Microsoftは同社のAIシステムの構築方法を導くフレームワーク「Microsoft Responsible AI Standard v2」(責任あるAIの基準第2版)を公開した。さまざまな社会的な課題について、AIでどのように扱うのか、Microsoftの考えを示した。同時に社会的に悪影響を与えると考えられる同社のAIサービスの提供を中止した。
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Microsoftは2022年6月21日(米国時間)、同社のAIシステムの構築方法を導くフレームワーク「Microsoft Responsible AI Standard v2」(責任あるAIの基準第2版)を公開した。より優れた、より信頼できるAIの開発を目指す同社の取り組みにおける重要なステップだとしている。
Microsoftは2019年秋に、Responsible AI Standardの初版を社内向けにリリースした。これまでの責任あるAIの取り組みに加え、最新の研究や、製品での経験から学んだ重要な教訓に基づく。
今回、多分野にまたがる研究者やエンジニア、政策専門家のグループが第2版を作成した。これまで学んできたことを共有し、他の人々からのフィードバックを求め、AIに関するより良い規範と実践の構築に向けた議論に貢献するため、第2版を公開したと述べている。
MicrosoftはResponsible AI Standardについて、さまざまな社会的な課題についてのMicrosoftの考えを示したものだと説明している。
「『公平性』『信頼性と安全性』『プライバシーとセキュリティ』『包括性』『透明性』『アカウンタビリティー』(説明責任)といった永続的な価値を守り、社会からの信頼を得るには、AIシステムをどのように構築するのが最善か」という課題に向き合った「6つの基本価値」だ。
今回の基準はこれまで、AIを取り巻く状況の中で掲げられてきた抽象的な原則を超えて、具体的で実用的なガイダンスを社内チームに提供するものだとしている。
Microsoftは6つの価値を、責任あるAIの基本原則と位置付けている。それぞれの価値は次のような意味を持つ。
・公平性
AIシステムは全ての人を公平に扱う必要がある
・信頼性と安全性
AIシステムは信頼でき、安全に動作する必要がある
・プライバシーとセキュリティ
AIシステムは安全でなければならず、プライバシーを尊重する必要がある
・包括性
AIシステムはあらゆる人に力を与え、人々を結び付ける必要がある
・透明性
AIシステムは理解しやすい必要がある
・アカウンタビリテイー
AIシステムにはアカウンタビリティーが必要だ
Responsible AI Standard v2では、この6つの基本原則が大目標として設定されている。アカウンタビリティー目標、透明性目標、公平性目標、信頼性と安全性目標、プライバシーとセキュリティ目標、包括性目標という6つの柱の下で、これらの大目標がそれぞれ複数の目標に分解され、これらの目標ごとに、一連の詳細な要件と、要件を満たすためのツールとプラクティスが記述されている。
例えば、アカウンタビリティー目標は、「影響評価」「重大な悪影響の監視」「開発目的への適合」「データガバナンスと管理」「人間による監視と管理」という目標に分解され、これらの目標ごとに詳細要件、ツールとプラクティスが挙げられている。
これらの要件は、AIシステムがシステムライフサイクルを通じて個々の目標を達成するために、チームが取るべき手順を示している。ツールとプラクティスは、これらの要件を実装するチームに、成功に役立つリソースを提示している。
Microsoftの「Azure AI」のカスタムニューラル音声は、元の音源とほぼ同じ音になるよう合成音声を作成できる技術だ。Microsoftは、「責任ある AIプログラム」(Responsible AI Standardで要求されるレビュープロセスを含む)を通じてこの技術をレビューし、多層管理フレームワークを導入した。こうした管理体制により、この技術の有益な利用を維持しながら、なりすましや詐欺などへの悪用を防ぐことができた。
Microsoftはこの経験を踏まえ、顔認識サービスにも同様の管理を適用する方針を示した。既存顧客のための移行期間を経て、Microsoftの管理を受ける顧客とパートナーのみが、顔認識サービスにアクセスできるようにする。ユースケースを、事前に定義された許容可能なものに絞り込む他、技術的管理を顔認識サービスに組み込んで利用するという。
Microsoftは「AIシステムが信頼できるものであるためには、設計時に想定された問題に対する適切なソリューションでなければならない」との認識を示し、Microsoft Azureの「Face API」サービスがResponsible AI Standardの要件を満たすようにする一環として、感情の状態やアイデンティティー属性(性別、年齢、笑顔、顔の毛、髪形、化粧など)を推論する機能の提供を打ち切ることを明らかにした。
例えば、人の顔をスキャンして表情や動きから感情状態を推測する技術へ、無制限のAPIアクセスを提供しないことを決めた。また、顔解析などのAI技術を使用しているかどうかにかかわらず、人の感情状態を推測するとうたう全てのAIシステムを、慎重に分析する必要があると判断したと述べている。
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