PHPはMySQLとの親和性が高いスクリプト言語の1つだ。今回はこのPHPを利用して、実用に耐えるアプリケーションを作成しよう。前編では、その基礎となるPHPのインストールや、PHPでMySQLを操作する方法を紹介する。
PHP(Personal Home Page tool)は、Webアプリケーションを作成する手段としてここ数年で広く使用されるようになってきました。Rasmus Lerdor氏が書いたPerlスクリプトから始まったPHPは、データベースとの連携を実現するFI(Form Interpreter)と統合され、PHP/FIとなったあたりから国内でも多く実例を見るようになりました。
国内でPHP/FIが利用されるようになる一方、海外では有志の手によりPHP/FIからポーティングされたPHP3が公開されました。PHP3が公開されると、その安定性や整理された文法などが高い評価を受け、PHP/FIは瞬く間にPHP3に置き換えられました。国内の書店で見かけるPHPのハウツー本などの多くも、PHP3を前提に書かれているようです。PHPはその後も改良が続けられており、2000年5月には高速動作のためのZendスクリプトエンジンを搭載したPHP4が公開されました。
このようにPHPの歴史を振り返ると、データベースの連携が古くから考慮されていたことが分かります。とりわけMySQLとのかかわりは深く、PHP/FIのときにはすでにMySQLサーバを操作する手段が提供されていました。このあたりの経緯を見ても、MySQLの海外での人気がうかがえます。
スクリプト言語として、前回Perlを取り上げましたが、PerlはWebアプリケーションに特化したものではないということもあり、Perlスクリプトを使ったCGIアプリケーションとPHPスクリプトでは速度の面でPHPの方に軍配が上がります。これは、PHPがCGIスクリプトとは違い、WebサーバソフトであるApacheのモジュールとして組み込まれて動作するためです。速度以外の面でも、HTMLとの親和性やフォームの値の容易な取得など、Webアプリケーションのために生まれた優位性を随所で感じることができるでしょう。
皆さんの手元には、すでにMySQLがインストールされたLinuxまたはUNIXマシンがあると思います。まだの場合は、前回までの各種ソフトのインストールを済ませておいてください。UNIX系のOSであれば特に限定しませんが、ここでは標準的なLinux(Kernel2.2.16)マシンにソースからインストールする方法を説明します。
RPMでインストールしたい方は、各種ディストリビュータのWebサイトなどから最新のApacheとPHPに関するファイルを入手してインストールしてください。ただし、その場合はディストリビュータが用意したPHP関連のファイルがMySQLを使うようになっているか確認しておく必要があります。また、MySQLを使うようになっていた場合でも、最新のMySQLではなく、ディストリビューションに含まれる少し古いMySQLに合わせたものになっている場合もあるので、なるべくソースからのインストールをお勧めします。
CGIスクリプトとは違い、PHPをApacheのモジュールとして動作させるためには、Apache本体から作成する必要があります。まず、http://httpd.apache.org/dist/から最新バージョンを適当なディレクトリにダウンロードします。2001年3月27日現在の最新版はapache_1.3.19.tar.gzです。ApacheのWebサイトではApache 2.0.14 Alphaも公開されていますが、今回は使用しません。
ソースをダウンロードしたら、ファイルを展開してconfigureを実行します。
$ tar xvfz apache_1.3.19.tar.gz $ cd apache_1.3.19 $ ./configure --enable-module=all --enable-shared=max
上記のconfigureオプション
--enable-module=all
モジュールをすべて有効に
--enable-shared=max
DSO(Dynamic Shared Object)のサポート。PHPをインストールする際に必要
次にmakeを実行し、エラーなく完了した後、スーパーユーザーにスイッチしてインストールを行います。
$ make $ su # make install
--prefixオプションでインストールディレクトリを指定しなかった場合、Apacheは/usr/local/apacheとしてインストールされます。
Apacheを起動する前に、PHPをインストールします。http://www.php.net/downloads.phpから最新のファイルをダウンロードしましょう。執筆段階の最新版はPHP 4.0.4pl1です。
Apacheと同様の手順でconfigureを実行します。
$ tar xvfz php-4.0.4pl1.tar.gz $ cd php-4.0.4pl1 $ ./configure --with-apxs=/usr/local/apache/bin/apxs --with-mysql
上記のconfigureオプション
--with-apxs=/usr/local/apache/bin/apxs
