「戦国無双」で日本の歴史に興味を持ち、戦国時代や江戸時代を勉強してきました。そんな私が日本に来るのは必然でした。
グローバルに活躍するエンジニアを紹介する本連載。今回もフィグニーでXR(クロスリアリティー)エンジニアとして活躍しているAziz Alnasser(アジズ・アルナサ)さんにお話を伺う。大学で情報工学を学び、トヨタ自動車のディーラーで社会体験をしたアジズさんは、やがて日本にたどり着いた。
聞き手は、AppleやDisneyなどの外資系企業でマーケティングを担当し、グローバルでのビジネス展開に深い知見を持つ阿部川“Go”久広。
阿部川“Go”久広(以降、阿部川) 大学卒業後、すぐにシドニー大学に進学されたのですか。
Aziz Alnasser(アジズ・アルナサ、以下アジズさん) いいえ。大学卒業後、サウジアラビアの企業で1年ほど、ITシステムアナリストとして働きました。ソフトウェアハウスの企業でしたので、ソフトウェアのエラーやバグなどを解析しました。仕事そのものは悪くなかったですが、従来のテクノロジーの延長で新しいものではありませんでした。私には「より新しいテクノロジーを学びたい」という欲求があり、よりステップアップしたいと思っていました。
当時、妹夫妻がオーストラリアのシドニーにおり、2人とも大学で学んでいました。仕事の話をしたところ、「じゃあシドニーに来て一緒に大学で勉強すればいいじゃない。Sydney University(シドニー大学)は良い大学よ」と、勧めてくれました。悪くないなあと思い、仕事を辞めてシドニー大学に進学することにしました。
阿部川 大学生が3人ですね、誰が授業料を支払うのですか。
アジズさん サウジアラビア政府には奨学金制度があり、全て賄ってくれます。奨学金制度はサウジアラビア政府の良いところで、高い教育を受けることを推奨してくれます。
阿部川 素晴らしいですね。実は最近、サウジアラビアのある総合大学からコンタクトがありました。キャンパスはもちろんありますが、多くの授業をオンラインで実施することが主眼のようです。サウジアラビア全体が教育に熱心なように感じました。
阿部川 そしてシドニー大学の院に入られたのですね。
アジズさん はい。修士は情報工学で、専門はデジタルメディアでした。加えて、3DやCGも研究しました。というものいつかは自分でゲームを作りたいと思っていましたので、プログラミングのスキルだけではなく、ビジュアルのスキルも習得したいと思っていたからです。
ただ同時に、テクノロジーはゲームを作るだけのものではなく、もっと先に大きな可能性があることも感じていました。ですからテクノロジー全般に対して強い情熱のようなものを持っていました。
それまでゲームは普通のコンソールとコントローラーでプレイするものでしたが、トレンドの最先端として、VR(仮想現実)やAR(拡張現実)といった技術と、それらを利用するためのハードウェアが登場しました。
ちょっと待てよ、と。ハードウェアとして新しいものが登場してきたことで、ゲームはより進化していくぞ、と思いました。ゲームというソフトウェアだけの視点ではなく、ハードウェアの視点からもテクノロジーに引かれていきました。
編集部 鈴木 この連載ではいろいろな国のエンジニアにお話を聞いているのですが、どこの国の方も「自分の国で今若い人たちが勉強するのはテクノロジーで、当然エンジニアが1番人気の職業。なぜなら稼げるから」とおっしゃいます。本当にやりたいことは機械工学やロボットだったが、稼ぐためにソフトウェアエンジニアになったという人もいます。ではサウジアラビアでは、若い人に人気があったり稼げたりという職業は何なのでしょうか。
アジズさん サイバーセキュリティ、AI(人工知能)、そしてロボット工学が、現在人気のある分野です。弟が進学する際も、国が求めているスキルを学べる大学に通うべきだとアドバイスし、この3つの分野を挙げました。彼はロボット工学を選び、もう一人の弟は化学工学を専攻し、2人の妹はITとファッションデザインを勉強していました。
編集部 鈴木 IT以外で人気の職業はありますか。
アジズさん うーん、やっぱりITですね。土木工学などの工学系や化学系のエンジニアリングもありますが、何といってもテクノロジーですね。政府も多くの予算をつけていますし。以前、ソフトバンクとサウジアラビア政府が大きなプロジェクトを行うと合意したニュースもあったと思います。それとeスポーツですね。これもITが必要です。
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