南海電気鉄道と日立製作所は、日立独自技術「CMOSアニーリング」を活用し、鉄道の乗務員・車両の運用計画を自動作成するシステムの構築を始める。熟練者の手作業に依存してきた計画づくりを自動化し、業務負荷の軽減を図る。
南海電気鉄道(以下、南海電鉄)と日立製作所(以下、日立)は2026年7月14日、日立の独自技術「CMOSアニーリング」(量子コンピュータを疑似的に再現する技術)を活用し、鉄道の乗務員運用計画および車両運用計画を自動で作成、評価するシステムの構築を開始すると発表した。
同システムは、これまで熟練者の知見と手作業に依存していた乗務員の配置計画と、列車ダイヤに基づく車両の割り当てや循環計画を自動作成する。CMOSアニーリングは、多くの制約条件を同時に考慮しながら最適な組み合わせを短時間で導き出すことを得意とする。
2025年度に南海線で実施した効果検証では、従来数カ月かかっていた乗務員運用計画の作成を約1週間に、従来約20日間かかっていた車両運用計画の作成を数日程度に、それぞれ短縮できることを確認した。
この結果を踏まえ、両社は対象線区を南海線・空港線および高野線・泉北線へ拡大し、2027年度以降のダイヤ改正から業務プロセスを見直す前提で同システムの構築を進める。
乗務員運用計画は、1日当たり数百本の列車に乗務する運転士・車掌の配置を決める業務だ。変形労働時間制における労働時間制約や休憩時間の確保に加え、食事や睡眠時間への配慮、出退勤場所や宿泊場所の調整など、多くの制約条件を同時に満たしながら乗務行路を作成する必要があり、その多くは手作業に依存している。
車両運用計画は、列車ダイヤに基づき、どの車両をどの列車に割り当て、どう循環させるかを決める業務。車両形式や編成条件、検査周期、車両を留置できる線路の収容能力(留置線容量)など多様な制約条件を考慮する必要があり、作業に時間がかかる。
鉄道業界では人材不足や専門業務の後継者育成が課題となる中、これらの計画作成業務は経験豊富な担当者の知見に大きく依存しており、ノウハウ継承の面でも課題を抱えている。
同システムは、CMOSアニーリングで自動作成した計画について、それぞれの評価指標を自動計算して可視化する機能を備える。乗務員運用計画では必要要員数や勤務ごとの拘束時間と休憩時間、車両運用計画では検査、点検した車両数などの指標を計算、可視化し、計画担当者が複数案を比較検討した上で最終判断を下せるようにする。
CMOSアニーリングは、コールセンターの勤務シフト作成など複雑な制約条件を持つ計画業務での適用実績を積んできた日立の独自技術だ。今回は、日立のデータサイエンティストが鉄道業界のシステム構築やサービス開発で培った知見を生かし、業務特有の制約条件やプロセスをモデル化した。
南海電鉄が業務要件の提示や効果検証、運用設計を担い、日立がCMOSアニーリングを活用した最適化やシステム構築、データサイエンティストによる業務分析とモデル化支援、クラウド提供を担当する。両社は2027年度中の稼働開始を目指し、稼働後も運用状況や業務要件の変化に応じて機能拡張や改善を進める方針だ。
乗務員運用計画では、仮想の列車ダイヤに対して必要な乗務員数を短期間で検証できるようになるので、ワンマン運転の拡大や、なにわ筋線開業に向けた将来輸送計画の検討、災害時の事業継続計画(BCPダイヤ)策定への活用も見込む。
日立は、CMOSアニーリングの性能向上を進め、AIで社会インフラを革新する次世代ソリューション群「HMAX by Hitachi」を支える技術としても適用範囲の拡大を図る方針だ。
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