Windows 11 バージョン23H2がWindows Update経由でやって来る体験が“人それぞれ”なワケその知識、ホントに正しい? Windowsにまつわる都市伝説(243)

2023年10月31日(米国時間)、Windows 11の最新の年間チャネル「Windows 11 バージョン23H2(Windows 11 2023 Update)」がリリースされました。現在のロールアウトのステータスは、ユーザーの意思によってWindows Update経由または、その他の方法で先行的にアップデートできる段階ですが、数カ月後にはWindows Update経由で広くロールアウトされます。ですが、いち早くアップデートしたくても、Windows Updateで利用可能にならないという事例が多いようです。

» 2023年12月13日 05時00分 公開
[山市良テクニカルライター]

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「Windowsにまつわる都市伝説」のインデックス

Windowsにまつわる都市伝説

なぜ「How to get the Windows 11 2023 Update」の手順で取得できないのか?

 Microsoftは、「Windows 11 バージョン23H2」のリリースと同時に、以下のドキュメントを公開し、この「機能更新プログラム」をいち早く取得する方法を説明しました。

 現在、「Windows 11 バージョン22H2」を実行している対象デバイスのユーザーで、新しいWindows 11 バージョン23H2を“利用可能になったときに(when they are available)”体験したいと考えているのであれば、「設定」アプリの「Windows Update」を開き、「利用可能になったらすぐに最新の更新プログラムを入手する」を「オン」にして、「更新プログラムのチェック」をクリックすればよい、と説明されています。

 バージョン23H2が利用可能な場合は、以下の画面1のように「Windows 11, version 23H2が利用可能です」と表示され、「ダウンロードとインストール」をクリックすることでアップデートを開始できるとされています。多くの人がこの画面を想像したことでしょう。しかし、画面1は本物ですが、「利用可能になったらすぐに最新の更新プログラムを入手する」を「オン」にしたまま、この画面の状態になることはないような気がするのです。

画面1 画面1 デバイスでWindows 11 バージョン23H2が利用可能になると、このようにユーザーの選択でダウンロードとインストールを開始できるようになるはず……。だが、実際には少し違うようだ

 筆者はWindows 11 バージョン23H2リリース直後の2023年11月初め、この挙動を確認するために、仮想マシン環境にWindows 11 バージョン22H2を新たに3つ準備し(2つは日本語版、1つは英語版)、Windows Update経由で機能更新プログラムが先行的に利用可能になることを体験しようとしました(物理マシンは既に別の方法でWindows 11 バージョン23H2にアップデート済みです)。

 3台の仮想マシンは全て、2023年11月8日までの時点では「利用可能になったらすぐに最新の更新プログラムを入手する」を「オン」にしていましたが、最新ビルドに更新した後も、Windows 11 バージョン23H2が利用可能になることはありませんでした。

 限りなく近いものは体験していますが、画面1そのものを体験したことはありません。「利用可能になったらすぐに最新の更新プログラムを入手する」の「オン/オフ」が何か誤作動しているのではと考え、両方を試しましたがダメでした(画面2)。なぜなら、「How to get the Windows 11 2023 Update」ドキュメントで紹介されているビデオ(https://aka.ms/video/W11/how-to-get-23H2)では、“オフ”になっていたからです(画面3)。

画面2 画面2 「利用可能になったらすぐに最新の更新プログラムを入手する」のオン/オフは関係ないのかもしれない
画面3 画面3 「How to get the Windows 11 2023 Update」のビデオでは「オフ(off)」になっている

「利用可能になったらすぐに……」のオフで利用可能になる?

 仮想マシンでは最新ビルドに更新した時点でチェックポイントを作成し、チェックポイントに戻して試したりもしました。そんな中、1台の仮想マシンで「利用可能になったらすぐに最新の更新プログラムを入手する」を「オン」にして更新を確認後、「オフ」にして再び更新を確認すると、Windows 11 バージョン23H2を検出しました(画面4)。

画面4 画面4 1台の仮想マシンで「利用可能になったらすぐに最新の更新プログラムを入手する」を「オン」から「オフ」に切り替えたところ、Windows 11 バージョン23H2の機能更新プログラムが利用可能になった

 ちなみに、「ダウンロードとインストール」をクリックせずに、再び「オン」にして「更新プログラムのチェック」をクリックすると、自動的にダウンロードとインストールが始まってしまいました。もう一度、この挙動を確認しようと、ダウンロードの途中でチェックポイントに戻し、何度か再現させることができましたが、その後、その日は再び「オン」でも「オフ」でもWindows 11 バージョン23H2を検出しなくなってしまいました。

