ワンボードコンピュータとして定番となっている「Raspberry Pi」は、本来の教育向けはもちろんのこと、ロボットの制御やIoT向けといった用途で使われている。比較的安価であることが魅力だ。この「Raspberry Pi」でArm版Windows 11の実行が可能だという。そこで、早速試してみた。
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当初は教育用のワンボードコンピュータとして提供が開始された「Raspberry Pi(以下、ラズパイ)」だが、最近では手頃な価格や使いやすさなどから、IoT向けのコンピュータの標準ともなっている。
ラズパイには、多くの種類が提供されており、「Raspberry Pi 3 Model B」「Raspberry Pi 4」といった標準モデルの他、小型の「Raspberry Pi Pico」や「Raspberry Pi Zero 2 W」などもある。
他にもラズパイ類似のArmプロセッサ搭載のワンボード製品がさまざまなベンダーから提供されており、性能や用途などによって選択が可能だ。
ラズパイは、Linuxベースの「Raspberry Pi OS」で利用するのが一般的だが、「Ubuntu」や「Manjaro ARM Linux」「Apertis」「RISC OS Pi」といったOSも提供されている。実は、GitHubで公開されている「WoR-flasher」を使うことで、Arm版「Windows 11」を実行させることが可能だ。ただし、Arm版Windows 11は、パッケージでの販売や正規版のインストールイメージ(ISOイメージ)の提供が行われておらず、インストールできるのはWindows Insider Preview版であることに注意してほしい。
また、Microsoftが正式にサポートしているわけではなく、性能面でも実用的とはいえるものではない点に留意してほしい。あくまでも、Windows 11をラズパイで実行可能なことを示すとともに、将来性について検討するためと思っていただきたい。
ラズパイでArm版Windows 11を実行するには、メモリが4GB以上搭載されている必要がある。そのため、Raspberry Pi 400かRaspberry Pi 4の4GBまたは8GBモデルのいずれかが対象となる。Raspberry Pi 3 Model BやRaspberry Pi Zero 2 Wでは実行できないので注意してほしい。
また、原稿執筆時点においては、ラズパイ上のArm版Windows 11では無線LANが利用できない。しかし、Windows 11のセットアップを完了するにはインターネット接続が必須だ。そのため、有線(イーサネット)によるネットワーク接続が必要になるので、これらの環境も用意しておくこと。
インストールしてみるだけならば不要だが、継続的にテスト利用を行うのであれば、Windows 11で有効なライセンスでアクティベーションすることが必要になる点にも注意してほしい。
その他、Arm版Windows 11をインストールするために必要なものを下表にまとめた。
用意するもの | 備考 |
---|---|
Raspberry Pi本体 | Raspberry Pi 400またはRaspberry Pi 4(4GB/8GBモデル) |
キーボード | 有線接続のキーボード(Raspberry Pi 4の場合) |
マウス | 有線接続のマウス |
micro SDカード(4GB以上) | Raspberry Pi OSインストール用 |
micro SDカード(64GB以上) | Arm版Windows 11インストール用 |
USBメモリ(8GB以上) | Arm版Windows 11のインストールUSBメモリ作成用 |
Windows 11のライセンス | 試用ならば不要。継続的に利用するにはWindows 11で有効なライセンスが必要 |
Arm版Windows 11を実行するために必要なもの |
GitHubで公開されているWoR-flasherを使うことで簡単にArm版Windows 11のインストールUSBメモリの作成が可能だ。本稿では、Raspberry Pi 400を使って、Arm版Windows 11のインストールをインストールしている。
インストールUSBメモリを作成するには、ラズパイ上でRaspberry Pi OSを実行する必要がある。Raspberry Pi OSは、以下のWebページでWindows OS向けの「Raspberry Pi Imager」をダウンロードし、Windows 10/11上で実行することで簡単にmicro SDカードに実行イメージを書き込むことが可能だ。
Raspberry Pi OSを書き込んだmicro SDカードをラズパイに差し、起動すれば、Raspberry Pi OSが起動できる(ネットワークの設定などを指示に従って設定すること)。
Raspberry Pi OSが起動したら、インターネットへの接続を確認し、データを消してもよいUSBメモリを差してから、コンソールを開いて、以下のコマンドを実行すればよい。
git clone https://github.com/Botspot/wor-flasher
~/wor-flasher/install-wor-gui.sh
インストールUSBメモリを作成するスクリプトが実行され、ウィザードが起動する。画面の指示に従って、インストールするOS(Windows 11)やインストール先のUSBメモリ、言語(ja-jp)などを選択していけば、USBメモリにWindows 11のインストールイメージが書き込まれる。
[Next Steps:]画面が表示されたら、USBメモリへの書き込みが完了したので、Raspberry Pi OSをシャットダウンする。
Raspberry Pi OSのmicro SDカードを抜き、新しいWindows 11をインストールする空のmicro SDカード(64GB以上)を差し、再びラズパイの電源を「オン」にすると、インストールUSBメモリから起動する(USBメモリから起動しない場合は後述の「USBメモリから起動しない場合」を参照のこと)。
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