「AI教育、どこから手を付ける?」 全社導入のカギは“生成AIリテラシー向上研修”(前編)@IT Techブログ PickUp(TISインテックグループ編)

生成AIは業務の現場に急速に浸透し、「使って当たり前」の時代が到来しています。その活用範囲は広がる一方、情報漏洩や誤情報のリスクが企業の大きな課題になっています。今求められるのは、誰もが“安全かつ賢く”生成AIを使いこなすリテラシーです。本稿は、社内の誰もが生成AIを安全に、自信を持って使えるようになるための第一歩として位置付けられた全社員向け研修資料の前編です。業種や職種を問わず実践できる生成AIリテラシー向上のポイントを、具体的な事例やノウハウとともに解説します。

» 2026年06月25日 05時00分 公開
[Fintan]

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本稿はTISインテックグループが運営する、開発現場から生まれた技術ノウハウを公開するサイト「Fintan」上で2024年9月9日に掲載した研修資料を転載するものです。そのため、用字用語の統一ルールなどが、@ITのものと異なります。ご了承ください。


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連載目次

 近年、急速にブームとなっている「生成AI」に対して、わたしたちはどのようにビジネスを推進していくべきでしょうか。

 より良いビジネスを築いていくために、生成AIのビジネス適用における全体感を理解した上で、わたしたちと生成AIとの関係がどのような段階にあるのかイメージすることが非常に重要です。

 わたしたちと生成AIとの関係を大きな流れで図のようにステップ別に考えていきましょう。

 ステップ1では、生成AIを日常的に使用することで、その操作や機能に習熟し、業務や生活の中で自然に活用できるようになることを目指します。ステップ2では、生成AIの特性や得意な分野、苦手な分野などを理解し、最大限、効率的な利用を図ります。ステップ3、4ではさらにその先として生成AIのビジネスプロセスへの組み込みや、新たなサービス提供など、生成AIの利用者という立場ではなく、提供者という立場としての振る舞いを求められていきます。

 本研修では、このうちステップ1とステップ2の一部にフォーカスし、まずは利用者として、生成AI利用に関するリテラシーの向上を図ります。

 本研修のゴールを一言で表現すると「今日から、生成AIを使うのが当たり前になる!」ことであり、先ほどの画像におけるステップ1とステップ2のはじめに該当します。

 AsIsに記載されているような「そもそも生成AIって何?」「すごいって言われているけれど、いまいちわからない」という状態から、ToBeに記載されているような「ほぼ毎日、生成AIと会話している」「生成AIが日常的な課題解決の選択肢になっている」「生成AIの得意・不得意なことを理解している」姿となることが、本研修の具体的なゴールイメージです。

 基礎的なことに重点を置くため、既に生成AIを利用している方にとっては、復習や新しい視点を得る機会としてぜひともご活用ください。また、生成AIの利用を個人ではなく組織的に進めていくために、周囲の方々を含め、本研修記載のリテラシーレベルを広めていくことも重要です。

 生成AIを効果的に活用することで、業務の効率化や新しい価値の創出を目指しましょう。本研修資料がそのような姿の一助となれば幸いです。

そもそも生成AIとは?

 それでは、まずはじめにそもそも生成AIとは何かということについて理解を深めていきましょう。

 生成AIとは、新たなコンテンツを生成する能力を持つ人工知能のことを指します。

人工知能とは、人間の思考や知識をコンピュータで模倣する技術のことで、そのひとつである生成AIの技術は、テキスト・音楽・動画などのコンテンツを生成することに特化しています。

 かねてより、生成AIの基盤となる技術は存在していましたが、2022年にチャット形式で提供されたChatGPTが登場したことが大きなブームを引き起こし、現在に至るまでの間、大きな注目を集めています。

生成AIの仕組み

 生成AIは、世の中にある大量のデータから統計学的に新しいデータを生み出す仕組みでできています。

 ここでいう「大量のデータ」は、インターネットなどに存在する文字や画像などのあらゆる情報を数学的に処理したものを指します。それら大量のデータから単語間における意味的な距離を定義するなど、データに特徴的なパターンを定義することで、いわば生成AIの「核」となる、特定のモデルができます。

 生成AIでは、このモデルに定量的に定義された特徴量をもとに、新しいデータを生成します。このような仕組みで生成されたデータは、モデルの学習に用いたデータが元になるため、モデル学習以降に生まれた最新の情報が含まれていない点は注意が必要です。

 一方で、最近の生成AIを用いたサービスでは、最新情報の提供を行うために、インターネット検索機能を利用して最新データを取得する仕組みを実装するなどの工夫が施されているサービスもあります。

