RFIDで家電のライフサイクル管理を
家電電子タグコンソーシアム
柏木 恵子
2007年5月14日
まだまだ詰めるべき運用面の課題が多い
――コンソーシアムで検討しているそのほかの課題はありますか
紀伊 まず、電子タグを張る対象です。すべての家電製品に電子タグを張ることはできないと思っています。デジタル家電や白物家電はともかく、蛍光灯や電池などは今後もバーコードで十分でしょう。また、トースターやドライヤーといった、壊れても修理するか買い替えるか悩むような製品も細かい履歴管理が必要にならないでしょう。在庫管理にしか使わないようであれば、高価な電子タグは張れません。何にどのような電子タグを張るかをはっきりさせていく必要があります。
もう1つは、電子タグを張ったり管理したりするのは誰かという課題です。電子タグにはライフサイクル管理と物流管理の2つの使い方があります。製品を構成するパーツや製品そのものに電子タグを張るのはライフサイクル管理のためですから、それらはメーカーが張るものになるでしょう。
しかし、製品の箱といった個品レベル、箱を1ダース単位などにした梱包レベル、あるいは製品を台車やパレットに載せたときはどうするのか。輸送用のパレットやコンテナには物流業者が電子タグを張ると思いますが、それ以外ではどうするのかといった議論が尽くされていません。
ライフサイクル管理実現のための管理対象の定義 |
さらに、店舗の形態によっては電子タグ付きで納品される商品が家電だけとは限りません。家電量販店では、家電以外にも書籍やCD/DVDといった商品を取り扱うことがあります。それぞれで電子タグ運用のルールが異なっていたら、店舗側の作業は大変になることが容易に想像できます。
モノを運ぶ途中の入出荷検品や在庫管理のための電子タグの仕様やコードがバラバラになってしまったら効率が下がります。そのように考えると、家電メーカーだけでなく物流業者も含めて考えた方が良いと思います。
このほかには、電子タグの読み書きが発生する場面にはどのようなものがあるのか、電子タグに入れるデータとサーバで持つべきデータは何なのかを洗い出す作業も必要になります。
また、データそのものの定義も必要になります。例えば、「製造年月日」とは組み立て上がったときなのか、それとも工場から出荷されたときなのか。「販売年月日」は店舗で会計をしたときなのか、家に配送されてきて設置されたときなのか。
このように、検討すべき課題はいろいろありますが、それらを一つずつ丁寧にクリアしていく必要があります。課題が山積しており、なかなか普及までたどりつけないのではというご指摘もいただきますが、これは検討が具体的になればなるほど、実際の経済活動で電子タグを使うために必要な検討事項が明らかになってきているからだと認識しております。
家電へのRFID利用に関する今後の展望
――2007年2月に実施した実証実験のレポートはいつごろまとまりますか
紀伊 おそらく6月ごろには発表されるでしょう。すでに実験の結果はまとまっていて、具体的な数字が出せます。しかし、結果だけ出してもあまり意味がありません。現場レベルでは「良い話だね」となっても、それだけでは企業として、あるいは業界として進んでいくかといえば、決してそうならない。投資対効果はどうだというところから、業界としての方向性を明確に訴え掛けないといけないと思っています。
――2007年度はどのような取り組みを考えていますか
紀伊 すでに、2006年度から製品安全管理における電子タグ利活用の調査・研究が始まっています。製品ライフサイクル管理の中で製品安全に特化して、どうやったらうまくいくのか、データをどうするのか、どうやって製品に組み込むのかといった研究です。やはり重要なのが、消費者メリットをどのようにPRするのかです。プライバシーの話でもありましたが、これが重要で難しい。そのほか、ガイドラインの改訂にも取り組んでいます。これは、秋ごろに出せるでしょう。
電子タグはグローバルで広まりつつあります。日米欧アジアで異なる体系の電子タグを使って家電のライフサイクル管理が行われるようになると、困ったことになることが目に見えています。いまは大変ですが、共通のルールを策定して、統一的に管理できるようにしておけば、その先は明るい未来になるでしょうね。
家電のライフサイクル管理のイメージ |
3/3 |
Index | |
RFIDで家電のライフサイクル管理を、家電電子タグコンソーシアム | |
Page1 3Rのためのツールとして始まった家電電子タグ 家電電子タグコンソーシアムが旗を振って、実証実験へ |
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Page2 ライフサイクル管理の概念を国際標準に提案 電子タグのメリットをどうPRするかが課題 |
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Page3 まだまだ詰めるべき運用面の課題が多い 家電へのRFID利用に関する今後の展望 |
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