DSOを利用するために、apxsコマンドのパスを指定
--with-mysql
PHPからMySQLを操作するための指定。MySQLを/usr/localや/usrなどではない場所にインストールしている場合は、パスの指定が必要
例:--with-mysql=/home/mysql
同様にsuしてインストールを完了させます。
$ make $ su # make install
これで/usr/local/apache/libexec/libphp4.soができているはずです。
次に、Apacheの設定を変更してPHPを実行できるようにします。といっても、コメントアウトを1行外すだけです。
スーパーユーザーになり、/usr/local/apache/conf*編注のhttpd.confファイルを適当なエディタで開き、以下のように該当行の“#”を消します。
# And for PHP 4.x, use: # AddType application/x-httpd-php .php #AddType application/x-httpd-php-source .phps
下の“phps”拡張子は、PHPソースファイルに関するものです。状況に応じて使用してください。
編注:ソースからインストールした場合。ディストリビューションによっては/etc/httpd/confにhttpd.confを配置している。
以上で設定は終わりました。Apacheはデフォルトではポート8080番で起動するので、80番など任意のポートで起動したい場合はhttpd.confファイルの
Port 8080
の行を変更してください。
では、Apacheの起動です。
# /usr/local/apache/bin/apachectl start /usr/local/apache/bin/apachectl start: httpd started
起動を確認するためにWebブラウザを開き、http://127.0.0.1:8080/でApacheの警告ページが表示されれば成功です。
以上でインストールは終了です。PerlでMySQLを操作するためにさまざまなものをインストールしたのに比べ、たった2つのソフトをインストールするだけで完了してしまうあたりも、PHPが誕生以来データベース操作を積極的に取り入れてきたことの結果だといえます。
もし、この後MySQLへの接続に失敗したり、PHPの文法が正しいにもかかわらず動作しなかった場合は、もう一度手順を1つずつ確認してください。RPMなど、各ディストリビュータが用意したファイルを利用した場合は、MySQLのバージョンの不一致による動作不良も考えられるので、その場合はMySQL自体もディストリビュータが用意するものを使うか、前記のように各ファイルをソースからインストールする必要があります。
この段階では、PHPが正しく動作するかはまだ確認できていません。確認の意味も込めて簡単なスクリプトを作ってみましょう。用意するのはエディタだけ。日本語入力も可能な状態が好ましいでしょう。
ファイルを作成するのはApacheのドキュメントルートである/usr/local/apache/htdocs*編注なので、スーパーユーザーでの作業になります。
編注:ソースからインストールした場合。Linuxディストリビューションの中には、/home/httpd/htmlをドキュメントルートに設定してあるものも多い
ドキュメントルートに以下の内容のサンプルスクリプト“test.php”を作成します。
<HTML><BODY> <?php print "最初のテスト"; ?> </BODY> </HTML>
作成したら、Webブラウザでhttp://127.0.0.1:8080/test.phpにアクセスします。
最初のテスト
と表示されていれば成功です。
PHPについての細かい文法や変数・定数の扱いなどは連載記事「PHPで作るWeb-DBシステム」で確認できます。いますぐにでもPHPを使いたいという方は、“<?php”と“?>”の間にPHPの構文・関数・変数を書いていくということだけでも覚えておいてください。
2001年3月末時点の最新版は3.23.36です。多くのbug fixを含む一方、次期バージョンである4.0のための布石も散りばめられています。例えば、3.23.34a以降のソースには新しいデータファイル形式“INNOBASE”が追加されています。
通常のインストールではMyISM形式でデータファイルの保存を行いますが、INNOBASEにすることでトランザクション機能が使えるようになります。しかし、トランザクション機能の代償としてMySQL本来の速さを失いますので、業務など重要な場面での使用には慎重な判断が必要です。
「MySQL Reference Manual for version 3.23.36.」より
Innobase Tables -- Alpha
This is a very recent addition to MySQL and are not very tested
yet.
ちなみに、MyISMやINNOBASE以外に以下の形式のデータファイルが用意されています。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.