企業の情報システム部門が「Microsoft 365」「Microsoft 365 Copilot」を社内で有効活用するためのノウハウを解説する本連載。今回は、Enterキーによる誤送信問題の解消など「Microsoft Teams」の注目アップデートを紹介します。
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全国1億2300万人の「Microsoft 365」ユーザーの皆さん、「Microsoft Teams」(以下、Teams)のチャットを利用していますか? Microsoft 365ユーザー企業の間では、社内のテキストコミュニケーションとして、メールに加えてチャットを活用する動きが広がりつつあります。Teamsはチャットだけではなく、ドキュメントの共同編集やオンライン会議、ファイル共有も可能なことから、日常業務の中心的なツールとして役立ちます。
ここ1〜2年でよく話題に上がるようになった「Microsoft 365 Copilot」(以下、Copilot)の力を最大限に引き出すには、実はTeamsが重要な役割を果たします。Copilotは回答や提案を生成する際、メールやチャット、会議の記録、ドキュメントなど、Microsoft 365内に蓄積した情報を活用します(このように組織内のデータや業務上のやりとりを踏まえて、Copilotの回答精度を高める仕組みを、Microsoftは「Work IQ」と呼んでいます)。そうした情報が日々蓄積される代表的な場所の一つが、日々の情報共有や共同作業の場であるTeamsなのです。
今回は、そうした背景を踏まえながら、ここ1〜2年で追加されたTeamsの注目アップデートを、僕目線で厳選して紹介します。特にチャットと、組織内でテーマごとにやりとりをする「チャネル」に絞って見ていきます。
チャットやチャネルは、Teamsの主要機能であることには変わりありません。ここでは、その現在地を正しく把握するために、組織におけるビジネス向けチャットツール(以下、ビジネスチャット)の状況を整理しましょう。
Teamsが登場した2017年3月当時を振り返ると、ビジネスチャットの利用は、それほど一般的ではありませんでした。既にビジネスチャットを活用する企業はありましたが、企業内のコミュニケーション手段としてはメールが主流だったと記憶しています。一方で家族や友人とのやりとりといったプライベートな用途では、チャットツールが既に普及していました。プライベートではチャットツールが定着していたにもかかわらず、ビジネスの場では活用がなかなか進まない状況だったのです。
転機になったのは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大(以下、コロナ禍)を受けて、テレワークが急速に普及したことでした。離れた場所で働く従業員同士がリアルタイムにやりとりする手段として、Teamsをはじめとするビジネスチャットの重要性が一気に高まりました。
図1は、Microsoftが公開した情報を基に、TeamsのDAU(1日当たりのアクティブユーザー数)の推移をまとめたものです。ご覧の通り、コロナ禍でテレワークが世界的に広がった2020年前後にDAUは急増し、2019年7月から2021年4月までの2年足らずで10倍以上に増加しました。
僕が所属する組織でも、今ではTeamsがなければ業務が成り立たないほど定着しています。そのためTeamsをはじめとするビジネスチャットは、既に多くの日本企業で当たり前の存在になっていると思っていました。
実際にはMicrosoft 365ユーザー企業であっても、特に中堅/中小企業からは、Teamsについて「オンライン会議以外では、ほとんど利用していない」「活用がなかなか定着しない」といった声を耳にします。中には従業員が、コンシューマー向けの「LINE」を業務で利用するなど、シャドーIT(IT部門が把握・許可していないITサービスや機器を業務で利用すること)が発生している企業も珍しくないのです。
日経BPコンサルティングが2024年10月に実施した調査によると、ビジネスチャットの導入率は従業員1万人以上の企業では82.7%に上った一方、300〜9999人の企業では6割台、100〜299人の企業では47.0%にとどまっています。僕自身、Teamsが当たり前の環境で働いていることもあり、多くの企業でも同じように活用されていると思っていました。この統計を見ると、企業規模によって活用状況に大きな差があることが分かります。
全体として見ればビジネスチャットは着実に普及しています。ただし自分が置かれている環境によって見える“景色”は大きく異なります。ITの活用状況を考えるときは、その点にも気を付けたいところです。
Teamsはビジネスチャットであると同時に、オンライン会議やファイル共有、共同編集などにも利用できるコミュニケーションツールです。特にコロナ禍以降はテレワークの普及を背景に、オンライン会議機能の強化が進みました。その後、生成AIの普及によってMicrosoftは、Copilot関連機能の拡充を積極的に進めており、TeamsについてもCopilotとの連携を強化するアップデートが目立つようになっています。
