人生には、失敗なんてない!:転機をチャンスに変えた瞬間(12)〜野球審判員 平林岳
40歳を過ぎてなおチャレンジし続ける平林さん。そんな彼が好きな言葉は「やってみなければ分からない」だ
平林さんが最初に渡米してから、17年の歳月が流れた。このまま順調にいけば、近い将来、日本人初のメジャーリーグ審判員になることは間違いない。中学生の時から一つの夢を追いかけ、それを実現しようとまい進する過程において見えてきた、メジャーリーグという最高峰。幾多の苦難を経てようやくその頂きへとたどり着こうとしている夢追人が語る、現在、そして未来とは。
年齢や環境のせいにするのは、夢から逃げていることと同じ
丸山 いよいよメジャーリーグまで手が届きそうなトリプルAクラスまで到達しました。ここに至るまでに必須だったと思われる要素は何ですか?
平林 語学力や適応力など、必須要素は数多くあります。でも僕はチャレンジ精神こそが、何より欠かせないものだったと感じます。
僕は「やってみなければ分からない」という言葉が好きです。
2度目の渡米のときは、誰もが僕の将来を予測できなかったし、無理だと結論付けられたかもしれません。人は予測できないことにはなかなか踏み出そうとしませんし、頭で考えただけで無理だと思って行動したがらないものですから。
でも僕は、年齢や環境を理由にして一歩目を踏み出そうとしないのは、自分の夢から逃げていることと同じじゃないかと思ったのです。「もうすぐ40歳になるからできない」「家族がいるからできない」、それでは自分の夢に対して誠実じゃないと。何歳になっても、どんな環境でも、夢を実現できる方法を一生懸命模索することで、1パーセントしかなかった可能性を、50パーセントに広げられるのです。
丸山 メジャーリーグで審判員を務めるという夢を果たされたら、その後の新たな人生設計は、もう描かれているのでしょうか。
平林 僕はメジャーで20年、30年と長くやりたいという気持ちはないんです。10年くらいできればいいかなと。松坂選手が投げて、城島選手が受けて、松井選手が打って、イチロー選手が走って……。そんな試合を、自分が裁けたら面白いだろうなと(笑)。
メジャーから退いた後は、若い審判員を育てたいですね。日本に審判員の育成機関を作って、米国に渡っていけるような審判員がたくさん生まれてくれたらいい。米国はまだ白人社会ですから、アジア人審判員が裁く立場でいることは、今後のアジア人のさらなる地位確立のためにも大切なことかもしれないと思うのです。メジャーで初のアジア人審判員を目指している僕には、そういう責任もあるのかなと感じています。
丸山 最後に、今、転職を考えている30代、40代に、力強いメッセージをお願いします。
平林 やってみなければ分からない! やはり、これに尽きます。迷っているなら、まずは一歩目を踏み出してみる。無理だと最初から諦めてしまうよりは、やってみて失敗する方が、その後の人生にとってはるかにプラスになる。
僕は「失敗なんて、人生にはない」と思います。すぐにこの世を去らなければならないならまだしも、まだまだ先があるわけじゃないですか。もし何かに失敗しても、その失敗を次に生かせれば、それは失敗ではなくステップにすぎないわけです。失敗することを恐れたら、何もできずに終わってしまう。せっかく生まれてきたんだから、何もしない人生なんて、つまらないでしょ。
構成/平山譲
聞き手 丸山貴宏
クライス&カンパニー 代表取締役社長
リクルートで人事採用担当を約7年経験後、現社を設立。転職希望者面談数は1万人を超え、その経験と実績に基づいたカウンセリングは業界でも注目されている。「人の根っこのエネルギーを発掘する作業が、われわれの使命」がモットー。著書「キャリアコンサルティング」(翔泳社)
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※この連載はWebサイト「転機をチャンスに変えた瞬間」を、サイト運営会社の許可の下、一部修正して転載するものです。データなどは取材時のものです。
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