ネットブックで動く軽量Linuxディストリ大全(前編)
〜 低スペックPCでさくさく快適環境 〜
小型で廉価な「ネットブック」が人気を集めています。日本では少数派ですが、ワールドワイドで見ると価格を抑えるためにLinux、それもさくさく動作する軽量なLinuxディストリビューションを搭載して出荷されるケースが多いようです。その特徴をご紹介します。皆さんもお手元のネットブックで試してみませんか?(編集局)
Shin.鶴長
2009/1/26
人気高まるネットブック、Windowsで? それとも……
「ネットブック」といわれる小型で廉価なノートPCが好調です。各メディアがこぞってネットブックを取り上げ、モデル比較から改造ネタまで、さまざまな特集を目にする機会が増えました。こうした盛り上がりにすっかり物欲を刺激され、購入に向け検討されている方も多いのではないでしょうか。
筆者も例外ではなく、手に入れた暁にはLinuxをインストールし、あれやこれや試してみようともくろんでいるわけです。
そもそもネットブックは価格を抑えるために、Linuxモデルを選択することが可能となっています。しかし国内ではWindows XP Homeモデルが大多数で、一部のメーカーを除いて、Linuxモデルを入手することが難しい状況にあります。
確かにWindowsの方が利便性が高く、一般的な認知度も高いため、サポートコストを考えれば、OSをWindowsに限定するというのは現実的な選択です。そうした状況のため、国内ではネットブックの普及がLinuxの浸透にはつながっていません。しかし外に目を向ければ、ネットブック用のLinuxディストリビューションが数多く登場するなど、ネットブックに関連したLinuxの話題が豊富です。この記事ではそうした話題を取り上げてみたいと思います。
低スペックPCとLinuxの相性
低スペックのPCや旧世代のPCにLinuxをインストールし、再び現役として復活させるという行為は、ある種文化としてここ数年根付いているものです。何かに使うためというよりインストール行為そのものが目的化し、起動画面を眺めながら悦に入るというのは、それはそれでPCの正しい使い方だと筆者は考えています。
モジュールの追加インストールやカーネルの再構築で、動かなかったデバイスが使えるようになったときの達成感は何ものにも代え難い……といってしまうのは大げさですが、ある種の充足感を覚えてしまうのも事実です。せっかく動いていたものがディストリビューションやカーネルのバージョンアップで動かなくなり、再びあれやこれやと試行錯誤を繰り返す。さいの河原で石を積み上げるようなインストール行為にも、意味があるのです。
さて、本来高スペックを求めないはずのLinuxも、3Dデスクトップやら、絢爛(けんらん)豪華なウィンドウマネージャを楽しむには、相応の性能を持ったビデオカードを必要とします。また、まれにしか使わないパッケージの収録がディスク領域を圧迫しているといった厄介な状況も見られます。
であるならば、そうした付加機能をそぎ、インストールするパッケージを限定してしまえと考えたものが「軽量Linuxディストリビューション」です。
もちろんUbuntuやFedoraでも、お任せインストールを使わずに、インストールするパッケージを自ら取捨選択することで、十分使用に耐え得るものが用意できます。ですが、そうした作業にはある程度の試行錯誤や経験が必要です。「苦労を買ってでも」と考えている方にはうってつけですが、結果を手早く求める方には軽量Linuxディストリビューションをお勧めします。
軽量Linuxディストリビューションの特徴
■デスクトップ用途向け軽量ディストリビューション
ネットブックの主な用途といえば、ブラウザを使ったWebページの閲覧、エディタを使った文書作成、プレゼン資料の作成、電子メールの送受信といったものではないでしょうか。特にネット利用に対する要望は高く、そのためにはXウィンドウをはじめとするデスクトップ環境やネットワークアプリケーションが必要です。そうしたデスクトップ用途向け軽量ディストリビューションをいくつかピックアップしてみましょう。
なお、ここで取り上げるほとんどのディストリビューションは、Live CDとして使用することができます。そのためインストールすることなく、CDからPCを起動するだけで、ほとんどの機能を利用することができます。
ダウンロードしたISOイメージファイルをCD-Rに書き込むには、Linuxでは「K3b(http://www.k3b.org/)」や「Brasero(http://projects.gnome.org/brasero/)」といったCD/DVD作成ツールを使用します。WidowsやMacで使い慣れたものがあれば、それを使ってLive CDを用意しても同じものができます。
ただしネットブックはCD/DVDドライブを備えていないため、USB接続可能なCD/DVDドライブを別途用意する必要があります。
