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熊本編:米作り×アパレル×ITに軽やかに挑むIターンエンジニアITエンジニア U&Iターンの理想と現実(58)(1/2 ページ)

熊本だからできる、熊本じゃないとできないことがある――「U&Iターンの理想と現実」熊本編は、やりたいことのためにIターンを実行したエンジニアの物語です。

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 甲斐祥二さんは、東京で働くWeb系のエンジニアだった。

 大学卒業後18年間東京で働き、家族もできたが、ある日、「プログラムだけでなく、お米もMakeしたい!」と思い立ち、思い切ってIターンを決意した。移住先は熊本県の阿蘇。家賃4万円ほどの古い一軒家を借りた。

 阿蘇は気温や水質が稲作に適しており、米作りが盛んな地域でもある。「阿蘇コシヒカリ」などのブランド米もある。甲斐さんは農業、特に米作りに興味があり、両親が九州出身ということ以外には縁もゆかりもないこの地域に、「米作りの師匠がいる」という理由で移住を決めたのだ。

 移住後2年間、米作りを学ぶことに専念した。


甲斐さんの田んぼ

働き方で失敗した1社目。理念や事業にひかれシタテルへ

 当初より「研修終了後はお米とITをマッシュアップしていこう」と思っていたので、米作りの研修が終了した2018年からエンジニア業を再開。

 まずはリモートワークで働ける企業と契約した。自宅で時間の制約なく働けるから農業との両立に好都合だと思えたからだ。しかし働き始めてみると、連絡がメールなど文字ベースだったことに加え、稼働時間のずれがあり、コミュニケーションに苦労し、あまり長くは続けられなかった。

 リモートワーク失敗の経験から、オフィスに出社して働くスタイルの仕事で複業をしようと熊本にある企業を探すうち、「シタテル」が目にとまった。

 シタテルは2014年設立、オリジナルの衣類を作りたいユーザーと縫製工場とのマッチングや生産管理を行うプラットフォーム「sitateru」を運営するIT企業だ。sitateruの特徴は、衣類生産の全プロセスをワンストップでサポートすること、ラインアップが豊富なこと、そしてやりとりが全てオンライン上でできることだ。

 熊本県庁の職員が使う防災服、医薬品などを扱う大手メーカーのラボウェア、老舗酒蔵のワークウェア、若者向けブランドのカジュアル衣類など、コンセプトに合わせた衣類を制作してきた。得意分野のユニフォームは、デザインに優れ、帰属意識や就労意欲が高まりそうなものが並ぶ。他にもホテルアメニティーやトートバッグなど、ユニークなグッズも手掛けている。

 衣類の生産は、アナログな工程が多い。しかしシタテルはこの領域にITを積極的に活用しようとしている。経済産業省「服づくり4.0プロジェクト」協力、総務省「ICT地域活性化大賞2016」大賞/総務大臣賞受賞、ACC TOKYO CREATIVITY AWARDS 2017「クリエイティブイノベーション部門」ゴールド賞受賞、経済産業省主催の「飛躍 Next Enterprise」プロジェクトに採択されるなどで注目されている。

 sitateru以外にも、生産一体型ECパッケージ「SPEC」やメンバーシップ制コミュニティープラットフォーム「Weare」を提供するなど、アパレル×ITを具現化する先進的な取り組みが多い。

 甲斐さんはシタテルの業務内容や理念に魅力を感じ、入社を決めた。


シタテル」IT戦略/開発部 甲斐祥二さん

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