先日、自分の使っているWindows 11デバイスの「更新の履歴」(設定>Windows Update>更新の履歴)を確認していたとき、機能更新プログラムの一覧に違和感を覚えました。他のWindows 11デバイス(物理マシンおよび仮想マシン)で確認してみると、同じように。旧バージョンからアップグレードを繰り返してきた同じWindows 11 バージョン22H2を実行しているのにもかかわらず、その履歴は実にさまざまでした。
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筆者がメインで使用しているPCは、2019年末にリプレースのために購入した、「Windows 10 Pro」(バージョン1909)がプリインストールされていたデスクトップPCです。その後、「Windows 10」と「Windows 11」の全ての機能更新プログラムによるアップデートを経て、現在はWindows 11 バージョン22H2を実行しています。以下の画面1は、このPCのWindows Updateの「更新の履歴」です。
一見、何もおかしなところはなさそうですが、別のPC(仮想マシン)の「更新の履歴」を見てください(画面2)。
画面2の「更新の履歴」では、最初はInsider Previewビルドを実行していましたが、その後、Insiderから抜け、Windows 10 バージョン20H2以降の全ての機能更新プログラムを経てきました。そして「更新の履歴」には、最後にインストールされたWindows 11 バージョン22H2の機能更新プログラムのインストールが記録されています。一方、画面1はインストール日から想像できるように、機能更新プログラムとして記録されているのはWindows 11 バージョン21H2です。
以下の画面3もまた別のWindows 11 バージョン22H2を実行するPC(ノートPC)のものです。
この「更新の履歴」には、機能更新プログラムのインストールが記録されていません。このPCは、かつて大学生の子どもが使用していたもので、社会人になったときに返してもらい、インストールされていたWindows 10 Home バージョン21H2を削除して、クリーンアップ後にWindows 11 Pro バージョン21H2を新規インストールし、その後、Windows 11 バージョン22H2にアップグレードして現在に至ります。
Windows 11 バージョン21H2がインストールされていたことは、2022年9月以前にインストールされたWindows 11(バージョン21H2)の品質更新プログラムの履歴で確認できます。
更新プログラムの分類としては「機能更新プログラム」に位置付けられていますが、毎月の品質更新プログラムと同様のエクスペリエンスでインストールできる小さな有効化パッケージ形式で提供されました。
参考までに、システム要件を満たさないため、Windows 11にアップグレードできなかったWindows 10 バージョン22H2のPC(ノートPC)の「更新の履歴」を見てみましょう(画面4)。
このPCは、「Windows 7 Pro」(64bit版)がプリインストールされていた古いノートPCであり(「Windows 7」搭載モデルだったことを思い出し、まだ現役であることにいまさらながら驚いています)、「Windows 8.1」、Windows 10を経て、Windows 10の全ての機能更新プログラムでアップグレードしてきたものです。「更新の履歴」には、Windows 10 バージョン2004以降の全ての機能更新プログラムのインストールが記録されています。
冷静になって考えると、まず、Windowsのアップグレードによって記録として残るのは、“最後のバージョンの履歴”であるということを覚えておいてください。アップグレード前のバージョンは、アップグレード後のWindowsは感知しません。
話をややこしくしているのが、全ての「更新の履歴」に残されたWindows 10における最後の複数の機能更新プログラムの存在です。Windows 10 バージョン20H2、21H1、22H2は全て、Windows 10 バージョン2004とOSのコアが共通(VB_RELEASE)であり、Windows Updateでアップデートしてきた場合は「有効化パッケージ」形式が使用されました。
有効化パッケージは、通常のアップグレードインストールとは異なり、新機能を有効化し、バージョン情報を切り替える小さな更新プログラムであり、その更新エクスペリエンスは毎月の更新プログラムと変わりません。
品質更新プログラムの履歴は、以前のバージョンのものを含めて残ります(画面3を参照)。有効化パッケージは、実質的に品質更新プログラムに近いものですが、分類上は“機能更新プログラム”として扱われ、「更新の履歴」の機能更新プログラムの一覧に履歴が残ります。そして、この履歴は、有効化パッケージであれ、通常のアップグレードであれ、新しいバージョンになっても(以前のバージョン向けの品質更新プログラムと同様に)残ってしまうのではないでしょうか。
Windows 10 バージョン2004の機能更新プログラムの履歴が、画面1や画面2には存在せず、画面4に存在するのは、Windows 10 バージョン2004が通常のアップグレードであり、画面1や画面2では、Windows 11へのアップグレード時に消えてしまったのです。
残る疑問は、画面1と画面3に記録されていないWindows 11 バージョン22H2の履歴です。筆者の記憶違いでないなら、画面2はWindows Update経由でのアップグレード、画面1と画面3はメディアを使用したアップグレードだったと思います。Windows Updateを使用しないアップグレードは、“Windows Update”の「更新の履歴」には記録されないのではないでしょうか。これは、あくまでも筆者の想像です。もしそうであれば、画面1〜3の「更新の履歴」の違いの説明がつくからです。
皆さんのWindowsデバイスの「更新の履歴」はどうなっていますか?
今回、もう1つ気が付いたことがあります「品質更新プログラム」と「定義更新プログラム」の履歴の数が、その履歴でも「50」であることです。想像するに、更新プログラムの分類ごとに過去50の履歴を表示するのが上限になっているのではないかと思います。
試しに、メインのPCでWindows UpdateエージェントAPIを使用して更新プログラムのインストール履歴の数(成功、失敗を含めて)を数えてみたところ、「415」という結果になりました(画面5)。
なお、Windows UpdateエージェントAPIで取得できるのは、現在実行中のバージョンにアップグレード後からのもの(機能更新プログラムを除く)に限られるようです。Windows標準で利用できる「Get-Hotfix」や「WMIC QFE LIST」や「Systeminfo」はさらに少ない情報しか返してくれません。
「更新の履歴」がどこから情報を取ってきているのか、謎が残ります。その後、「Windows Sysinternals」のユーティリティー(Procmon.exeやStrings.exe)を使用していろいろと調べてみましたが、「MoUsoCoreWorker.exe」プロセスが「C:\ProgramData\USOPrivate\UpdateStore\store.db」から情報を取得し、一覧にしているように見えました(画面6)。
岩手県花巻市在住。Microsoft MVP 2008 to 2023(Cloud and Datacenter Management)。SIer、IT出版社、中堅企業のシステム管理者を経て、フリーのテクニカルライターに。Microsoft製品、テクノロジーを中心に、IT雑誌、Webサイトへの記事の寄稿、ドキュメント作成、事例取材などを手掛ける。個人ブログは『山市良のえぬなんとかわーるど』。近著は『Windows版Docker&Windowsコンテナーテクノロジ入門』(日経BP社)、『ITプロフェッショナル向けWindowsトラブル解決 コマンド&テクニック集』(日経BP社)。
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