 ここからは想像ですが、前出の画面3のビデオが示すように、「利用可能になったらすぐに最新の更新プログラムを入手する」は、Windows 11 バージョン23H2を先行的に取得するための必須要件ではないと思います。「How to get the Windows 11 2023 Update」ドキュメントにそう記されているのは、Windows 11 バージョン23H2のGA(一般提供)ビルド「22631.2428」に相当するWindows 11 バージョン22H2向けの2023年10月の品質更新プログラム「22621.2428」までに更新してもらうためでしょう。

 Windows 11 バージョン22H2とバージョン23H2は、OSのコア部分が共通しており、Windows 11 バージョン23H2の新機能は2023年10月の品質更新プログラムまでに“無効化”された状態で準備されています。有効化パッケージ形式である今回の機能更新プログラムは、新機能を有効化し、バージョン/ビルド情報を切り替える小さな更新プログラムです。

 なお、有効化パッケージの前提条件は、2023年10月31日にリリースされた「オプションの更新プログラム」(Cリリース)、OSビルド「2621.2506」となっています(実際には2023年10月26日リリース、Windows 11 バージョン23H2のリリースを反映して更新プログラムのタイトルが変更)。もしかすると、Windows 11 バージョン22H2に対する新機能(Moment 4)のロールアウト(有効化)まで済んでいることが要件になっているのかもしれません。そのためには「利用可能になったらすぐに最新の更新プログラムを入手する」を「オン」にして、「Windows構成の更新プログラム」がインストールされる必要があるわけです。

 なお、新機能は2023年11月のセキュリティ更新プログラム(Bリリース)で広くロールアウトされました。そのため、現在、Windows 11 バージョン23H2を先行的に受け取るために「利用可能になったらすぐに最新の更新プログラムを入手する」の「オン/オフ」は関係ないはずです。

キーワードは“利用可能になったときに”?

 取りあえず、Windows Update経由でのWindows 11 バージョン23H2の取得を体験できた(前出の画面4)ので目的は果たせました。しかし、「利用可能になったらすぐに最新の更新プログラムを入手する」の「オン/オフ」が関係しているのかどうかは、想像の範囲を出るものではありません。筆者は、有効化パッケージの前提条件のOSビルドまで更新してもらうためだと考えています。

 Windows 11 バージョン23H2が利用可能になるか/ならないかは、「How to get the Windows 11 2023 Update」ドキュメントの説明にある“利用可能になったときに(when they are available)”だとすると、つじつまが合います。同様の表現は、以下のページにあるロールアウトの現在のステータスにも書かれてあります(“Once the update is available for your device”)。

 おそらく、Microsoftは段階的にロールアウト範囲を広げていっているのであり、その範囲に含まれれば説明されている手順で検出され、その範囲に含まれなければ検出されないのです。説明されている手順を実行したからといって、全てのデバイスですぐに利用可能になるわけではないということです。他にも、アプリケーションの互換性問題が検出された場合は「セーフガードホールド」の対象となり、機能更新プログラムが提供されないケースもあります。

 また、MicrosoftはWindowsの更新プログラムのスキャンをランダム化し、Windows Updateのサーバが過負荷にならないようにしているそうなので、その影響も考えられます([参考情報]Windows Updateのしくみ《Microsoft Learn》)。

 「利用可能になったらすぐに最新の更新プログラムを入手する」トグルスイッチは、「制御された機能ロールアウト(Controlled Feature Rollout《CFR》」)」による新機能(Moment 3およびMoment 4)の段階的なロールアウトのために、Windows 11 バージョン22H2に2023年5月以降追加されたものです。機能更新プログラムのリリースは、この機能が追加されてから初めてのことです。もしかしたら、何か不具合があって意図しない動作をしているのかもしれません。

 一方、機能更新プログラムの段階的なロールアウトや有効化パッケージ形式は、「Windows 10」の機能更新プログラムで既に導入されており、何度も繰り返し行われてきたことなので、このトグルスイッチは、機能更新プログラムの検出には直接関与していないのかもしれません。機能更新プログラムを先行的に取得するために「更新プログラムのチェック」をクリックする必要があるのは、Windows 10からの仕様です。

 翌日、「利用可能になったらすぐに最新の更新プログラムを入手する」トグルスイッチの状態の異なる2つの仮想マシンで「更新プログラムのチェック」をクリックしてみると、「オフ」にしていた仮想マシンではWindows 11 バージョン23H2が利用可能になり、「オン」にしている仮想マシンでは「ダウンロードとインストール」オプションが表示されることなく、「更新プログラムのチェック」のクリックでWindows 11 バージョン23H2のダウンロードとインストールが自動的に始まりました。

