードした場合の影響を長期的に調査する目的で)、あえてサポートされない方法で進めます。決してお勧めできることではないため、その方法については触れません。サポートされないことを十分に理解し、問題に対処できるような人であれば、簡単にその方法は見つかるはずです。

画面3 画面3 [注意]Windows 11非対応ハードウェアをWindows 11にアップグレードすることはサポートされていない

 Windows 10(x64)を実行するハードウェアがWindows 11対応であれば、Windows 11のセットアッププログラム(Setup.exe)を実行してしばらくすると以下の画面4(画面2や画面3ではなく)が表示されるので、「インストール」ボタンをクリックします。後は、Windows 11として起動するまで待つだけです(画面5画面6)。

画面4 画面4  Windows 10(x64)HomeをWindows 11 Homeにアップグレードする
画面5 画面5 Windows 11にアップグレード中
画面6 画面6 1時間もかからずにWindows 11へのアップグレードが完了

オプションでProエディションに有料アップグレード

 Windows 10からWindows 11の同一エディションへのアップグレードは無料ですが、Microsoft Storeからの購入、または購入済みのWindows 11ライセンスのプロダクトキーを入力することで、Windows 11 Proにアップグレードすることができます(画面7)。アップグレードは再起動を伴いますが、比較的短時間で終了します。

画面7 画面7 正規のプロダクトキー(Microsoft Storeまたはライセンスリセラーから購入可能)を入力して再起動するだけで、HomeからProにアップグレード可能

 Windows 11 Homeで「デバイスの暗号化」が有効になっている場合は、Windows 11 Proではより高機能な「BitLockerドライブ暗号化」を利用できるようになるため、アップグレード前にオフにしておきましょう。アップグレード後、C:ドライブに対してBitLockerドライブ暗号化をオンにします。Windows 11対応ハードウェアであれば、BitLockerのシステム要件を満たしており、問題なく有効化できるはずです。また、「Hyper-Vの役割」を追加して、ハイパーバイザーベースのセキュリティ機能(「コア分離」など)を利用できるようにします(画面8)。

画面8 画面8 「デバイスの暗号化」ではなく、「BitLockerドライブ暗号化」でドライブを保護し、さらに「Hyper-Vの役割」を有効化して高度なセキュリティ機能を利用可能にする

 なお、これはWindows 11でよくあるトラブルのようですが(ハードウェアの対応/非対応には関係なく)、「Windowsセキュリティ」(画面8)を開くことができないということがあるようです。この問題に遭遇した場合は、PowerShellを管理者として開いて、以下のコマンドラインを実行してみてください。きっと開けるようになるはずです。

Get-AppxPackage Microsoft.SecHealthUI -AllUsers | Reset-AppxPackage

 Windows 11 Proにする動機が、外部からのリモートデスクトップ接続の場合は、認証方法として「パスワードによるサインインを許可する」ことを忘れないでおきましょう。Windows 10で「PCのリセット」を行った際、Microsoftアカウントでセットアップすると、PINなどによるパスワードレス認証で構成されます(ローカルのPCにはパスワードは保存されません)。「設定」の「アカウント」にある「サインインオプション」を開き、「パスワード」がない状態では、リモートデスクトップ接続で外部から接続することはできません。その場合、「パスワード」によるサインインを許可することで可能になります。

Windows 11非対応PCのその後は……

 今回、あえてWindows 11非対応ハードウェアのPCをWindows 11にアップグレードしてみました。サポートされていない利用方法であることは承知していますが、筆者はこのPCをこの状態でしばらく使い続けたいと考えています。

 “更新プログラムを受け取る権利がなくなる”とは実際にはどういうことなのか(前出の画面3を参照)、安定性にどの程度影響するものなのか、気になる点が幾つかあります。CPUの新機能に大きく依存した機能が利用されない限り、案外、問題なく使えるような気がしていますが、長期的に使用してみないと分かりません(画面9)。

画面9 画面9 Windowsの安定性が分かる「信頼性モニター」(Perfmon /rel)。アップグレード直後のエラーは、「Windowsセキュリティ」が開けないというトラブル(既に解決済み)。それ以外、特に問題は発生していない

 既に言えることがあるとするなら、4GB(Windows 11の最小システム要件)のメモリでは少ないと感じることが多々あります。仮想マシンや「Windowsサンドボックス」「Microsoft Defender Application Guard」はリソースが足りないため使えません。「Windows Subsystem for Linux 2(WSL 2)」は問題なく利用できます。

 今後、Windows 11でこのPCの使用を続行できないような事態になったら、バックアップからWindows 10システムを復元すればよいというわけです。

筆者紹介

山市 良(やまいち りょう)

岩手県花巻市在住。Microsoft MVP 2009 to 2022(Cloud and Datacenter Management)。SIer、IT出版社、中堅企業のシステム管理者を経て、フリーのテクニカルライターに。Microsoft製品、テクノロジーを中心に、IT雑誌、Webサイトへの記事の寄稿、ドキュメント作成、事例取材などを手掛ける。個人ブログは『山市良のえぬなんとかわーるど』。近著は『Windows版Docker&Windowsコンテナーテクノロジ入門』(日経BP社)、『ITプロフェッショナル向けWindowsトラブル解決 コマンド&テクニック集』(日経BP社)。


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