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» 2022年08月09日 05時00分 公開

あの情シスはいかにして、1万5000人規模の業務のデジタル化を成し遂げたのか最初の3カ月は無為無策(1/3 ページ)

1万5000人規模の業務のデジタル化にたった1人で挑むことになった情シスメンバー。サービスや現場のニーズを調査してはみたが、検討事項が多過ぎてあっという間に壁にぶつかってしまった。

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 企業が進む方向性や具体的な戦略の策定、全社的な環境の整備はトップダウンで行うべきだが、個別施策の実行は現場で行われる。これまでは情報システム部門(情シス)がその役割を一手に担ってきたが、IT人材不足やビジネスのデジタル化が進む昨今、このまま情シスだけで全てを抱え込んでよいものだろうか。

 市民開発(デジタルの民主化)における情シスの役割を説く、連載「情シスがリードする『幸せな』デジタルの民主化組織の作り方」。前回は良いチームの作り方や体制面にフォーカスしてお伝えした。今回は、業務のデジタライゼーション推進に挑んだS社の事例を紹介する。

独りぼっちの出発

 S社は、老朽化した基幹システムを2023年に刷新することを決定していた。同時に財務会計や販売管理の可視化、業務の効率化や標準化を進める動きも検討していたが、優先順位が低く、会社としての意思決定がされていない状態だった。

 そこで経営トップから指名されたのが、情シスのMさんだ。

 デジタル化の第一歩として申請書の電子化に取り組むことにしたMさんは、ワークフローシステムの情報収集から着手した。オンプレミスで導入した場合の初期構築費用やランニングコストからどれくらいの投資予算が必要かを試算し、価格や他社での導入実績などの資料を各ベンダーのWebサイトからダウンロードしたり、セミナーへ参加したり、時には電話やオンライン面談などで話を聞きながら見比べていった。

 それと同時に取り組んだのが、要件の整理だ。稟議(りんぎ)書の電子化はマスト、全社的に多くある紙業務の電子化、1万5000人規模での利用、が前提だ。現場部門のニーズを整理しようとヒアリングに臨んだMさんは、そこで壁にぶつかった。

 「過去に誰がどう判断して承認したのかを確認できるようにしたい」「組織改編が多いので、柔軟に対応できるシステムを利用したい」「事業部によって承認者の階層が異なる。同じ事業部長でも役職は部長だったり課長だったり、承認者が定まっておらず結局誰に承認をもらえばいいのか分からない」――立場や役割ごとに優先して解決すべき課題が異なり、社内の意見をまとめられない。検討事項が多過ぎて、何から始めればいいのか分からなくなってしまったのだ。

 資料を作成して社内会議で報告するも、投資対効果の判断ができるレベルのものではなく、承認を得ることはできない。事態は停滞したまま、3カ月が過ぎていた――。

独りぼっちでデジタル化プロジェクトに挑むことになったMさん
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