TechTargetは「ソフトウェアテストの速度と品質」に関する記事を公開した。大半のソフトウェア開発チームの目標は、品質を犠牲にすることなく迅速にアプリケーションをリリースすることだが、その難易度は高い。
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TechTargetは2024年8月20日(米国時間)、「ソフトウェアテストの速度と品質」に関する記事を公開した。品質を上げるために綿密なテストをすると開発期間が延び、リリースを早めれば品質が犠牲になるかもしれない。本稿では、こうした「二者択一」をせずに、開発とテストにおいて品質を効率的に追求する方法を考える。
速度と品質はどちらも重要だ。“迅速なリリース”はビジネスにおいて必須の条件であり、製品を素早く市場に投入する手段でもある。また、質の高いアプリケーションはユーザーにポジティブな体験をもたらし、売り上げを生み出す。だが、速度と品質のバランスを取りながら、質の高いアプリケーションコードを素早くリリースするのは簡単ではない。
高速で効率的なリリースを追求すると、品質が犠牲になることが多い。ソフトウェアをリリースする「ビジネス上のニーズの切迫性」が、「ソフトウェアの品質に対する懸念」を上回ることはよくある。競合他社に先んじて市場に参入するため早急にリリースし、その後、時間をかけて品質に対処する計画を立てる企業もある。だが、アプリケーションの品質によっては、アプリケーションの成否が決まってしまう可能性がある。
チームは、アプリケーションコードの品質を高く保ちながらリリース速度を上げるようにバランスを取らなければならない。
ここで言う“速度”とは、アプリケーション機能をイテレーション(スプリント)によって開発、テストし、アップデートを運用環境にデプロイするまでにかかる時間を指す。一方、“品質”とはアプリケーションのパフォーマンスのことだ。使用を妨げる欠陥、パフォーマンスの低下、新機能の使用が困難といった事象にユーザーが遭遇すると、ユーザーエクスペリエンスが低下する。
ユーザーは通常、新しい機能はいち早く使えるようにしてほしいと考えているし、アプリケーションには高いパフォーマンスで、欠陥なく動作することを望んでいる。ドキュメントを読まなくても新しい機能の使い方を直感的に理解できる高いユーザビリティも求めている。アプリケーションの複雑さによっては、速度と品質に対するユーザーのニーズを満たすのが難しい場合もある。
品質保証(QA)テスト担当者と開発チームが、品質よりもリリース速度を重視すべきと考えることがある。例えば、以下のような場合だ。
アジャイル手法では、開発プロセスをイテレーションに分割することで開発速度を上げる。チームは、各イテレーションでテストを実行し、アプリケーションが品質基準を満たしていることを確認する。速度を重視するチームは、ソフトウェア開発ライフサイクル(SDLC)の早い段階で深刻な欠陥を特定するために、開発者による単体テストと、QA担当がサポートするテストの自動化に集中するのが一般的だ。
QAテスト担当者は、継続的なテスト自動化に含まれている場合を除いて、通常は回帰テストやその他の種類のテストは実行しない。QAテスト担当者は、多くの場合、探索的テストを使用してユーザビリティを手作業でテストする。スプリントの最後にユーザー受け入れテストを実施し、顧客向け品質の測定を外部のQAチームに委ねるチームもある。
品質よりも速度を重視することには、以下のようなメリットがある。
一方、速度優先のアプローチには、以下のようなデメリットもある。
アプリケーションが複雑になるほど(もしくは統合が進むほど)、運用で問題が発生する可能性は高くなる。複雑なアプリケーションには、より高いレベルの品質と徹底したテストが必要だ。CI/CD(継続的インテグレーション/継続的デプロイメント)モデルでのテスト自動化と継続的テストの経験があるソフトウェア開発チームは、テストをコードベースにしている可能性が高く、顧客が欠陥を目にする機会は少なくなる。
機密度の高い個人データを扱うアプリケーションや高度に統合されたアプリケーション、特定の規制基準を満たす必要があるアプリケーションなどを作成する場合は速度よりも品質を優先する必要がある。
アプリケーションに失敗が許されない場合は、品質を最優先にする必要がある。以下の業界に属する企業の多くは、速度よりも品質を重視する。
