私には「日本の文化」がインストールされているGo AbekawaのGo Global!〜テッテさんFromミャンマー(後)(2/2 ページ)

» 2024年03月12日 05時00分 公開
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ミャンマーのエンジニアに女性が多いのはなぜ

編集鈴木 (日本語で)本連載でさまざまな国の方にインタビューをしているんですが、最近インタビューしたミャンマー出身の方は、どういうわけか皆さん女性なんです。ミャンマーでは、エンジニアは女性に人気の職業だと伺ったのですが、もしかして男性のエンジニアはいないのでしょうか。

テッテさん なるほど(笑)、エンジニアは男性にも人気はありますよ。

画像 「男性のエンジニアもいますよ」

 これはミャンマーの教育制度のせいかもしれませんが、大学を選ぶ際の高校の成績に男女差があるのです。女性の方が高く、男性の方が低めです。点数が低くても男性であれば医学や医療関係に進めるので、そちらに行く人が多いのでしょう。その結果、エンジニアを志望するのは女性の方が多くなる、それがミャンマーの現状だと思います。

編集鈴木 ミャンマーの企業には、女性エンジニアばかりなのですか。マネジメントやリーダーも?

テッテさん 私が見た範囲では、女性の方が多いと思います。

編集鈴木 テッテさんのように若い方がリーダーになることは日本では珍しいことです。日本のIT企業は、女性のエンジニアは少ないし、マネジメント層となるとさらに減ります。日本の女性のエンジニアがマネジメントやリーダーのポジションに就くには、どのようなことが必要だと思いますか。

テッテさん そうですね、私の場合はエンジニアとして3〜4年開発を経験し、ブリッジエンジニアを目指して転職しましたが、日本の企業でもそのような(できることを、より伸ばせるような)機会があればトライしていいと思うのです。自分が本当にやりたいことを見つけて、それを上司などに話せば、機会は作れるのではないでしょうか。


編集中村 編集 中村

 ちなみに、現在仕事をしているフィリピンでも女性のエンジニアは多いですか、と聞いたところ「全体的にすごく少ない」とのこと。テッテさんの分析では、フィリピンはオフショア開発が多く、欧米企業と仕事をすると夜間働く必要があるため、「それが大変だからではないか」ということでした。


編集鈴木 テッテさんは将来的にCTO(最高技術責任者)やエンジニアリングマネジャーなど、経営寄りの仕事をしたいと考えていますか。

テッテさん 経営に、自分が向いているのかどうか今はまだ分かりません。でも、「自分の会社を作りたい」と思い始めた辺りから、CTOにはなりたいと思うようになりました。

編集鈴木 今ある会社よりも、自分のやりたいことができる会社を作る方が面白いかもしれない、と。

テッテさん Micoworksは、そのような場合のサポートも考えている会社です。ですから私が自分の会社を設立するときも、助けてくれるんじゃないかと期待しています(笑)。

「できるようになるまで諦めないで」

阿部川 日本のエンジニアにメッセージはありますか。

テッテさん 実はたくさんあります(笑)。最初に日本のエンジニアと一緒に仕事をした期間が、今までの人生で一番大変な時期だったのです。仕事のやり方やスタイルが独特で、全く分かりませんでした。私は天才ではないので困難の連続でした。ですから「きっとうまくいく」「決して諦めないぞ」と自分に言い続けました。徐々に時間がたって、全体が理解できるようになると、以前ほどの大変さはなくなり、全体がうまくいくようになりました。

 この経験から、皆さんに声を大にしてお伝えしたいのは「できるようになるまで諦めないで」ということです。私の同僚の中には、エンジニアとして道半ばで諦めてしまった人がたくさんいます。しかし、そこから5年たった現在、コロナ禍の影響や給与面の不満からITに戻りたいという声を聞きます。

 最初はつらいかもしれませんが、ある程度の期間、諦めずに仕事を続けることで、能力も付き、視点も変わってくると思います。人によって差はあるとは思いますが、どんな仕事であれ2年程度は続けるべきだと思います。そこに至るまではどうか簡単に諦めないでほしいです。

画像

Go’s thinking aloud インタビューを終えて

 若くて聡明(そうめい)で、間違いなく負けず嫌いでもある。「できないことだから、できるようになりたい」「人と違ったことだからやる」勝つための差別化が、戦略的に身に付いている。

 ミャンマーでは、2015年以来、アウン・サン・スー・チー氏が進めてきた民主化に対して、2021年2月に軍部がクーデターを決行し、以来2024現在も、軍事政権が民主化勢力や国民に対して残虐な行為と圧政を続けている。政治の身勝手に、自分の運命を左右されてたまるか、自分の道は自分で切り開く。言葉にはならなかったが、テッテさんとのインタビューには、その強烈な叫びが聞こえた。

阿部川久広(Hisahiro Go Abekawa)

アイティメディア 事業開発局 グローバルビジネス戦略室、情報経営イノベーション専門職大学(iU)教授、慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科(KMD) 訪問教授 インタビュアー、作家、翻訳家

コンサルタントを経て、アップル、ディズニーなどでマーケティングの要職を歴任。大学在学時から通訳、翻訳も行い、CNNニュースキャスターを2年間務めた。現在情報経営イノベーション専門職大学教授も兼務。神戸大学経営学部非常勤講師、立教大学大学院MBAコース非常勤講師、フェローアカデミー翻訳学校講師。英語やコミュニケーション、プレゼンテーションのトレーナーとして講座、講演を行う他、作家、翻訳家としても活躍中。

編集部から

「Go Global!」では、GO阿部川と対談してくださるエンジニアを募集しています。国境を越えて活躍するエンジニア(35歳まで)、グローバル企業のCEOやCTOなど、ぜひご一報ください。取材の確約はいたしかねますが、インタビュー候補として検討させていただきます。取材はオンライン、英語もしくは日本語で行います。

ご連絡はこちらまで

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