共同著作者に無断で改変したので、2800万円請求します「訴えてやる!」の前に読む IT訴訟 徹底解説(138)(1/2 ページ)

かつての愛弟子にアイデアを授け、斜面安定解析プログラムを開発した研究者。だが愛弟子の所属企業は、コードを書いたのは自社従業員となった愛弟子であり、研究者が提供したのは発案のきっかけに過ぎないと反論。プログラムの著作権は誰にあるのか――。

» 2026年08月10日 05時00分 公開
「訴えてやる!」の前に読む IT訴訟 徹底解説

連載目次

 システム開発において、ユーザー企業とベンダーはそれぞれ異なる役割を担う。ユーザー企業は業務上の課題や実現したい機能を提示し、ベンダーはそれをシステムとして実装する。この役割分担の中で、「開発したプログラムの著作権は誰のものか」という問いに、共通の答えがあるわけではない。

 特に次のような場合は、ユーザー企業が「このシステムは自分たちが作ったも同然だ」と感じることがあるだろう。

 業界固有の業務知識や計算ロジックをユーザー企業が詳細に提供した、ユーザー企業の担当者がベンダーの開発現場に常駐して仕様策定に深く関わった、あるいは研究者や専門家がアルゴリズムや解析手法を自ら設計してベンダーに実装を委ねた、などだ。システムに深く関与するほど、「自分たちも著作者のはずだ」という認識につながりやすくなる。

 では、著作権法はこの問いにどう答えるのだろうか。令和8年1月に大阪地方裁判所が示した判断は、その原点を確認させてくれる。

大阪地方裁判所 令和8年1月15日判決より

大学の研究者Xは、建設コンサルタント会社(以下、被告企業)に勤務するかつての教え子Aに対し、2種類の既存プログラムを組み合わせた新たな斜面安定解析プログラムの開発を提案した。被告企業は、Aとその同僚Bにこの開発を担わせ、完成したプログラムを自社名義で公表・販売した。

30年近くが経過した後、Xは「このプログラムは自分が開発したもの(または共同著作物)であり、その後の改変は著作権侵害に当たる」として2800万円の損害賠償を求めて提訴した。

出典:裁判所ウェブサイト 令和7年(ワ)第36332号

システムの「アイデア」は著作物か

 Xが著作権を主張した根拠は、「2つのプログラムを組み合わせるというアイデアを自分が発案した」「共同で論文を発表した」「ソフトウェアの名称を自分が命名した」の3点であった。

 ユーザー企業とベンダーの関係に置き換えれば、「こういう機能が欲しい、こういう仕組みで実現してほしいと詳細に要件を指示した」に相当する。プログラムに深く関与した、貢献した、という自負のあったXは、「自分が開発を主導した。著作者(少なくとも共同著作者)だ」と主張した。

 被告企業は「コードは全て自社の従業員が書いた。Xが提供したのは発案のきっかけに過ぎない」と反論した。

 発案者、提案者、指示者は、プログラムの著作者になれるのだろうか。裁判所の判断を見てみよう。

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