Googleの生成AI「Bard」が数学的なタスク、コーディングの質問、文字列操作のプロンプト(指示)に対し、より正確に対応できるようになった。
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Googleは2023年6月7日(米国時間)、同社の生成AI「Bard」が「暗黙のコード実行」という新技術により、数学的なタスク、コーディングの質問、文字列操作のプロンプト(指示)に対し、より正確に対応できるようになった他、「Google Sheets」(Googleスプレッドシート)へのエクスポートも可能になったことを明らかにした。
Bardは、Googleが試験運用中の文章生成AI。同社の大規模言語モデル(LLM)である「PaLM 2」を利用してユーザーをサポートする。
Bardが質問や依頼(「動物保護施設のボランティア登録のための表を作成して」といったような)に応えて、表を生成した場合、それをGoogle Sheetsに直接エクスポートできるようになった。
Bardは「暗黙のコード実行」という新技術により、計算プロンプトを特定し、バックグラウンドでコードを実行するようになった。その結果、次のようなプロンプトへの応答が改善される。
Googleは、暗黙のコード実行をBardに導入した理由を、次のように説明している。「LLMは予測エンジンのようなものであり、プロンプトが与えられると、次にどのような単語が来るかを予測し、回答を生成する。そのため、言語や創造的なタスクでは非常に優秀だが、推論や数学のような分野では弱い。高度な推論や論理力を要する複雑な問題を解決するには、LLMの出力を利用するだけでは不十分だ」
そこでGoogleは、Bardにコードを生成、実行させることで、推論や計算の能力を高める手法を採用した。このアプローチは、人間の2つの対照的な思考パターンにヒントを得たものだ。よく研究されてきたこれらの思考パターンに関する有名な本の一つとして、行動経済学の研究でノーベル経済学賞を受賞したダニエル・カーネマン氏による『Thinking, Fast and Slow』(ファスト&スロー あなたの意思はどのように決まるか?)がある。
同氏はこの著書の中で、「システム1の思考(速い思考)」と「システム2の思考(遅い思考)」を、次のように対比して説明している。
この分類に当てはめると、LLMはシステム1の思考であり、素早く文章を作成するが、深く考えない。従来の計算は、システム2の思考と密接に関連しており、定型的で柔軟性に欠ける。だが、正しい手順を踏めば、目覚ましい結果(長い割り算の解答のような)が得られる。
Googleは、「今回のアップデートでは、LLM(システム1)と従来のコード(システム2)の両方の機能を組み合わせ、Bardの回答の精度を高めることに成功した」と述べている。この方法により、社内の試験データセットにおける計算ベースの質問や依頼、数学の問題に対するBardの回答の精度が、約30%向上しているという。
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