 AIを搭載したチャットボットシステムや、文章を自動生成するライティングツール、潜在的なユーザーに対して効果的に広告アプローチするターゲティング広告など、AIを利用したサービスは多岐にわたります。

サービスになるまでの流れ

 では、生成AIを用いたサービスは、どのような流れでわたしたち利用者の手元に届くのでしょうか。

 まず、モデルが学習するためのデータを集め、そのデータを処理しやすい形に適切に変換します。そのデータをもとにモデルが学習を行います。精度を高めるためのチューニングなどを行い、洗練されたモデルは、サービスに組み込まれ、本番環境に反映されます。こうして生成AIを用いたサービスは私たちの手元に届くのです。その後、実際にサービスを使用した利用者からのフィードバックなど、導入後の検証や改善を行うこともあります。

 生成AIはまだ世に出て日の浅い、比較的新しい技術である一方、驚くべき速さで日々進化しています。汎用的な技術でもあるため、多様な用途での活用が模索されており、今後もその可能性は広がっていくでしょう。

生成AI利用者としてのわたしたちは、このようなプロセスの詳細まで理解する必要はありませんが、生成AI活用のリテラシーを高め、日常生活の中で適切に活用していくことが重要です。

生成AIと協働するときのポイントは、「AIを適用する場所を見極める」こと

 生成AIと協働するポイントは、具体的な業務タスクにおいて、タスクばらしを行い、そのどこに生成AIを適用するかを見極めるという点にあります。

 メール送信の業務を例にとりましょう。

 まず、メールが届いたら、その内容を確認します。次に、返信に必要な情報を収集するため資料などを確認します。その後、確認した情報をふまえ、返信内容を検討し、表現を考えてメール文章を作成し、実際に返信します。

 このようなタスクばらしを行うことで、業務の中で本質的な箇所がどこにあるのかを客観的に理解し、本質以外の作業に関しては生成AIの利用を検討してみましょう。

 業務の本質を見極め、本質以外の部分を託すこと、これは、協力を仰ぐときに人と行っているコミュニケーションと本質的には同じであることが分かるかと思います。

 具体的なメール送信の例を見てみましょう。

 メールの主題や候補となる日程など、作業のコアとなる重要な情報は人間が提供したうえで、文章の表現や形式を整える部分を生成AIに任せることで、より効率的にメール返信のタスクを遂行することができます。

 さらにタスクを詳細にばらすと、日程候補の洗い出しにも生成AIが活用できそうです。例えば、社内でイベントを開催するときに他のイベントとの重複がないかを生成AIで確認するといった形です。Excelでの突合作業よりも、生成AIを使って重複チェックを行うことで、迅速かつわかりやすい状態で、確認作業を行うことができました。

リテラシー向上への第一歩は「明確に 文脈示して 鵜呑みせず」

 次に、生成AIとコミュニケーションしていくときのポイントについて整理してみましょう。

 「明確に 文脈示して 鵜呑みせず」

 本研修では、生成AIとのコミュニケーションにおけるポイントをこの5・7・5で表現したいと思います。

 「明確に」というのは、質問を具体的にすることです。具体的な質問をすることで、生成AIが適切で正確な回答を提供しやすくなります。

 「文脈示して」というのは、質問の背景や目的を伝えることです。これにより、生成AIがその文脈に合った適切な回答を提供しやすくなります。

 「鵜呑みせず」というのは、生成AIからの回答をそのまま信じないよう気を付けることです。必要に応じて情報のソースや理由は十分にしっかり確認して信頼性を検証することが大切です。

 これらのポイントも、人とのコミュニケーションにおいては、自然と行うことができているポイントではないでしょうか。より円滑に協働・コミュニケーションしていくために、人との関わり同様、生成AIとの関わりにおいても、「明確にできていない点はないか」「示せていない文脈はないか」「出された回答を鵜呑みしていないか」、改めて問い直していただくことが、リテラシー向上のための大きな第一歩となります。

生成AIの得意と不得意

 生成AIをより正確に利用していくために、生成AIがもつ得意なことと不得意なことを理解する必要があります。

 まず、生成AIの得意な点として、効率性と創造力の向上が挙げられます。

生成AIの得意:「効率性の向上」

 効率性の向上について、具体的なデータを見てみましょう。

 コーディング提案やレビュー支援のためのツールに生成AIを用いているGitHub Copilot。その提供元であるGitHub社が行った調査では、当ツールを使用した開発者は、使用しなかった開発者に比べ、タスク完了速度が55%アップしたとのことです。開発者の生産性として、タスクの完了スピードは重要な指標のひとつで、コーディングにおける反復作業が減ったり、認知負荷が軽減したりすることによる効果といえます。さらに、より開発者がコーディングを楽しんで取り組むことができるという調査結果もあり、これは開発者の生産性を定義するもう一つの指標、開発者の満足度アップへの貢献を意味しています。

