元任天堂開発者がエンジニアの真に役に立つことを伝授するシリーズ、今回のテーマは「エンジニアの生き方」です。エンジニアたるもの、自分をどのように定義し、どのように生きるべきか、工学的に考えていきましょう。
この記事は会員限定です。会員登録(無料)すると全てご覧いただけます。
翻訳プラットフォーム「ヤラクゼン」をはじめとする自然言語処理サービスを手掛ける「八楽」で、新規事業マネジャーをしている杉山慎です。「任天堂」でのWiiやSwitchなどゲーム機の開発や、さまざまな企業の新規事業立ち上げに従事してきたエンジニアでもあります。
前回までアイデアに関する連載を書いてきました。今回は、エンジニアという道をどういう指針に従って進むことが望ましいかを述べていきます。
本連載は、キャリア論ではありません。エンジニアによるエンジニアのためのエンジニアの啓蒙(けいもう)です。エンジニアについて極端な視点から理念を語ることにより、エンジニアに気付きをもたらし、新たな一歩を踏み出すきっかけを作ることが目的です。
エンジニアとしての道を進んでいる人、道に迷っている人、進む準備をしている人に、進むべき道を指し示すコンパスとなる提言を目指します。
「エンジニアはどう生きるべきか?」に対する結論を書くと、「『あなた』というモジュールをエンジニアリングしよう!」です。
自分というモジュールとは何か? 何をどうエンジニアリングするのか? そもそもエンジニアリングとは何か? 今回はこれらの問いに答える内容です。
一般的なエンジニアのキャリア記事は、「どの種のエンジニアがおすすめですか?」「これから学ぶべき技術領域は何ですか?」「どう学習したら成長できますか?」という問いに答える内容が多いようです。これらは、「手段を問うWhat(何を?)」「方法を問うHow(どうやる?)」といえます。
本連載は、一般的なキャリア論には書かれない目的を問う「Why(なぜ?)」が主な内容です。
このような場合のWhyは、どうしても「〜すべき」という「べき」の話になります。「キャリアを検討する目的は、転職や昇給時などに過大評価されて好条件の待遇を受けるべきだから」などです。
しかし、べきは何かしらの物語の設定です。上の好条件の処遇でいうと、「個人や家族は豊かになって幸福であるべき」という物語などがベースになっています。幸福は人それぞれの物語なので、一般的なキャリア論ではWhyはあまり語られません。
一方、本連載は主題にべきが含まれる物語のような内容です。個人単位ではなくエンジニアという種族の生き方についての物語です。どうせ物語ならば、多くのエンジニアが好むSFのような提言にしましょう。
SFらしく、荒唐無稽なマジカルファンタジーではなく、未来でなぞる可能性があるロジカルな内容を目指します。例えば、自動運転AIが走行中、飛び出してきた1人の子を避けたら老夫婦をひくような状況があるとします。命は平等という設定のまま直進するか、将来の生産性を加味し、人の価値を算出して避けるのか。将来、この未来のトロッコ問題の解法を、エンジニアとしてアルゴリズムにして実装する際にも参考になり得る話です。
本連載のキーワードは3つです。
「工学性」は、SFらしく独自の用語です。Wikipediaにも載っていません。エンジニアリングの度合いを示す言葉です。
また、本連載は次の3つの編に分けて述べていきます。
エンジニアとしてどう生きるべきか? 今回は準備編として、モジュールと工学性を説明していきます。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.