ローコードでクラウドネイティブアプリを開発、OutSystemsがプラットフォーム提供開始開発環境とインフラ、管理機能をフルマネージドサービスとして利用可能

OutSystemsジャパンは、ローコード開発プラットフォームの新製品「OutSystems Developer Cloud」(ODC)の提供を開始した。同社は「セキュリティを含む、クラウドネイティブなアプリケーション開発運用に求められる全ての要素を備えたマネージドサービスだ」と説明している。

» 2023年05月16日 05時00分 公開
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 OutSystemsジャパンは2023年4月14日、「OutSystems Developer Cloud」(ODC)の提供を開始した。

OutSystemsの特長

画像 OutSystemsジャパンの廣瀬 晃氏

 OutSystemsは、2001年にポルトガルのリスボンで創業したローコード開発ツールベンダーで、日本法人は2017年に設立されている。同社の「OutSystems Platform」は、ドラッグ&ドロップを中心とした操作で、ユーザーインタフェースやビジネスロジック、データモデルを作成できるビジュアル開発環境に、アプリケーション(以下、アプリ)のライフサイクル管理機能を備えた統合プラットフォームとして提供されている。

 開発できるアプリの幅広さ、柔軟な外部システムとの連携機能などが特長となっており、国内でも、業務アプリのフロントエンド開発や、レガシーシステムのマイグレーションツールとしての利用など、さまざまな用途で採用実績がある。

 OutSystemsジャパンの廣瀬 晃氏(ソリューションアーキテクト マネージャー)は「さまざまな自動化のテクノロジーが登場しているにもかかわらず、ソフトウェア開発産業はいまだに“手作業”に頼っている部分が多く、それが開発現場における生産性向上の妨げとなっている。OutSystemsは、ソフトウェアの開発、運用作業を自動化するための環境を提供することで、そうした課題の解決に貢献する」と語る。

ODCはローコードで「クラウドネイティブ」を活用できる

 今回、国内での提供を開始したODCは、2022年11月に開催されたカンファレンスイベント「NextStep 2022」においてグローバルに発表されたもの。以前は「Project Neo」のコードネームで呼ばれていた。

 現行の「OutSystems 11」は、オンプレミスとクラウドサービスの両形式で利用できたが、ODCは基本的にクラウドサービスとして提供される。同サービスの東京リージョンが、2023年4月に開設されており、アプリやデータを日本国内に配備することも可能になっている。

画像 国内(東京)リージョンを利用可能

画像 OutSystemsジャパンの阿島哲夫氏

 ODCは、ローコードツールとしてのOutSystems 11の特長(高い開発生産性、多様なユースケースに対応できる柔軟性、エンタープライズシステムに求められるスケーラビリティ、アプリ運用の容易さ)に、クラウドやコンテナ、マイクロサービス、「継続的インテグレーション/継続的デリバリー」(CI/CD)といった、クラウドネイティブなテクノロジー群に基づいた開発プラットフォームとしての役割を加えたマネージドサービスとなる。

 OutSystemsジャパンの阿島哲夫氏(シニアソリューションアーキテクト)は「近年のシステム開発では、変化への対応力を高めているために、クラウドネイティブなインフラやテクノロジー、アーキテクチャを生かした環境へのニーズが高まっている。しかし、それを一から実現しようとすると、構築、運用面でのハードルが高い。ODCはセキュリティを含む、クラウドネイティブなアプリ開発運用に求められる全ての要素を備えたマネージドサービスだ」と述べている。

画像 クラウドネイティブなインフラをフルマネージドサービスとして利用できる

 ODCにおける基本的な開発運用のスタイルは、OutSystems 11とほぼ同一だという。そのため、既にOutSystemsを利用しているユーザーであれば、そのスキルを無駄にせず、移行が可能だ。

