Microsoftは、量子アルゴリズムの開発、改良を支援する「Azure Quantum Development Kit」のv1.0を公開した。
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Microsoftは2024年1月12日(米国時間)、「Azure Quantum Development Kit」(以後、QDK)のv1.0を公開した。QDKは、量子コンピューティングプログラムを実行したり、最適化問題を解決したりする際に役に立つAzure Quantum サービスの開発キットだ。さまざまな量子シミュレーターやマシンをターゲットとした量子プログラムを作成、実行できる。
「QDK v1.0は従来のSDKを大幅に構築し直したバージョンだ」とMicrosoftは述べており、v1.0に到達したことで以下のように改善されたとしている。
Microsoftは、「Visual Studio Code」(以後、VS Code)でQDKの拡張機能を公開しており、ローカルマシンでVS Codeを使用している場合は、拡張機能をインストール後に利用できる。拡張機能の実行後は、.qs形式のQ#ファイルを開いてコーディングを開始できる。
拡張機能は「VS Code for the Web」でも機能する。https://vscode.dev/quantum/playground/にアクセスすると、拡張機能がプリインストールされたVS Codeのインスタンスと、幾つかの一般的な量子アルゴリズムがプリロードされた仮想ファイルシステムを利用できる。
「スケーラブルな量子コンピューティング」を実現するために構築されたQ#をはじめ、量子操作をより自然に表現するための高レベルの抽象化と、より複雑なプログラムの開発、リファクタリング、共同作業に役立つ型付き言語に対応している。
Q#エディタは、補完リスト、名前空間の自動オープン、署名ヘルプ、ホバー情報、定義への移動、識別子の名前変更、構文および型チェックエラーなどを提供する。この機能はRust、C#、TypeScriptなどの型付け言語を使用している開発者の利便性や期待に応えることができる。
QDKには、開発中の量子プログラムのための量子シミュレーターが含まれており、VS Code拡張機能とPythonパッケージの両方で実行中の診断メッセージと量子状態を出力できる。VS Code統合では、強力なデバッグ体験が提供され、ブレークポイントを設定したり、操作にステップイン/ステップアウトしたり、コードをステップ実行しながら量子状態と古典状態の両方を表示したりできる。また、操作の共役を実行する際には、ループや操作を逆に実行するなど、量子特有の機能も備えている。
初期の古典コンピュータと同様、リソース制約があるにもかかわらず、QDKは現在、リソース見積もり機能をクライアントに直接統合し、迅速な実験とリソース要件の閲覧を可能にしている。その目的は、開発者や研究者が量子スタック全体を通して進歩を遂げるのを支援することであり、VS Codeの統合には、量子ビットのタイプやパラメーターを迅速に分析するための「リソース見積もりの計算」などの機能が含まれている。
VS CodeのQDK 拡張機能を使用すると、Azure Quantumサブスクリプションのワークスペースに接続できる。接続後は、Q#プログラムをエディタからハードウェアパートナーの1つに直接送信できる。ジョブステータスを確認し、完了したら結果をダウンロードできる。
「シンプルで合理化された体験が提供され、サービスを操作するためにCLIツールやPythonコードに切り替える必要性が減少する」とMicrosoftは述べている。
Microsoftは、Python環境からQ#プログラムを処理するためのパッケージである「qsharp」やJupyter環境向けパッケージの「qsharp-jupyterlab」を公開している。前者は「pip install qsharp」でインストールできる。Q#のリソース推定やヒストグラムのような可視化をするための「qsharp-widgets」も公開している。
Microsoftは、従来のQDK(クラシックQDK)のサポートを2024年6月30日に終了するとし、既存のQDK開発者に向けて、QDK v1.0(モダンQDK)への移行を推奨している。
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