ラズパイにArm版Windows 11をインストールしてみたら、意外と簡単に動いたラズパイ研究室

ワンボードコンピュータとして定番となっている「Raspberry Pi」は、本来の教育向けはもちろんのこと、ロボットの制御やIoT向けといった用途で使われている。比較的安価であることが魅力だ。この「Raspberry Pi」でArm版Windows 11の実行が可能だという。そこで、早速試してみた。

» 2023年01月13日 05時00分 公開
[小林章彦デジタルアドバンテージ]

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Raspberry PiでArm版Windows 11を動かしてみる Raspberry PiでArm版Windows 11を動かしてみる
Raspberry Piは、Armプロセッサを搭載しており、Arm版Windows 11の実行が可能だという。試しに、手元にあったRaspberry PiにArm版Windows 11をインストールしてみた。幾つか注意点はあるものの、意外と簡単に起動できた。ただ、実用性は……?

 当初は教育用のワンボードコンピュータとして提供が開始された「Raspberry Pi(以下、ラズパイ)」だが、最近では手頃な価格や使いやすさなどから、IoT向けのコンピュータの標準ともなっている。

 ラズパイには、多くの種類が提供されており、「Raspberry Pi 3 Model B」「Raspberry Pi 4」といった標準モデルの他、小型の「Raspberry Pi Pico」や「Raspberry Pi Zero 2 W」などもある。

 他にもラズパイ類似のArmプロセッサ搭載のワンボード製品がさまざまなベンダーから提供されており、性能や用途などによって選択が可能だ。

 ラズパイは、Linuxベースの「Raspberry Pi OS」で利用するのが一般的だが、「Ubuntu」や「Manjaro ARM Linux」「Apertis」「RISC OS Pi」といったOSも提供されている。実は、GitHubで公開されている「WoR-flasher」を使うことで、Arm版「Windows 11」を実行させることが可能だ。ただし、Arm版Windows 11は、パッケージでの販売や正規版のインストールイメージ(ISOイメージ)の提供が行われておらず、インストールできるのはWindows Insider Preview版であることに注意してほしい。

 また、Microsoftが正式にサポートしているわけではなく、性能面でも実用的とはいえるものではない点に留意してほしい。あくまでも、Windows 11をラズパイで実行可能なことを示すとともに、将来性について検討するためと思っていただきたい。

ラズパイにWindows 11をインストールするために用意するもの

 ラズパイでArm版Windows 11を実行するには、メモリが4GB以上搭載されている必要がある。そのため、Raspberry Pi 400Raspberry Pi 4の4GBまたは8GBモデルのいずれかが対象となる。Raspberry Pi 3 Model BRaspberry Pi Zero 2 Wでは実行できないので注意してほしい。

 また、原稿執筆時点においては、ラズパイ上のArm版Windows 11では無線LANが利用できない。しかし、Windows 11のセットアップを完了するにはインターネット接続が必須だ。そのため、有線(イーサネット)によるネットワーク接続が必要になるので、これらの環境も用意しておくこと。

 インストールしてみるだけならば不要だが、継続的にテスト利用を行うのであれば、Windows 11で有効なライセンスでアクティベーションすることが必要になる点にも注意してほしい。

 その他、Arm版Windows 11をインストールするために必要なものを下表にまとめた。

用意するもの 備考
Raspberry Pi本体 Raspberry Pi 400またはRaspberry Pi 4(4GB/8GBモデル)
キーボード 有線接続のキーボード(Raspberry Pi 4の場合)
マウス 有線接続のマウス
micro SDカード(4GB以上) Raspberry Pi OSインストール用
micro SDカード(64GB以上) Arm版Windows 11インストール用
USBメモリ(8GB以上) Arm版Windows 11のインストールUSBメモリ作成用
Windows 11のライセンス 試用ならば不要。継続的に利用するにはWindows 11で有効なライセンスが必要
Arm版Windows 11を実行するために必要なもの