とはいえTeamsの原点ともいえるチャットやチャネルについても、着実に機能強化が続いています。ここ1〜2年における主要な変化をチェックしていきましょう。
数あるアップデートの中で「最も待ち望まれていた」と言えるものの一つが、Enterキーによるチャットの誤送信を防ぐための機能追加です(画面1)。
Teamsでは長らく、チャットやチャネルでメッセージを入力している際にEnterキーを押すと、そのままメッセージが送信される仕様になっていました。改行しようとしてEnterキーを押した結果、書きかけのメッセージを誤って送信してしまった経験がある人もいるのではないでしょうか。この問題は、Teamsが登場した2017年当初からたびたび指摘されてきました。
「送信に使うキー操作を変更できればよいのに」という声は、以前から根強くありました。そして2026年、そうした要望に応える形で、ついに送信方法を変更できる設定が追加されたのです。Teamsの登場から約9年を経て実現した、待望のアップデートだと言えるでしょう。
この設定追加に関連して、メッセージ入力欄の右下には「Shift+Enterキー 改行します。」という表示が追加されました。この表示によって、改行方法が分かりやすくなっただけでも、誤送信の防止に一定の効果があると思います。
表示内の「Shift+Enterキー」の部分をクリックすると、Teamsの設定画面に移動できます。ここでEnterキーの動作を「新しい行を開始します」に変更すると、「Enterキーで改行し、Ctrl+Enterキーで送信する」という設定に切り替えることが可能です。
この機能はSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)でも話題になり、幅広いユーザーに知られるようになりました。ただし入力欄の右下は意外と見落としやすい場所です。この表示に気付いていても、クリックすると設定を変更できることまでは知らなかった、という人もいるのではないでしょうか。
2025年前半のユーザーインタフェース(UI)変更も、非常に大きな変化です。従来はチャットとチャネルが別々の場所に表示されていましたが、現在は同じ画面で扱えるようになりました。
これはあくまでもUIの変更です。チャットとチャネルの内部的な仕組みが一つになったわけではありません。別々だった表示場所をまとめて、チャットとチャネルを切り替えやすくしたアップデートだと考えると分かりやすいでしょう。
従来は画面左側のナビゲーションメニュー(Microsoftは「App bar」と呼んでいます)に、「チャット」ボタンと、チャネルを利用するための「チーム」ボタンが別々に表示されていました。現在は新しい「チャット」ボタンにまとめられ、その中にチャットとチャネルが表示されるようになっています(画面2)。
操作画面が大きく変わったことで、僕の周囲やSNSなどでもさまざまな反応が見られました。特に印象に残っているのが「一覧が長くなって見づらい」という意見です。
Teamsを積極的に活用している人ほど、参加しているチャネルやチャットの数は増えます。そのためチャットとチャネルが同じ画面に表示されるようになったことで、目的のやりとりを探しにくくなったと感じた人もいたようです。チャットとチャネルが別々に表示されていた頃から、それぞれの一覧をスクロールして情報を探していた人にとっては、なおさらそう感じられたのかもしれません。
なぜMicrosoftは、このようなUI変更を実施したのでしょうか。
Teamsが登場した当初から「チャットは分かるけれど、チャネルはチャットと何が違うのか分かりにくい」という声がありました。実際、チャットとチャネルは利用シーンこそ異なるものの、どちらもテキストを中心にコミュニケーションする場であることに変わりはありません。
従来は「この話題はチャネルでやりとりしていた」「あの話はチャットだったはずだ」と考えながら、それぞれの画面を行き来する必要がありました。Microsoftはこうした手間を減らし、チャットとチャネルをよりシームレスに行き来できるようにすることを目指したようです。
この考え方は、現在のCopilotにも通じるものがあります。Copilotは、メールやチャット、会議の記録、ドキュメントなどを基に業務の文脈(コンテキスト)を理解し、その上で回答や提案を生成します。人にとっても、生成AIにとっても、会話や情報の流れを追いやすいことは重要です。チャットとチャネルを行き来する負担を減らそうという今回のUI変更も、そうした方向性の延長線上にある取り組みだと僕は捉えています。
個人的に、このUI変更と切り離せないと感じているのがフィルター機能です。チャットとチャネルが1つの画面にまとまったことで「見づらくなった」と感じていた人に、このフィルター機能を紹介すると、ネガティブだった印象が大きく改善することがありました。
UI変更後のチャット画面を開くと、左上に「未読」「チャネル」「チャット」などのフィルター項目が表示されます(画面3)。これらを利用すると、表示する項目を絞り込めます。例えばチャネルフィルターを選択するとチャネルだけが表示され、チャットフィルターを選択するとチャットだけが表示されます。チャットとチャネルを1つの画面で扱うようになった一方で、必要に応じて表示内容を切り替えられるようになっているのです。