 また、トグルスイッチを「オン」にした仮想マシンで「更新プログラムをチェック」をクリックしなかった場合、次の自動的な更新プログラムのチェック時にWindows 11 バージョン23H2の「ダウンロードとインストール」オプションが表示されました(画面5)。

画面5 画面5 「利用可能になったらすぐに最新の更新プログラムを入手する」が「オン」で自動更新のプロセスで検出された場合はダウンロードとインストールに進む手前で止まる(画面左)、「更新プログラムのチェック」をクリックしたときに検出された場合は機能更新プログラムの自動的なダウンロードとインストールが始まってしまう(画面右)

 Windows 11 バージョン23H2に早く更新したいユーザーは、「更新プログラムのチェック」を何度もクリックするでしょうから、この画面に遭遇する人は少ないかもしれません。この画面5は一見すると、インストールしないという選択肢はないように見えますが、トグルスイッチを「オフ」にして、Windows Updateを開き直せば画面4の右側と同じになります。

 「利用可能になったらすぐに最新の更新プログラムを入手する」トグルスイッチはもともと、「更新プログラムのチェック」をクリックしたとき、または自動更新で、新機能(Moment Update)だけでなく、セキュリティ以外のオプションの品質更新プログラムも利用可能であれば自動的にインストールするオプションです。

 トグルスイッチが「オン」の場合、対象の更新プログラムにはWindows 11 バージョン23H2の機能更新プログラムも含まれるようです。トグルスイッチが「オフ」の状態で機能更新プログラムを先行的に取得するためには、Windows 10と同様に「更新プログラムのチェック」が必要です。

  • 「利用可能になったらすぐに最新の更新プログラムを入手する」トグルスイッチが「オン」は、自動更新や「更新プログラムのチェック」でCFRを含むオプションの更新プログラムを自動インストール、これにはWindows 11 バージョン23H2の機能更新プログラムも含まれる
  • 「利用可能になったらすぐに最新の更新プログラムを入手する」トグルスイッチが「オフ」で、Windows 11 バージョン23H2の機能更新プログラムを先行的に受け取れるのは、前提条件(2023年10月のCリリース)を満たすデバイスで「更新プログラムのチェック」をクリックした先進ユーザー
  • いち早くWindows 11 バージョン23H2に更新したいユーザーは、「更新プログラムのチェック」を何度もクリックする

 これらのケースの組み合わせによって、Windows 11 バージョン23H2を受け取る際の体験が変わってくるというわけです。筆者は目にしたことはありませんが、「近日公開予定:Windows 11, version 23H2」と表示される場合もあるようです。

 以上が、トグルスイッチが「オフ」の場合はWindows 11 バージョン23H2が検出され、「オン」の場合は検出されないように見えるという、謎の考察でした。なお、最初の画面1は、画面4の右側の状態になった後、トグルスイッチを「オン」に切り替えたもので、通常はそんな操作をする人はいないでしょう。

 「利用可能になったらすぐに最新の更新プログラムを入手する」トグルスイッチは、Windows 10 バージョン22H2向けの2023年11月のCリリース以降でWindows 10にも追加されます。その最初の役割は「Copilot in Windows(プレビュー)」のWindows 10へのCFRによる段階的なロールアウトですが、トグルスイッチを「オン」にしたからといって、必ずすぐにCopilot in Windows(プレビュー)を利用できるわけでもありません。

 Copilot in Windows(プレビュー)が来ない理由の一つとして考えられるのは、Windows 11 バージョン23H2がトグルスイッチの「オン」ですぐにやって来るわけでもないのと同じように、ロールアウト対象に選ばれなかったということだと思います(Copilot in Windowsの既知の問題の影響を受けるデバイスでも利用可能になりません)。

筆者紹介

山市 良(やまいち りょう)

岩手県花巻市在住。Microsoft MVP 2008 to 2023(Cloud and Datacenter Management)。SIer、IT出版社、中堅企業のシステム管理者を経て、フリーのテクニカルライターに。Microsoft製品、テクノロジーを中心に、IT雑誌、Webサイトへの記事の寄稿、ドキュメント作成、事例取材などを手掛ける。個人ブログは『山市良のえぬなんとかわーるど』。近著は『Windows版Docker&Windowsコンテナーテクノロジ入門』(日経BP社)、『ITプロフェッショナル向けWindowsトラブル解決 コマンド&テクニック集』(日経BP社)。


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