DevOpsにおける「継続的プランニング」とは 開発者を失望させないための注意点メリットと課題

自社のDevOpsの取り組みに「継続的プランニング」プロセスは適しているのだろうか。本稿では、継続的プランニングのメリットと課題を理解し、開発効率を向上させる方法を確認する。

» 2023年11月22日 08時00分 公開
[Chris TozziTechTarget]

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 TechTargetは2023年10月13日(米国時間)、「継続的プランニング」に関する記事を公開した。

 「継続的プランニング」とは、ソフトウェアデリバリーの計画を継続的に見直し更新するDevOpsのプロセスを指す。理論的には素晴らしく聞こえるが、実践するとなると極めて厄介なプロセスだ。

 DevOpsチームが継続的プランニングを実装することが理にかなっている状況もある。だが、本当の意味での継続的プランニングプロセスが常に可能なわけではなく、価値を生み出すよりも問題を生じる方が多い状況もある。

 本稿では、DevOpsにおいて継続的プランニングが意味すること、継続的プランニングに関連する理論上のメリットと課題、継続的プランニングに関する健全な視点の設け方について詳しく検討する。

DevOpsにおける継続的プランニングとは

 DevOpsにおける継続的プランニングとは、ソフトウェアデリバリーに関連する計画を絶えず評価し、変更するプロセスを指す。例えば、最近実装に着手した新機能の開発をやめ、市場調査によって「顧客が好む」と分かった機能の開発にリソースを配分し直す場合がある。あるいは、QAチームが予想よりも多くのバグを見つけ、新規アプリケーションのリリース予定日を遅らせることもあるだろう。

 継続的インテグレーションや継続的デリバリーなど、DevOpsチームが「継続的」と冠を付ける全てのプロセスと同様、継続的プランニングの「継続的」も相対的な言葉だ。文字通り週7日間24時間体制で計画を見直すことなどできない。そうではなく、継続的プランニングに取り組むDevOpsチームは、1週間当たりせいぜい数回程度計画を更新することを目指す。

 文字通りの「継続的」ではないとしても、年に1回か2回しか変更しないこれまでのソフトウェアデリバリーアプローチに比べれば、はるかに高い頻度で計画を見直すことになる。

DevOpsは、継続的な統合、開発、提供、展開、フィードバックの無限ループ(提供:TechTarget)

継続的プランニングのメリット

 継続的プランニングの主なメリットはシンプルだ。計画を頻繁に見直し、新たな洞察に基づいて更新すれば、ソフトウェアの計画が、よりアジャイルで、先を見越すものになる。ソフトウェアデリバリーの運用に生じる新たな課題に先手を打ち、新たなビジネスチャンスを可能な限り素早く見極め、対応できるようになる。

 また、継続的プランニングによって、DevOpsのエンジニア、QAチーム、さらにはソフトウェアデリバリープロセスに関わる関係者(DevOpsチームが作成しているアプリケーションを利用する技術部門以外の業務ユーザーなど)がアプリケーションの開発状況を相互に確認する機会も増える。頻繁にチェックインすることで、コラボレーションが促され、新たなアイデアを定期的に考案する機会が生み出される。

継続的プランニングの課題

 とはいえ、継続的プランニングには大きな課題も幾つかある。

 1つ目は、ソフトウェアのデリバリー速度が遅くなる可能性があることだ。定期的に議論し、更新することで、チームは開発に集中できなくなる可能性がある。毎週何回もミーティングを繰り返し、開発業務をチェックすれば、コードを作成、ビルド、テスト、デプロイする時間が短くなる。

 さらに問題なのは2つ目。計画を頻繁に更新すると、DevOpsエンジニアが作業しているコードの多くが無意味になる可能性があることだ。例えば、進行中の機能を突然取りやめれば、その機能の開発に費やした時間が無駄になる。こうしたことはソフトウェアのデリバリーを遅らせるだけでなく、リリースされない機能に真剣に取り組んできた開発者を失望させる。

 3つ目として、継続的プランニングは事業の観点でも課題をもたらす可能性がある。優先順位が絶えず変われば、事業部門の関係者は「DevOpsチームが次にどの機能をリリースするか」を知るのが難しくなる。マーケティング担当者が新機能を宣伝するキャンペーンの計画に着手した後に、予期せぬ技術的課題によってエンジニアがその機能のリリースを中止したことが明らかになることもある。

DevOpsにとって継続的プランニングが意味を持つ条件

 幾つか課題があるとしても、継続的プランニングは賢明なプロセスになる可能性がある。どのような場合でも、DevOpsチームは自社のニーズに基づいて、継続的プランニングのメリットと課題を慎重に比較する必要がある。

 一般的に、経営環境の変化が速い事業の場合は、継続的プランニングに取り組む価値がある。例えば、新たなアプリケーションで市場に激震を起こそうとするスタートアップ企業は、幅広く利用されるアプリケーションを市場に投入している企業よりも、継続的プランニングに取り組む価値がある。

 DevOpsチームの規模も、継続的プランニングの要因の一つだ。小さなチームは非公式のコミュニケーションを容易にとれる可能性が高いので、継続的なチェックインを公式のプロセスにしても得られるメリットは少ないといえる。半面、プロジェクトに多くの関係者が携わり、複数の視点を定期的に取り込む構造が必要ならば継続的プランニングが価値をもたらす可能性がある。

適切なバランスを取る

 繰り返しになるが、「継続的」というのは相対的な言葉だ。ソフトウェアの計画を1週間に数回更新することに意味がなければ、月に1回か2回計画を見直すことにしても構わない。そうすれば、定期的に計画を変更することによって問題が生じるのを避けながら、それまでのソフトウェア計画よりもアジリティを高めることが可能になる。

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