 一方で、開発したアプリの実行環境やアーキテクチャは、大きく変化している。従来は、Windows環境上の「.NET Framework」をランタイムとするケースが標準的だったが、ODCは「Amazon Web Services」(AWS)に構築された「Kubernetes」ベースのコンテナオーケストレーション環境(Amazon Elastic Kubernetes Service:EKS)と、Linuxコンテナ、「.NET Core」などが、それに代わる。

画像 高度なクラウドネイティブインフラでアプリを実行可能

 「1つのアプリケーションは、1つのコンテナとしてパッケージングされ、アプリ間のコミュニケーションは、マイクロサービスアーキテクチャに基づいた“疎結合”になる。現状、この環境はODC上でのみ提供されるが、将来的にはユーザー側で管理しているAWSや『Microsoft Azure』上のKubernetes環境もサポートする予定だ」(阿島氏)

 ODCは、継続的に機能強化を続けており、2023年以降に「カスタムコードによる機能拡張」「開発環境から利用できる外部データベースコネクター」「アプリURLの検索エンジン最適化」「アクセス元IPアドレスの制限」「SOC2(Service Organization Control Type 2)対応」「エンタープライズネットワークとの接続」「APIを介した外部のCI/CDツールとの連携」といった機能提供を予定しているという。

40画面を持ちモバイルにも対応する受注管理アプリを「約1人月」で

 発表会では、OutSystemsジャパンの中嶋健太氏(シニアソリューションアーキテクト)による、ODCを利用したアプリ開発、運用のデモンストレーションも行われた。

画像 OutSystemsジャパンの中嶋健太氏

 デモ環境は、一般的な受注管理のためのWebアプリであり、約30のデータベーステーブルと、約40の画面から構成されている。

 含まれる機能としては、申請承認ワークフロー、各コンテクストに沿ったレコードの一覧画面、各レコードの詳細画面、スマートデバイス向けのレスポンシブ対応、Salesforceや基幹システム(SAP)との連携などがある。中嶋氏によると「ODCの活用により、この規模のアプリを、1人の開発者が4週間程度で開発できる」という。

画像 開発した受注管理アプリのデモ画面

 統合開発環境である「ODC Studio」のインタフェースや開発方法は、従来のOutSystems 11とほぼ変わらない。OutSystemsでは、オープンソースの拡張機能を開発者コミュニティーが公開する「Forge」と呼ばれる機能が標準で提供されているが、これはODCにおいても同様に利用できる。

 なお、開発環境上でアプリに変更を加えた後は、画面上部にあるボタンをクリックするだけで、テスト環境や本番環境に展開可能だ。また、アプリのバージョン管理や複数のユーザーが同時に作業した場合のコンフリクト処理なども提供されている。

 ODC上で開発、運用しているアプリの管理は「ODC Portal」画面で行う。中嶋氏によると、OutSystems 11の「サービスセンター」と「パイプライン」の機能を統合した新しいポータル画面だという。

画像 ODC Portalの画面

 ODC StudioとODC Portalを組み合わせることで「開発環境からQA環境、本番環境への展開が自動化され、変更から数秒程度で本番環境へのデプロイが可能」(中嶋氏)となり、短いスパンでリリースを繰り返す、アジャイルな開発運用環境が実現できるという。

ユーザーは長期的な移行に向けた検討を

 新しい製品が発表されたが、今後も引き続きOutSystems 11は利用可能だ。最短でも2027年3月まで提供されることが決まっており、提供とサポートが終了する場合には、「最低でも終了の2年以上前にアナウンスを行う」(阿島氏)としている。また、OutSystems 11で開発したアプリをそのままODCに移行できる専用の実行環境も提供される予定だ。

 「ユーザーは、当面の間、現行製品を使い続けながら、ODCへ自社に必要な機能が全て実装されたと判断したタイミングで、移行を決断できるとしている。OutSystems 11からODCへ移行する場合、既存のライセンスでODCの利用も可能になる。また、ODCの各種ドキュメントについては、既に開発者ガイドの日本語化が完了しており、その他の資料についても翻訳を進めている」(廣瀬氏)

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