現場の若手メンバーが進めたワークフローシステム改革。約1カ月で帳票を60%削減し、プロジェクトは大成功に見えたが……。
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市民開発における情報システム部門(以降、情シス)の役割を説く、連載「情シスがリードする『幸せな』デジタルの民主化組織の作り方」。前回、前々回と、「デジタルの民主化」における改革リーダーを担うべきなのは「情シス」であることを説いてきた。
今回は、内製化や全社で利用する開発基盤の導入において、情シスの立ち回りが結果にどう影響してくるのか、ドリーム・アーツがカスタマーサクセスマネジャーCSM(※)として経験した事例を交えてお伝えしていきたい。
A社は、老朽化したオンプレミスのワークフローシステムを刷新すべく、ドリーム・アーツのノーコード/ローコード開発プラットフォームの導入を検討した。
検討メンバーの主体となったのは、非IT部門である経理・経営企画部の若手2人だった。2人は、開発経験こそないものの製品に対する理解がかなり早く、オンボーディング期間にあたる契約初月が終わるころには、基本的な操作をほぼ習得していた。難易度ごとに申請フォームと承認ルートのテンプレートを用意し、そこから展開することをわれわれが薦めたかいもあって、旧システムでは252帳票あった書類を104帳票まで集約し、およそ1カ月で全て作り切った。
だがそこには大きな落とし穴があった。社内のコンセンサスが取れていなかったのである。検討メンバーと利用ユーザーや承認者が優先する要件に乖離(かいり)があり、旧システムより使い勝手が悪くなってしまったのだ。
プロジェクトの途中から情シスメンバーも加わって検討メンバーが作成したものをレビューし、大半はリカバリーできたものの、ワークフロー承認者や確認者観点の要件を覆せず、代替案も認められず。最終的にはシステム移行は先延ばしになり、契約後わずか3カ月で解約という悔しい結果となった。
ユーザーが利用しやすいバリデーションチェック、権限制御なども考慮したシステムの全体設計や運用面で知見を持つ情シスメンバーを早い段階から味方に付けていれば、要件の食い違いに早期に気付くことができ、代替案も違ったアプローチができていたかもしれない。
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