特に便利なのが未読フィルターとの組み合わせです。チャネルフィルターとチャットフィルターを同時に選択することはできないのですが、未読フィルターとチャネルフィルター、未読フィルターとチャットフィルターはそれぞれ組み合わせて利用できます。チャットとチャネルをまとめて表示した状態で、未読の項目だけを表示することも可能です。日々大量のメッセージを確認している人にとっては、うれしい機能でしょう。
ここ1〜2年で進化した要素の中では、派手ではないものの便利なものとしてクイックビューが挙げられます。クイックビューは、チャット画面の左上にあるエリアのことです。先ほど紹介したフィルターの下にあり(画面4の赤枠部分)、ここからチャットやチャネルを整理して表示できます。
クイックビューの特徴的な機能が「発見する」機能です。この機能は2024年2月に「見つける」機能として追加されました。僕の記憶では、当時はまだこのエリアがクイックビューとは呼ばれておらず、英語では「Discover Feed」と呼ばれていました。その後のUI変更に伴い、見つける機能は現在、クイックビュー内の発見する機能として提供されています。
発見する機能は、自分が参加しているチャットやチャネルの中から、関心がありそうな会話を自動的に表示する機能です。表示対象はアクセス権の範囲内に限られますが、自分宛てのメンションがなかったために見落としていた情報や、関係がありそうな議論を見つけやすくなります。
参加しているチャットやチャネルが多い人ほど、全ての会話を追うのは簡単ではありません。相手がメンションを付け忘れていた場合なども含めて、見落としていた重要な情報に気付くきっかけになる機能だと思います。
2025年8月ごろに追加された機能として、メッセージ保存機能があります。名前の通り、後で見返したいメッセージを保存しておける機能です。
メッセージ保存機能は、正確には「新機能」ではなく「復活した機能」と言った方が適切でしょう。
2024年3月ごろに、Teamsのクライアントアプリケーションが新しくなりました。新しいクライアントアプリケーションでは、従来と比べて動作が高速化した(Microsoftの説明による)一方で、一部の機能が利用できなくなりました。その中でも、特に多くのユーザーが残念に感じていた機能の一つがメッセージ保存機能でした。約1年半を経て、この機能が復活したわけです。
メッセージ保存機能は、大事なメッセージを後で読み返したいときに便利です。移動中に通知で内容だけ確認し、「後で返信しよう」と思っていたのに、そのまま再び確認することなく忘れてしまった経験がある人もいるのではないでしょうか。メッセージ保存機能でそうしたメッセージを保存しておけば、後からまとめて確認できるので、返信漏れの防止に役立ちます。
クイックビューには、この他にもメンション付きの投稿だけを表示する機能や、チャネルでフォローしているスレッドを表示する機能が追加されています。その中でも個人的に便利だと感じているのが、2026年4月ごろに追加された「下書き」の表示機能です。
仕事中は、メッセージを書いている途中で電話がかかってきたり、別の作業を頼まれたりして、そのまま送信を忘れてしまうことがあります。これまでも未送信のメッセージがあるチャットやチャネルにはアイコンが表示されていましたが、チャットやチャネルの数が多いと見落としやすかったと思います。
下書きの表示機能を使うと、そうした未送信のメッセージを一覧で確認できます。送信忘れを防ぐ手段として、なかなか評判の良い機能です。
クイックビュー自体も進化しています。下書き表示機能の追加と同時期には、クイックビューの開閉機能が追加された他、利用しない機能を非表示にしたり、未読がある場合だけ表示したりできるようになりました。
生成AIの普及によって、働き方は大きく変わりつつあります。生成AIの価値を左右する重要な要素はデータです。そのデータを日々生み出しているのは、人と人とのコミュニケーションや共同作業に他なりません。生成AIが普及した今も、その主役はまだまだ人でしょう。
そうした意味でも、Teamsなどの日常的に利用するツールを快適に使い続けることは重要です。より良いコミュニケーションや共同作業が積み重なることで、結果としてCopilotが活用できるデータが蓄積されていきます。
Teamsは今後も進化を続けるでしょう。日常的に利用するツールだからこそ、アップデート情報もキャッチアップし、社内で共有できる文化があることが大事だと思います。
居酒屋店員、ミュージシャン、Webデザイナーという異色な経歴から、2009〜2016年まで従業員数数千名の企業のIT部門でSharePointの運営・サイト構築を経験。その後、数社転職を繰り返しつつも自分が推しのMicrosoft 365に関連する業務を継続中。個人活動としてMicrosoft 365関連のブログ(https://art-break.net/tech/)をメインにさまざまなアウトプット活動やITコミュニティー活動を実施し、それらの活動が評価されMicrosoft MVPを8年連続受賞。
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