RFIDで家電のライフサイクル管理を
家電電子タグコンソーシアム
柏木 恵子
2007年5月14日
ライフサイクル管理の概念を国際標準に提案
紀伊 コンソーシアムのもう1つの役割目的に国際標準化への取り組みがあります。ガイドラインでルールを作っても、それが日本の家電メーカーだけのローカルルールでは意味がないわけです。日本の量販店との連携はもちろんですが、家電メーカーはグローバルでビジネスをしているので、国際標準でないとあまり意味がありません。
電子タグの世界の国際標準には、メーカー主体のISOとユーザー主体のEPCglobalの活動があります。ISOについては、日本の窓口であるJEITAを通して提案しています。EPCglobalは日用雑貨におけるサプライチェーンでの電子タグ利用が中心の活動でしたので、製品ライフサイクル管理のような概念はありませんでした。そこで、日本の家電メーカーが考えているような電子タグの使い方を標準として盛り込んでほしいという提案をしています。
EPCglobalの中にいろいろなアクショングループがありますが、その中で家電のグループを作るという動きがあります。CEDG(コンシューマ・エレクトロニクス・ディスカッション・グループ)が2006年10月に東京で立ち上がって、12月にソウルで会合を行いました。次回は、2007年5月にオーストリアで予定されていて、どのような活動内容になるのかがほぼ固まり、10月に香港で予定されている会合がアクショングループとしての第1回の活動になるでしょう。
そこでは日本のコンソーシアムメンバーを中心に、欧州やアジアのサプライヤやリテーラが参加し、どのような要求仕様を策定すべきかを話し合うことになるでしょう。
ウォルマートの考え方と何が違うかというと、ウォルマートはメーカーに対して入荷検品や在庫管理のための電子タグを外側の箱に張ってほしいといっていますが、家電業界は基本的には製品本体に電子タグを張って、それを保守や修理に使っていく、つまりライフサイクル全体で利用することを考えている点です。概念がちょっと違うわけですね。
――メーカーが製品に電子タグを張るようになったら、物流で使っている電子タグはやめて、統一しようという動きなのでしょうか
紀伊 そこはまだ見えていないですね。製品本体に張って、果たして本当に物流現場で読めるのかどうかというところが問題になっています。
実際の箱には、電源コードやリモコンといった付属品が同梱されています。そういうものと電子タグが重なると読めない。すると、製品に電子タグを張る位置と同梱物をどこに入れるかといった梱包の仕方を、全部検討する必要があります。
これは、数年かかると思うんです。だから、短期的には製品と箱と別々の電子タグで、それが5年10年運用していくうちに、2つあると面倒だから張り方や同梱物の位置まで決めていこうとなるのか、あるいはやはり難しいから2枚でいこうとなるのか予測はつきません。
――今年2月にコンソーシアムが行った実証実験では保証書に電子タグを張っていましたね
紀伊 保証書に電子タグを張ったのは実験のための暫定的なもので、基本的には製品に張ります。ただ、製品に張るとしても大きく2つの議論があります。製品本体の表面に張るのか、もしくは基板に組み込んでしまうのか。
それぞれ良い面と悪い面があって、外に張ればどこに電子タグがあるのか一目瞭然なので分かりやすいけれど、壊されたりはがされたりしやすい。逆に、製造工程の一環として基板などの製品に組み込むならば、製造後に張る場合と比べて余計なコストを削減できるかもしれないが、製品の外からではタグがどこに張られているのかわからないため読み取りが難しくなるかもしれない。
さらに、デジタルカメラのような小さなものの場合、金属の塊なのに本当に基板に組み込んで読めるのかという話になります。電子タグの張り方は、製品によって変わるかもしれません。
【関連記事】 近未来の家電売り場を探る―RFIDでライフサイクル管理 |
――海外の家電メーカーで同じようなことを検討されている例はありますか
紀伊 いや、ないと思いますね。ウォルマートがやっているのはメーカーから店舗までの物流での利用であり、われわれのように業界単位で製品ライフサイクル管理に使うというのは世界初だと思います。シャンプーとか食品みたいなものはウォルマートのモデルでいいけれど、飛行機や自動車、家電といった業界は、リサイクルも含めたライフサイクル全体管理になるはずです。その先鞭を、家電業界が付けるつもりです。
電子タグのメリットをどうPRするかが課題
――電子タグの利用に対して、プライバシー面を気にする人がいます。どのように考えていますか
紀伊 電子タグ利用のプライバシー面の懸念は、家電だけでなく書籍などほかの分野での利用でも同様に心配される点ですね。しかし、個人的には家電での電子タグ利用によるプライバシー問題はほとんどないだろうと思います。
例えば、泥棒が家の外からリーダを向けて、特定のメーカーの家電製品が多い家を狙うかというと、そんなことは考えられない。デジタルカメラや携帯電話、iPodなどの持ち歩くアイテムに対しても、誰が何を持っているか分かったから何だというか、そもそも見えているわけです。例えば、書籍なら読み取られることで思想が分かるということもあるでしょうが、家電では実質的な害はないでしょう。
――「電子タグに関するプライバシー保護ガイドライン」では、消費者が電子タグを外すという選択ができることが望ましいとなっています。しかし、それでは家電のライフサイクル管理は成り立たなくなると思いますが、いかがですか
紀伊 ガイドラインの「第4」には確かにそう書いてありますが、「第5」にはリサイクルなどで使われる場合など、電子タグをオフにすることが社会的利益と相反する場合は、消費者に情報を提供して、メリットが損なわれることを伝える努力をしなさいとされています。大多数の人はそういう目的だったら是認すると思います。
もしかしたら、店頭で「この製品には電子タグが付いていて、保守・修理・リサイクルに使われます。電子タグ内のデータには、名前や住所は入れませんが、製品の製造年月日や販売年月日、修理の履歴などが入れられる可能性があります。よろしいですか」といった書面にサインしてもらうことが必要になるかもしれません。
【関連リンク】 電子タグに関するプライバシー保護ガイドライン(PDF) |
紀伊 消費者に対して、電子タグのメリットをアピールしていくことも重要だと思います。ただし、「家電のライフサイクル管理」といわれても、消費者にはなかなかピンとこない。メーカーにとっては、例えば保守やリサイクルに利用できれば確かに便利になるでしょう。量販店にとっても、在庫管理などが効率化できれば、魅力的かもしれません。しかし、消費者が実際にそのメリットを享受するとなると、なかなかイメージがわきにくいのです。
消費者のメリットとしては、例えば故障した際の修理期間の短縮や、説明書や保証書を紛失した場合の代替としての利用、購入した製品が正規の製品かどうかの確認などがあり得ると思います。今後は、メーカーや小売だけではなく、消費者への啓発活動も重要だと思います。
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Index | |
RFIDで家電のライフサイクル管理を、家電電子タグコンソーシアム | |
Page1 3Rのためのツールとして始まった家電電子タグ 家電電子タグコンソーシアムが旗を振って、実証実験へ |
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Page2 ライフサイクル管理の概念を国際標準に提案 電子タグのメリットをどうPRするかが課題 |
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Page3 まだまだ詰めるべき運用面の課題が多い 家電へのRFID利用に関する今後の展望 |
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