 また、別の調査結果として、東京都庁での取り組みが挙げられます。導入効果を測定するためのアンケート結果では、生成AIを活用することで「業務の質が向上した」と回答した職員が63%にのぼりました。具体的には、議事録作成時に言い換え提案をしてくれたり、考え事の壁打ち相手になってくれたりすることで、業務の効率が上がったとのことです。

 さらに、マサチューセッツ工科大学の調査によれば、特に執筆関連のオフィスワークにおいて、生成AIを利用することで37%の時間削減が実現されたとの結果も出ています。

 これらのデータのみならずさまざまな効果測定のための検証が行われており、生成AIがタスクの効率性を高めることが定量的に証明されていることがわかります。

 生成AIの活用を体感していただくために、Excelの関数を生成AIに尋ねてみましょう。例えば、「ExcelでA列が丸かつB列がバツであることを判定する関数を教えてください」と生成AIに質問してみると、以下のような答えがかえってきます。

 例えば、この場合、欲しい関数だけでなく、自動化のためのスクリプトまで一緒に教えてくれます。必要に応じてその解説も丁寧に行なってくれます。このような関数やプログラミングなどを、自然言語から理解してアウトプットを教えてくれるというのは、まるで、ベテラン有識者に気軽に質問できる、といったところではないでしょうか。

 みなさん、Pythonが使えず手動で行ってしまっている作業や分析へ活用できずにそのまま放置してしまっているファイルなどはありませんでしょうか。ぜひ、そんなときは生成AIを使って効率化できる部分はないか、今一度ご自身のタスクをふりかえってみてください。

生成AIの得意:「創造力の向上」

 次に、生成AIが創造力を高めてくれる実感を味わうために、キャッチコピーを考えてもらいましょう。

 「私は生成AIに対して○○だなと思っています。そんな私の気持ちを代弁してくれるキャッチコピーを5つ考えてください」と生成AIに依頼してみると、回答がかえってきます。

 これは回答の一例ですが、自分だけでは思いつかないような例が出てくるのがお分かりいただけるかと思います。

 このように、「自分がパッと簡潔に表現が思いつかないような事柄に対し、違う観点や多様な表現を含めた提案を行なってくれること」を生成AIは得意としています。

 例えば、報告書やメールをみた上司やお客様から「つまり、要するにどういうこと?」と聞かれたことはないでしょうか?自分と違う立場になって考えるのは非常に難しい一方、違う立場に立つ当人たちは忙しそうでこんなこと聞けない。そんなとき、ぜひ生成AIに聞いてみて、少し広い視野で目の前のタスクを見てみることに、チャレンジしてみるのも良いかもしれません。

生成AIの不得意:「誤った情報や古い情報を示す可能性がある」

 一方で、生成AIには不得意な点もあります。誤った情報や古い情報を示す可能性があるということです。

 生成AIはハルシネーションという現象を起こすことがあり、これは人工知能が本当であるかのようなもっともらしい嘘を出力することを指します。

 生成AIはデータを学習し、コンテンツを生成する仕組みのため、異なるデータをもとにした回答をしてしまったり、そもそもデータに存在しない回答をつくりだしてしまったりすることがあります。このハルシネーションをなくすために、学習するデータの質を上げたり、出力結果を精査したりするなど、さまざまな工夫が施されていますが、現状、完全にその誤りをなくすのは非常に難しいとされています。

 また、基本的に生成AIは学習した時点以降の最新情報を持っていないため、最新の状況に対応できず、古い情報を示す可能性があります。

 この図はモデルの説明で用いたものですが、データから特徴を見つけ、パターンを学習する仕組みである生成AIは、今この瞬間に総理大臣が変わった場合など、タイムリーな最新情報について生成AIは学習していないため、その情報を反映できません。生成AIを用いたアプリケーション側の実装として、回答を生成する際に、検索機能を用いた情報取得を行い、それらを合わせて回答することもありますが、常に新しい情報が必ず生成されるわけではないことを念頭に置く必要があります。

まとめ

 ここまで学んできたとおり、生成AIは意見出しや要約など特定のタスクは得意ですが、ハルシネーションを起こしてしまうといった不得意な部分もあります。

 生成AIの得意な点と不得意な点を理解した上で、生成AIを活用できる場面では積極的に利用していき、すべての情報を鵜呑みはせず、最終的な意思決定は自分で行うということを念頭に置いて利用してきましょう。

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