機密データやプライベートデータを扱うアプリケーションには、広範なセキュリティ、機能テスト、パフォーマンステストが必要だ。さらに、バックアップシステムやフェイルオーバーシステムを用意して、システム障害が発生しても機能が確実に実行されるようにする必要もある。このように気密性が高い場合には、顧客が深刻な障害に遭遇することなくシステムを使用可能にすることが不可欠だ。
さらに、こうした業界のアプリケーションは相互に接続される。例えば、医療用アプリケーションの多くは、金融システムや決済システム、画像処理システム、通信システム、メッセージングなどとつながっている。全てのリリースの品質を確保し、高度統合型のシステムの整合性を維持するには、徹底したテストが不可欠になる。
速度よりも品質を重視するソフトウェア開発チームは、テストと開発の効率性に注力している。速度重視のチームと同様に、開発はイテレーションで実施するが、品質の確保に重要な役割を果たすテストにより重きを置いている。QAテストチームは時間を節約し、質の高いアプリケーションをリリースするためのテストに集中できるように、効率の高いテストプロセスを定義、作成する。アジャイルチームは、計画的で効果的かつ効率的にテストを編成することで、質の高いアプリケーションを素早くリリースできるようになる。
品質を最優先にすることには、以下のようなメリットがある。
一方、品質を最優先にすることには、以下のようなデメリットもある。
顧客に質の高いアプリケーションを提供する最善の方法は、効率の高いQAテストプロセスを開発することだ。そのため、ソフトウェア開発チームにおけるテスト担当の役割は、テストが体系的に計画され、適切なタイミングで確実に実施されるようにすることになる。アジャイルテストでは、速度と正確なテストプラクティスの両方が重視される。全てのイテレーションでテストを不可欠な部分にすることで、リリースの頻度を上げながら、一貫したレベルの品質を確保できる。
開発チームは以下の取り組みをすることで、テストの実行速度を向上させられる。
アジャイルテストプラクティスには、開発チームとの共同作業が含まれている。チームが効果的にコミュニケーションをとれば、一人で答えを探す時間が減り、協力的なチーム環境で素早く答えを見つけることができる。チームは自動テストの作成、実行、トラブルシューティングを実施するための自動テストフレームワークを開発する必要がある。テスト担当者は、自動化を使用して、スプリント内またはTDDで回帰テストを完了し、新機能の機能テストを実行できる。
テスト効率を上げるには以下の取り組みが有効だ。
テスト戦略やテスト計画を作成すると、テストのチームと作業が整理され、効率が高まる。開発チームはテスト計画によって、何を、どこで、誰が実施する必要があるのかを把握できる。テスト担当者は何をテストすべきかを考えて時間を無駄にすることなくなる。可能であれば開発チームはプロセスを自動化するQAテストインスタンスを作成し、必要に応じてインスタンスを起動できるようにする。各QAインスタンスでは、簡単に更新できる正確なテストデータを提供する必要がある。同じ時間でより多くのテストを実行できるように、異なるQAインスタンスでは並列テストを使用する。
プロセスを自動化することで、テストの効率と速度を大幅に向上できる。また、開発チームは必要に応じて、手順を文書化せずに探索的テストを行うべきだ。探索的テストには制約がないため、テスト担当者は経験を生かし、創造力を発揮して、探索的テスト以外では発見できない可能性のある欠陥を見つけることができる。
速度と品質の議論は今後も終わることはないだろう。チームはQAテストを使用して速度と品質のバランスを取る必要がある。全てのソフトウェア開発チームは、リリースの品質を高め、現実的なリリース日を守りたいと考えている。必要な場合を除き、顧客からの苦情や不具合の報告を管理したいと考えるチームはない。
全てのアプリケーションは、一定レベルのテストを実施することで得られるメリットがある。アプリケーションリリースごとに許容できる品質レベルを決め、リリースのスケジュールを設定する。チームは協力して、速度と品質のバランスを取るために、徹底的かつ効率的なテストプラクティスを作成する必要がある。
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