ソフトウェア開発プラットフォーム「GitHub」を使用する開発者の活動に関する年次レポートの最新版「The State of the Octoverse 2023」が発表された。
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GitHubは2023年11月8日(米国時間)、同社のソフトウェア開発プラットフォーム「GitHub」を使用する開発者の活動に関する年次レポートの最新版「The State of the Octoverse 2023」を発表した。
The State of the Octoverse 2023では、2023年を「AIが主流になった年」と位置付け、AI、クラウド、Gitを巡るオープンソースの活動が開発者体験をどのように変えているか、開発者や組織にどんな影響を与えているかを調査、分析した結果をまとめている。この調査分析は、2022年10月1日〜2023年9月30日にGitHubから取得され、匿名化されたユーザーデータと製品データを使って行われた。
GitHubは、2023年(2022年10月〜2023年9月。以下同じ)におけるGitHubの全体的な利用状況の要約を以下のように紹介している。
GitHubはレポートで、2023年には3つの大きなトレンドが明らかになったと報告している。
OpenAIなどのAI企業の基盤モデルを試す開発者が増えており、オープンソースの生成AIプロジェクトは、2023年の最も人気のあるオープンソースプロジェクト(コントリビューター数ベース)の上位8つに入っている。また、ほぼ全ての開発者(92%)がAIコーディングツールを使用しているか、または試している。
GitベースのInfrastructure as Code(IaC)ワークフローを使用する宣言型言語が増加し、クラウドデプロイ(展開)における標準化が進展し、Dockerfileやコンテナ、IaCなどのクラウドネイティブ技術を使用する開発者の割合が急増している。
2023年もこれまでと同様に、こうしたコントリビューター数と、コントリビューターの総数のどちらに関しても、最も多かったオープンソースプロジェクトは、企業が支援するプロジェクトだった。だが、2023年には、初めて貢献したコントリビューター数が最も多かった上位7つのプロジェクトに、コミュニティー主導の生成AIプロジェクトもランクインした。また、GitHub上のプライベートプロジェクトが前年比38%増と大幅に伸び、GitHub上の全アクティビティーの80%以上を占めた。
レポートでは、以下の6つのテーマに沿って調査結果を報告している。
国や地域別に見ると、2023年に米国は、GitHubを使用する開発者数が前年比21%増の2020万人となり、これまでと同様に世界で最も多かった。2〜5位はインド、中国、ブラジル、英国で、日本は8位だった。全人口に占める開発者の割合が最も高い国はシンガポールとなった。
GitHubは、各国の現在の増加率を基に、2028年までの開発者数の推移予測も示している。それによると、2028年の1〜5位はインド、米国、ブラジル、中国、インドネシアとなる見通しで、日本は6位に浮上すると予測されている。
GitHubではここ数年、数々の生成AIプロジェクトが立ち上げられてきたが、2023年のGitHubのデータは、生成AIプロジェクトの導入がこれまでより幅広い分野で急速に進んでいることを示している。2023年上半期時点で生成AIプロジェクトの数は、2022年全体の2倍以上に増えた。
2023年における生成AIプロジェクトの個人コントリビューターも世界で急増し、前年比148%増となり、パブリック生成AIプロジェクトの総数も前年比248%増の6万5000に達した。
GitHubは、生成AIについて学ぶ開発者の大幅な増加は、ビジネスに影響を与えるとみている。「より多くの開発者が生成AIベースのアプリケーションの構築に精通するとともに、AIを搭載した独自の製品やサービスを開発しようとする企業をけん引する、人材プールが拡大するだろう」と述べている。
GitHubで2023年に最も人気のあるプログラミング言語のトップ10は以下の通り。2022年からの順位変動としては、TypeScriptが初めてJavaを抜いて3位となり、Cがシェル言語を抜いて8位となった。
2019年からクラウドネイティブ開発が大きく増加しており、IaCのオープンソースでの利用が拡大し続けている。2023年には、シェル言語とHashicorp Configuration Language(HCL)がオープンソースプロジェクトの主要言語として再浮上した。
