「データセンターの土地がない」なら浮けばいい、サーバはついに“移動式”の時代なぜあえて船なのか

商船三井、日立製作所、日立システムズの3社は、中古船を改造した浮体式データセンター(FDC)の開発と商用化に向けた基本合意書を締結した。2027年以降の稼働開始を見据え、需要検証や基本仕様の検討を進める。

» 2026年05月20日 13時00分 公開
[@IT]

 生成AIの急速な普及に伴い、データセンター需要は拡大を続けている。立地や電力、冷却に使用する水資源の確保、周辺インフラ、災害リスクなどを踏まえた多様な供給形態が求められている。

 そうした中で商船三井、日立製作所、日立システムズの3社は2026年3月30日、中古船を改造した浮体式データセンター(Floating Data Center、以下FDC)の開発、運用、商用化に向けた基本合意書(MOU)を締結したと発表した。

中古船を改造した浮体式データセンターのイメージ(提供:日立システムズ)

浮体式データセンター(FDC)開発の背景

 日立グループが陸上データセンターの運用実績を持つ日本の他、マレーシアや米国を中心に、2027年以降の稼働開始を見据えてFDCの需要や基本仕様、運用手順の検討や事業化に向けた検証を行う。

 3社は各社の実績や知見を生かし、中古船を改造したFDCの商用化を目指すとしている。

陸上データセンターと比較したFDCのメリット

 従来の陸上型建屋と比較して、FDCは立地の柔軟性や構築スピードにおいて次のような優位性があることが指摘されている。

  • 都市圏周辺での大規模な土地の確保と取得費用が不要
    • 大都市近郊ではデータセンター向けの大規模用地の確保が困難になっている。インフラ(電力、冷却用水、環境規制、住民合意など)が追い付かず、データセンターの新規建設停止が提案されている都市もある。港湾や河川を利用するFDCは、こうした地域でも展開できる可能性がある
  • 建設期間の短縮
    • FDCの改造工事は1年程度で、従来の陸上建屋型データセンター開発と比較して開発期間を最大3年短縮できる見込み
  • 海水や河川を活用した水冷式の冷却システム
    • AI向けの高性能サーバは空冷式では冷却し切れず水冷式へシフトしつつあるが、大量の水が必要となる。米国では「生活用水が不足するのでは」といった懸念から住民との対立が起きている地域もある。FDCは海水や河川の水を効率よく冷却システムに活用でき、サーバの冷却にかかる電力消費と運用コストを削減できる
  • 移設が可能
    • 需要の変化に応じて稼働場所を変更できる


中古船活用で環境負荷低減と初期投資削減

 既存の船舶リソースを再利用することで、以下のようなメリットが得られる。

  • 既存船体の活用により原材料の採掘や加工から生じる環境負荷を低減
  • 初期投資の削減
    • 建設にかかるコストを削減できる他、既存の船内システム(空調、取水、発電機など)を活用することで初期投資のコスト削減が見込まれる
  • 広範なスペース
    • 約5万4000平方メートルの床面積を有する自動車運搬船は、延べ床面積ベースで日本最大級の陸上データセンターに匹敵する

商船三井が海上運用、日立が設計・運用を担当

 商船三井は、船舶のデータセンターへの改造計画や港湾当局との調整、係留や保守を含む海上運用に関する実績を基に、船舶改造の企画推進や港湾当局との協議、資金調達スキームの検討を担う。

 日立製作所の戦略SIBビジネスユニットと日立システムズは、日本での陸上データセンターの保有運営やコンテナ型データセンター構築、マレーシアおよび米国での陸上データセンター設備サービス提供の実績を基に、データセンターの設計、建設、運用の技術検討やITインフラ要件定義、現地知見の活用、顧客要件整理と顧客開拓協力を担う。

 日立グループは将来的に、次世代ソリューション群「HMAX by Hitachi」をFDCのデータセンター運用の高度化と効率化に活用することを検討している。

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