もしネットブック以外にLinuxをインストール済み、またはインストール可能なPCがあれば、USBメモリにCDイメージをコピーし、Live USBメモリを作成することで、CD/DVDドライブの代わりにすることができます。Live CDイメージからLive USBを作成する方法は後半で解説します。
■gOS
|
Gmail、Googleカレンダー、Googleドキュメント、YouTubeといったGoogleサービスをデスクトップに統合した(といっても、ランチャにアイコンを登録したにすぎませんが)、Ubuntu派生のディストリビューションです。「gPC」や2009年前半に登場するネットブックへの採用が話題になっています。
画面1 gOSの起動画面 |
起動オプションを変更することで日本語の表示や入力にも対応します。ただしLive CDのままでは「かな漢字変換」は利用できません。ハードディスクへのインストールが必要です。
SkypeやOpenOffice.orgといったアプリケーションを、700MBという、CD-Rに書き込める容量いっぱいに詰め込んでいます。
ブート画面をはじめ、各画面のデザインにも力が入っており、gOSのデスクトップは、「Googleデスクトップガジェット(http://desktop.google.com/plugins?hl=ja)」と呼ばれるアクセサリでにぎやかです。Googleとの関連性が高いディストリビューションですが、gOSは「Good OS」の略(http://www.thinkgos.com/about.php)と説明されています。
画面2 gOSの起動プロセス画面 |
画面3 gOSの起動デスクトップ画面 |
1/2 |
|
||||
|
Linux Square全記事インデックス |
Linux Squareフォーラム 製品情報・レビュー関連記事 |
特集:2007年、Linuxディストリビューションの歩みを振り返る 商用、非商用ともにメジャーバージョンアップが相次いだ2007年。主なディストリビューションを取り上げ、アップデート内容を紹介します |
|
プロダクトレビュー[Ubuntu 7.10 日本語ローカライズド Desktop CD] 海外のみならず日本国内でも人気急上昇中のUbuntu。優れたインターフェイスを備えるとともに、豊富な機能がコンパクトにパッケージされている |
|
特集:業務で使うデスクトップLinux カタログ 定型業務さえこなせればよいという部門も多い企業環境は、コンシューマ市場以上にLinuxへの移行が容易ともいえる。そこで、6つのLinuxディストリビューションを紹介する |
|
特集:Linuxで動くリレーショナルデータベース・カタログ データベースサーバのOSとしてLinuxを採用するケースが増えている。Linuxで動作する7つの主なリレーショナルデータベースを紹介する。製品導入の際の参考にしてほしい |
|
特集:Windowsで動くXサーバ・カタログ やや特殊な用途に用いられてきたXサーバだが、活用しだいでは普通の管理用途にも有用だ。そこで、Windowsで動作する6本のXサーバを紹介する。選択の参考にしてほしい |
|
特集:Linuxで動くJavaアプリケーションサーバ・カタログ アプリケーションサーバは、いま最も開発競争が激しいジャンルの1つだ。その中から、Linuxに対応する5つの商用製品を紹介する。製品導入の際の参考にしてほしい |
|
特集:Linuxで動くWebグループウェア・カタログ Linuxを業務用サーバに採用するケースも増えている。そこで、Linuxをサーバとして利用するWebベースのグループウェアを紹介しよう |
|
|
- 【 pidof 】コマンド――コマンド名からプロセスIDを探す (2017/7/27)
本連載は、Linuxのコマンドについて、基本書式からオプション、具体的な実行例までを紹介していきます。今回は、コマンド名からプロセスIDを探す「pidof」コマンドです。 - Linuxの「ジョブコントロール」をマスターしよう (2017/7/21)
今回は、コマンドライン環境でのジョブコントロールを試してみましょう。X環境を持たないサーバ管理やリモート接続時に役立つ操作です - 【 pidstat 】コマンド――プロセスのリソース使用量を表示する (2017/7/21)
本連載は、Linuxのコマンドについて、基本書式からオプション、具体的な実行例までを紹介していきます。今回は、プロセスごとのCPUの使用率やI/Oデバイスの使用状況を表示する「pidstat」コマンドです。 - 【 iostat 】コマンド――I/Oデバイスの使用状況を表示する (2017/7/20)
本連載は、Linuxのコマンドについて、基本書式からオプション、具体的な実行例までを紹介していきます。今回は、I/Oデバイスの使用状況を表示する「iostat」コマンドです。
|
|