一方、コントリビューター数の増加率について見ると、データ分析や運用によく使われる言語やフレームワークなどが上位を占めている。また、Kotlin、Rust、Go、Luaは、GitHubの新しいプロジェクトでより大きな伸びを示している。
RustとLuaは、メモリ安全性と効率性の高さで注目されており、いずれもシステムや組み込みシステムのプログラミングに使用できる。このことが躍進の要因となっている。また、最近のGoの利用拡大は、KubernetesやPrometheusといったクラウドネイティブプロジェクトでの採用が背景にある。
2023年初めに、GitHubを利用する開発者は1億人を超え、GitHubの全世界の開発者アカウント数は2023年に、前年比で約26%増えた。「プライベートリポジトリとパブリックリポジトリにおける開発者の活動は、どんな技術が広く採用されているか、あるいは広く採用されようとしているかを明らかにしている」とGitHubは述べ、以下の3つの動向を紹介している。
2023年にパブリックプロジェクトのタスク自動化や、CI/CD(継続的インテグレーション/継続的デリバリー)パイプライン開発などのために、開発者がGitHub Actionsを実行した時間(分)は前年比で169%増えた。
開発者はパブリックプロジェクトでGitHub Actionsを、1日平均2000万分以上、実行した。GitHub Marketplace で公開されているGitHub Actionsの数は2023年に2万を突破し、増加を続けている。
これらは、CI/CDやコミュニティー管理の自動化に対するオープンソースコミュニティー全体の意識が高まっていることを示している。
GitHubへのコントリビューションの80%以上がプライベートリポジトリに対して行われている。プライベートプロジェクトへのコントリビューションは42億以上、パブリックプロジェクトやオープンソースプロジェクトには3億1000万以上となっている。プライベートなアクティビティーの比重の大きさは、インナーソースの価値に加え、Gitベースのコラボレーションがオープンソースだけでなく、プロプライエタリなコードの品質にも利益をもたらすことを示唆していると、GitHubは述べている。
2023年には、430万のパブリックおよびプライベートリポジトリでコンテナ作成にDockerfileが使用され、100万以上のパブリックリポジトリでDockerfileが使用された。数年前からTerraformなどのクラウドネイティブ技術も利用が増えており、IaCプラクティスの導入拡大は、開発者がクラウドデプロイの標準化を進めようとしていることを示唆していると、GitHubは指摘している。
GitHubは、オープンソースコミュニティーやプロジェクトのセキュリティ向上を目的に、Dependabot、ブランチ保護、CodeQL、シークレットスキャンといったセキュリティ機能を、パブリックプロジェクト向けに無料で提供するために投資してきた。
2023年におけるDependabotやブランチ保護などの利用データは、これらの投資が、オープンソースプロジェクトの全体的なセキュリティ強化に役立っていることを示していると、GitHubは述べている。
2023年には、Mastodonのような人気プロジェクトから、Stable Diffusion、LangChainのような生成AIプロジェクトまで、GitHub上のオープンソースプロジェクトへの総コントリビューション数は3億100万となった。
以下のように、コントリビューターが最も多かった上位8つのオープンソースプロジェクトの多くは、企業が支援するプロジェクトだった。だが、コミュニティー主導のホームオートメーションプロジェクトであるhome-assistant/coreや、同じくコミュニティー主導の生成AIプロジェクトであるAUTOMATIC1111/stable-diffusion-webui、langchain-ai/langchainも、この上位8プロジェクトに入っている。
初めて貢献したコントリビューター数が最も多かった上位7つのプロジェクトでも、同様の傾向が見られる。コミュニティー主導プロジェクトでは、AUTOMATIC1111/stable-diffusion-webuiとhome-assistant/coreの他、生成AIプロジェクトのSignificant-Gravitas/Auto-GPTがこの上位7プロジェクトに入っている。
また、2023年には、オープンソースに初めて貢献したコントリビューター数が、調査開始以来最大となった。
なお、GitHubは「Innovation Graph」ページで、GitHubの使用状況に関する詳細データをグラフとともに提供している。
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