KDDIらは、マルチモーダル対話AIシステムを実装した専用端末などを活用した介護モニタリングの実証実験を実施した。高齢者の健康状態や生活状況の変化を確認するための面談とその記録業務に要する時間を約7割削減できたという。
この記事は会員限定です。会員登録(無料)すると全てご覧いただけます。
KDDIと国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)、NECソリューションイノベータは2023年3月8日、高齢者向け対話AIシステムを活用した介護モニタリングの実証実験を実施した。介護モニタリングとは、ケアマネジャーが高齢者の自宅などに訪問し、健康状態や生活状況の変化を確認する業務のこと。
厚生労働省の調査によると、この業務はケアマネジャー業務全体の4分の1を占めているという。今回の実証実験は、マルチモーダル(音声や画像など複数の入力情報を基にする)対話AIシステムを実装したぬいぐるみ型専用端末とスマートフォンを活用し、高齢者の健康状態や生活状況の変化を確認した。その結果、面談とその記録業務に要する時間を約7割削減できたという。
実証実験に向けて3者は、高齢者のケアマネジメントに関する研究をしている日本総合研究所の協力を得て、介護モニタリングの一部を代替するマルチモーダル音声対話システム「MICSUS」を開発した。MICSUSには「介護の専門家の知見」が取り込まれており、対話を通じて高齢者の健康状態や生活状況の変化といった情報を収集できる。
専門的な話題だけでなく、ニュースや記事を基にした雑談も可能だという。300万件の言語資源データから言語モデルを構築して発話の意味解釈を高度化し、「遠回しな発話」にも対応している。表情や音韻的特徴、「うなずき」といった複数の情報を総合的に考慮し、感情の表出が認められてから0.1秒以内に相手の感情を推定するという。
実証実験は179人の高齢者を対象に合計927回、面談した。MICSUSによって面談と記録に必要なケアマネジャーの業務時間を、面談1回当たり従来の平均7.0分から2.2分に短縮できたという。実験に参加した高齢者は、MICSUSからの雑談の半数以上に笑顔や積極的な興味を示しており、KDDIらは「高齢者のコミュニケーション不足解消に寄与する結果も得られた」としている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.