「Java FAQ(What's New)」の安藤幸央氏が、CoolなプログラミングのためのノウハウやTIPS、筆者の経験などを「Rundown」(駆け足の要点説明)でお届けします。(編集局)
Webの世界の中で「ウェビナー(Webinar)」が台頭してきています。実際のところ、まだあまり耳慣れない言葉かもしれません。ウェビナーはWeb上で開催されるバーチャルセミナーのことです。言葉どおり、ウェブ(Web)とセミナー(seminar)を組み合わせた造語です。特にWebのインタラクティブ性や、さまざまな形式のマルチメディアコンテンツの利点を生かした、オンラインセミナーのことを「ウェビナー」といいます。
コンピュータやネットワークが進化するにつれて大学や企業で「eラーニング」と呼ばれる、コンピュータやネットワークを活用した教育が広がってきました。その背景には、オンラインサポートやオンライン教育・トレーニング・チュートリアルなどのコスト削減への考慮があります。また、何より場所と時間に関係なく受講することができるのが最大の特徴でしょう。
自学自習で学ぶ場合、コンピュータを使ったオンラインセミナーと、一方で従来のビデオや書籍などによるトレーニング方法もあります。学ぶ対象がコンピュータソフトや、Webアプリケーションである場合、コンピュータ画面上で学ぶのが最も自然な形であるといえるでしょう。また習熟度や理解度の観点からも効率のよさが注目されます。
ウェビナーの特徴はコンピュータ画面上、Webブラウザ上でいつでも最新のセミナーや過去のセミナーなどを受講できることです。場所や時間に関係なくいつでも好きなときに、好きな量だけ受講できるのが大きな特徴です。会場が遠いとか忙しくてまとまった時間が取れないからセミナーに参加できないといういい訳が成り立たないのがウェビナーなのです。
ウェビナーが浸透していくための技術として注目されているのがビューレット(Viewlet)です。Qarbon社が提供するツール*1で、コンピュータソフトやWebアプリケーションなどの操作方法を「見る(View)」ための軽量Javaアプレットです。
レットと名の付くもので耳になじみのあるものに、Applet(アプレット)、 Servlet(サーブレット)があります。アプリケーション(Application)と「小さい」を意味する接尾辞「let(レット)」が組み合わさってAppletとなりました。また同様にサーバサイドで動作する小さなアプリケーションという意味合いでServer(サーバ)に接尾辞letを付けたServletが使われています。Viewletも同様に「見るための小さな仕組み」という意味合いを持つのでしょう。〜letと付くことによって、機能の絞り込まれた、ある用途に特化した小さなプログラムというイメージが思い浮かびます。
*1:国内では日本システムデベロップメントが販売。
Viewletでは、画像、音、アニメーションを駆使したインタラクティブなオンラインデモがWebブラウザ上で再生されます。ユーザーの学ぶ速度に合わせて再生したり、以前学んだ部分に戻って復習したり、ある部分をじっくりと時間をかけて学ぶなど、時間の制約にしばられずに自由に学び、習得することができます。Viewletではソフトウェアなどの動作を、漫画の吹き出し風のコメントで、いま何の操作をしたらよいのか、その操作をしたら何が起こるのかを順次説明していきます。Viewletによって容易にユーザー主導型で操作方法を学ぶことができるのです。
Viewlet の活躍場所としては、以下のようなものが挙げられます。
Viewletの特徴は、数多くの操作画面キャプチャと、吹き出しによるコメント文にあります。上記に挙げた用途のほかにもアイデア次第でさまざまな活用ができるでしょう。
Viewletを作成するには、Viewlet Builderという専用のツールが必要です(フリーウェア版と製品版がある)。コンピュータの操作画面をキャプチャし、吹き出し文字による説明や、音声による解説を付け加えることができます。PowerPoint によるプレゼンテーションの作成によく似たタイプのツールです。コンピュータの操作を順を追って容易に説明することができます。
Viewletを用いることによって、ソフトウェアやアプリケーションそしてWebブラウザ上で動作する Webアプリケーションの使い方を詳細に見せ、伝え、教えることができます。Viewletの機能と組み合わせて効果のあるものはいろいろ考えられます。
単に受け身のセミナーから一歩進んで、インタラクティブ性と、時間や場所の制約がなくなることによって、ウェビナーの可能性が広がります。よりコンピュータやネットワークを活用し「学ぶ」ことと、知識を「伝える」充実度が増してくるのです。多くのソフトウェア、アプリケーションはユーザーに十分に活用してもらい、使いこなしてもらってこそ、意味のあるものとなります。機能豊富なWebアプリケーションを作ったところで満足せず、ユーザーに100%以上活用してもらえる環境を考えてこそ技術者みょうりに尽きることでしょう。Viewletのように「使いこなす」手助けをしてくれる技術を活用してみるのもいいかもしれません。
次回は2月21日の公開予定です。
安藤幸央(あんどう ゆきお)
1970年北海道生まれ。現在、株式会社エヌ・ケー・エクサ マルチメディアソリューションセンター所属。フォトリアリスティック3次元コンピュータグラフィックス、リアルタイムグラフィックスやネットワークを利用した各種開発業務に携わる。コンピュータ自動彩色システムや3次元イメージ検索システム大規模データ可視化システム、リアルタイムCG投影システム、建築業界、エンターテインメント向け3次元 CG ソフトの開発、インターネットベースのコンピュータグラフィックスシステムなどを手掛ける。また、Java、Web3D、OpenGL、3DCG の情報源となるWebページをまとめている。
ホームページ:
http://www.gimlay.org/~andoh/java/
所属団体:
OpenGL_Japan (Member)、SIGGRAPH TOKYO (Vice Chairman)
主な著書
「VRML 60分ガイド」(監訳、ソフトバンク)
「これがJava だ! インターネットの新たな主役」(共著、日本経済新聞社)
「The Java3D API仕様」(監修、アスキー)
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