昨今にわかに注目を集めているNFTだが、市場が拡大してゆくのか、単なる一過性の盛り上がりに終わるのだろうか。NFTマーケットプレースのAdam byGMOに、NFTの現状とその魅力を聞いた。
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NFT(非代替性トークン)は今、ハイプサイクル時間軸において、どのあたりに位置するのだろうか。おそらく、黎明(れいめい)期なのだろうが、このままピーク期に向かって上昇するか、あるいは、黎明期のままいつの間にか忘れ去られてしまうのか。
インターネットの歴史を振り返ると、新しいテクノロジーの登場時、いつも似たような風景がくり返される。まず、ギーク層が飛びつき「すごいすごい」と盛り上がる。そこから成功者が登場し、「○○億円もうけました!」と話題になり、一般にも広がる。
「新しいテクノロジー」をバズワードと言い換えてもいい。記憶に新しいところでは、スマホアプリやビットコインといったあたりがこれに該当する。最近では、メタバースに同じニオイを感じてしまう。
そして、NFTだ。筆者自身、音楽制作業を営むクリエイターでもあるので、「NFTでデジタルコンテンツが高値で売れた」という話に接すると、当然わくわくもするし、自分にもチャンスがあるかも、とも思う。
その一方で「『OpenSea』の無料機能で作成、販売されているNFTの80%が違法」、あるいは、漫画「キャプテン翼」の違法なNFTアートが販売されている、というニュースを聞くと、うさんくさい世界に思えて、「下手に手を出すとやけどするかも」とも思う。
今回の取材は、そんな、揺れ動く不安定な心情に一筋の光を照らしてくれた。NFTマーケットプレースの「Adam byGMO」が強く訴求するのは、「安心感」と「使いやすさ」だ。
まず、安心感について見ていこう。「出品するクリエイターの本人確認も含め権利侵害の有無、公序良俗など、全ての出品アイテムをガイドラインに照らして審査します」(GMOアダム 事業部 林智美氏)と万全の体制を整えていることを誇る。
Adam byGMOではNFTの取引において、前述のような、うさんくささを助長しかねない事象は起きない、起こさないという姿勢を貫いているわけだ。違法な出品物を極力排除するというプラットフォームとしての考え方は、筆者のようなクリエイターとしても心強く感じるし、購入する側も安心できる。
ただ、注意すべきは、「NFTという技術は、偽物の作成や流通を防止する技術ではありません。コピーされてしまった場合、それらのデジタルアイテムの中からどれが本物であるかを見分け、保有していることを証明するための技術です」(林氏)と、説明する。
実際、Adam byGMOに関係するNFTで憂慮すべき事案も発生している。音楽家の坂本龍一氏の非正規NFTが、Adam byGMO以外のマーケットプレースで出回るという行為が報告されている(偽物NFTに関する注意喚起)。
先のOpenSeaやキャプテン翼にしても、この坂本龍一氏の件にしても、黎明期に通らなければならない道として、リスクを受容しながらも前に進むべきなのであろうと、インターネットの歴史を振り返って思う。日本のインターネットの歴史を振り返ると、不正の温床になるのであれば、規制してしまえという思考になりがちだ。同じ過ちは繰り返してほしくはない。
次に、「使いやすさ」について見てみよう。Adam byGMOでは、日本円で決済可能という点が大きな特徴だ。「なるべく多くの方にNFTに親しんでもらいたいので、通常のECサイトのようなUI/UXで、かつ日本円で購入可能にしました。もちろん、イーサリアムでの決済も可能です」(林氏)と胸を張る。
またアート、イラスト、音楽、トレーディングカードなど扱うジャンルが多いのも、Adam byGMOの特徴だ。デジタルアートやゲームアセットなど特化型のマーケットが多い中でこのバラエティー感は、冷やかしで巡回しているだけでも楽しい。
NFTがクリエイターにもたらす可能性は無限大なのでは、と思わせてくれる出品がある。2021年の12月にAdam byGMOで出品された前述の坂本龍一氏のNFTだ。彼の代表作である「Merry Christmas Mr. Lawrence」音源の右手のメロディー595音を1音ずつデジタルで分割し、NFT化することで、1音につき1万円で販売した。音楽制作者としてこの手があったかというのが正直な気持ちだ。
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