ラズパイにWindows 11をインストールする

 GitHubで公開されているWoR-flasherを使うことで簡単にArm版Windows 11のインストールUSBメモリの作成が可能だ。本稿では、Raspberry Pi 400を使って、Arm版Windows 11のインストールをインストールしている。

 インストールUSBメモリを作成するには、ラズパイ上でRaspberry Pi OSを実行する必要がある。Raspberry Pi OSは、以下のWebページでWindows OS向けの「Raspberry Pi Imager」をダウンロードし、Windows 10/11上で実行することで簡単にmicro SDカードに実行イメージを書き込むことが可能だ。

 Raspberry Pi OSを書き込んだmicro SDカードをラズパイに差し、起動すれば、Raspberry Pi OSが起動できる(ネットワークの設定などを指示に従って設定すること)。

 Raspberry Pi OSが起動したら、インターネットへの接続を確認し、データを消してもよいUSBメモリを差してから、コンソールを開いて、以下のコマンドを実行すればよい。

git clone https://github.com/Botspot/wor-flasher
~/wor-flasher/install-wor-gui.sh


WoR-flasherをインストールしてArm版Windows 11のインストールUSBメモリを作成するコマンド

 インストールUSBメモリを作成するスクリプトが実行され、ウィザードが起動する。画面の指示に従って、インストールするOS(Windows 11)やインストール先のUSBメモリ、言語(ja-jp)などを選択していけば、USBメモリにWindows 11のインストールイメージが書き込まれる。

 [Next Steps:]画面が表示されたら、USBメモリへの書き込みが完了したので、Raspberry Pi OSをシャットダウンする。

ラズパイ用のArm版Windows 11のインストールUSBメモリを作成する(1) ラズパイ用のArm版Windows 11のインストールUSBメモリを作成する(1)
Raspberry Pi OSを起動して、コンソールで上記のコマンドを実行する。「git clone」コマンドで、GitHub上の[wor-flasher]フォルダをコピーし、次のコマンドでそのフォルダ内にあるスクリプトを実行している。
ラズパイ用のArm版Windows 11のインストールUSBメモリを作成する(2) ラズパイ用のArm版Windows 11のインストールUSBメモリを作成する(2)
スクリプトを実行すると、[Windows on Raspberry]ウィザードが起動する。最初の画面では、インストールするOS(Windows 11)とインストール先(ラズパイ)が選択されていることを確認する。
ラズパイ用のArm版Windows 11のインストールUSBメモリを作成する(3) ラズパイ用のArm版Windows 11のインストールUSBメモリを作成する(3)
インストールするWindows 11の言語を選択する。日本語の場合は、[ja-jp]を選択すればよい。
ラズパイ用のArm版Windows 11のインストールUSBメモリを作成する(4) ラズパイ用のArm版Windows 11のインストールUSBメモリを作成する(4)
インストール先となるUSBメモリを選択する。ここにUSBメモリが表示されない場合は[Refresh]ボタンをクリックして、USBメモリを認識させる。
ラズパイ用のArm版Windows 11のインストールUSBメモリを作成する(5) ラズパイ用のArm版Windows 11のインストールUSBメモリを作成する(5)
インストール先などを確認して、[Flash]ボタンをクリックする。USBメモリが初期化されて、ファイルのコピーなどが実行される。
ラズパイ用のArm版Windows 11のインストールUSBメモリを作成する(6) ラズパイ用のArm版Windows 11のインストールUSBメモリを作成する(6)
実行過程は、新しいコンソールが開いて、そこに表示される。何も動いていないように見えて、不安になるが気長に待つこと。[Next steps:]画面が表示されたら、USBメモリへの書き込みは終了だ。[Close]ボタンをクリックし、Raspberry Pi OSをシャットダウンする。

Arm版Windows 11のインストールイメージをmicro SDカードに書き込む

 Raspberry Pi OSのmicro SDカードを抜き、新しいWindows 11をインストールする空のmicro SDカード(64GB以上)を差し、再びラズパイの電源を「オン」にすると、インストールUSBメモリから起動する(USBメモリから起動しない場合は後述の「USBメモリから起動しない場合」を参照のこと)。

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