僕は、「エンジニアには、長く活躍してほしい」と願っています。
というのも、いま日本の人口は予想を上回るスピードで減少しています。2023年の日本の人口減少は84万人でした。これは、山梨県の人口に匹敵する数字です。つまり、「毎年1つの県がなくなる勢いで、人口が減少している」わけです。
このまま人口減少が進んでいくと、近い将来、人材不足や労働力が供給できなくなる恐れがあります。というより、業界によっては既に始まっていますよね。
この状況で必要になるのは、徹底的な業務改善やムダ改革(いわゆる、DX=デジタルトランスフォーメーション)です。人口減少が進む日本社会を救うのは、エンジニアの力なのではないかと、僕は真面目に思っています。
最後に、インフラ系企業の経営者、人事の皆さんへ。
皆さんの会社の業務は、社会を支えるとても大切な仕事です。これまで、他の業界には類をみない特殊な技術を持った従業員たちが、快適な社会を作り、守ってくださいました。本当にありがとうございます。
しかし、皆さんの会社の業務が特殊な技術であるが故に、従業員たちが「私の技術は、社外に通用するのだろうか?」「つぶしが利くだろうか?」と、将来に不安を感じている状況ではないでしょうか。
「定年退職まで1社で働く」というこれまでのロールモデルがいまも通用するなら、それでもよかったのでしょう。従業員にとっても、「自社でこそ生かせる技術」が退職まで会社で働く十分な理由でもありました。
しかし、先行きが見通しにくい時代のいま、多くのエンジニアが「私はエンジニアとして、これからも働けるだろうか?」と、未来のキャリアに対して不安を抱いています。
リクルートワークス研究所の古屋星斗さんは、記事『職場の「キャリア安全性」を考える』の中で、次のように指摘しています。
所属する職場が与えてくれる安全性として「心理的安全性」と同時に「キャリア安全性」が、現代日本の若手社員の活躍において重要な役割を果たしている可能性がある
キャリア安全性の低さによる“不安”も離職を誘発する十分過ぎるほどの効果がある
つまり、「未来のキャリアが不安だと、離職してしまう」のです。
人口減少社会となり、人材不足が顕著になりつつあるいま、人材確保は大きな課題です。従業員たちが離職せずに長く働いてくれることは、会社にとって大きなメリットではありませんか?
一方で、従業員たちが会社に対してマインド的にも金銭的にも依存し続けることは、会社にとって負担となる場合もあります。従業員たちが自律し、社会との接点を作りながら長く活躍できるようになること。それは、従業員本人にとっても、会社にとっても大切なことだと思います。
そのためにも、従業員たちの「これなら、社内社外にかかわらず、将来もやっていけそうだな」と思えるようなキャリア安全性を高めていくことが、大切なのではないかと思います。
しごとのみらい理事長 竹内義晴
「仕事」の中で起こる問題を、コミュニケーションとコミュニティーの力で解決するコミュニケーショントレーナー。企業研修や、コミュニケーション心理学のトレーニングを行う他、ビジネスパーソンのコーチング、カウンセリングに従事している。
著書「Z世代・さとり世代の上司になったら読む本 引っ張ってもついてこない時代の「個性」に寄り添うマネジメント(翔泳社)」「感情スイッチを切りかえれば、すべての仕事がうまくいく。(すばる舎)」「うまく伝わらない人のためのコミュニケーション改善マニュアル(秀和システム)」「職場がツライを変える会話のチカラ(こう書房)」「イラッとしたときのあたまとこころの整理術(ベストブック)」「『じぶん設計図』で人生を思いのままにデザインする。(秀和システム)」など。
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