データをクラウドにアップし、外出先から利用できる「オンラインストレージ」。Dropbox、Pogoplug、SkyDriveの特徴とは?
オンラインにデータをアップロードし、外出先などからも利用できる「オンラインストレージ」は、ブロードバンド環境が整いつつあるころから人気のあるサービスではあるが、ここ最近ではオンラインストレージが新たな機能を搭載し、単なるオンラインでのデータ保管場所を超えた存在となりつつある。注目のクラウド型オンラインサービスを紹介、クラウド化したオンラインストレージの魅力を考えたい。
クラウド型オンラインストレージの代表格は、海外製のサービス「Dropbox」だろう。オンラインでデータを保管するという基本的な機能に加え、PCとの同期機能や他のユーザーとの共有機能が充実している点が特徴だ。
Dropboxの専用ソフトをPCにインストールすると、PCの特定フォルダにファイルを保存するだけでファイルがオンラインへ自動的にアップロードされる。普通にPCを使っているだけで自動的にバックアップされ、外出先からもアクセスできるという手軽さは非常に魅力的な機能だ。
複数PCでの同期機能も搭載しており、Dropboxのフォルダに保存したファイルはDropbox専用ソフトをインストールしたすべてのPCで自動的に同期されるため、複数のPCで同じファイルを利用できる。「外出先で使うファイルを前もってメールで共有する」といった作業が必要なく、「ただファイルを保存する」だけで他のPCでも利用できる便利さは一度使うと手放せない。
PC間のファイルを同期するというコンセプトは、かつてマイクロソフトが「FolderShare」というサービスで実現していたが、FolderShareはP2P型のサービスだったため、複数のPCで同期するためにはPC同士がオンライン状態である必要があるなど使い勝手に難があった。Dropboxはファイルをいったんオンラインにアップロードし、それを他のPCへ自動ダウンロードする形式なので、他のPCのオンライン状況を気にせず利用できるため、FolderShareのような課題も解決されている。
他のユーザーとのファイル共有可能で、フォルダ単位で共有したいユーザーを設定できる。他のユーザーがファイルを削除またはDropboxに設定していないフォルダに移動してしまうと自分のファイルも消えてしまうなど使い方が難しい面もあるが、仕組みを理解した上であれば、複数ユーザーでファイルを共有するのに非常に便利なツールだ。
共有は基本的にDropboxユーザー間に限られるが、「Public」フォルダに保存したファイルは、URLを発行することでDropboxユーザー以外もアクセスできる。ただし、Publicフォルダはファイル名がそのままURLとなり、セキュリティ面ではやや不安なところもある。基本的にはユーザー間の共有を前提とし、ユーザー以外へファイルを渡したいとき暫定的に使うのがいいだろう。
オンラインストレージと同期機能を備えたサービスは他にもSugarSyncなどいくつものサービスが立ち上がっており、国内でもYahoo! JAPANが「Yahoo! ボックス」を開始した。無料で5GB、Yahoo!プレミアム会員なら50GBまで利用できる他、今後は1000GBという大容量でも提供予定としており、大容量が魅力的なサービスだ。
機能面でもDropboxとほぼ同等の同期機能を備えるが、ファイル共有が有料会員のみの機能となっており、共有する相手が有料会員でなければ閲覧・編集のみしか利用できない。他ユーザーとの共有をメインにする場合に若干ネックだが、Yahoo!プレミアムの月額料金346円で50GBという低価格かつ大容量である点は魅力的。用途に合わせて使い分けるといいだろう。
オンラインストレージにNASを組み合わせたユニークなサービスが、米クラウドエンジンズが提供する「Pogoplug」だ。Pogoplugは、ハードディスクを接続したpogoplugを自宅などに設置すると、自宅ではLAN内でファイルを保存できるNASとして利用しつつ、外出先からはオンラインストレージとして利用できる。こちらもDropbox同様専用ソフトウェアをインストールすることで、外出先からもPogoplugをPC内蔵ディスクのように利用できる点が特徴だ。
オンラインサービスは容量が制限されがちだが、Pogoplugは接続するHDD次第で大容量のストレージを利用することも可能。TB容量のHDDも最近は1万円を切っており、自宅のNASとオンラインストレージを共用できるという点ではコストパフォーマンスも高い。自宅にアクセスするという仕組み上、自宅のインターネット接続環境でアクセス環境も異なるが、その分ファイルを自宅内ですべて管理できているというのはセキュリティ面でも安心だ。
スマートフォン連携機能も特徴的。AndroidやiPhoneからPCと同様にファイルのアップロードやダウンロードが可能なほか、保存した楽曲ファイルを再生するメディアプレーヤー機能、スマートフォンで撮影した写真や動画を自動でアップロードする機能なども搭載している。写真を自動でアップロードする機能はオンラインフォトサービスやSNSにもよくある機能だが、Pogoplugの違いは「ファイル」として利用できること。保存したファイルは自宅のPogoplugに「.jpg」などのファイルとして保存されるため、画像の編集や指定した写真だけをオンラインへアップロードするなど再利用しやすく、オンラインにすべてアップロードするサービスよりも利便性が高い。
Pogoplugに保存したファイルをURLベースで共有する、Pogoplugユーザー同士で特定のフォルダを自動で共有するなど共有機能も充実。自宅のインターネット回線次第で応答速度などの利便性が異なる、ディスク障害なども自己責任で対応する必要があるなど、オンラインサービスよりも使い方が難しい面もあるが、それを補って余りある特徴的な機能を備えたサービスだ。
無料ながら25GBという大容量が利用できるのがマイクロソフトのWindows Live 「SkyDrive」。1ファイルごと100MBまでアップロードが可能なため、動画などの大容量ファイルでなければほぼ問題なくアップロード可能。マイクロソフトのサービスながらWindows PhoneはもちろんAndroidやiPhoneにも対応しており、スマートフォン連携も充実している。
ファイルを保存するだけでなく、オンラインで保存したままアプリケーションとして利用できるという点で特徴的なのがこのSkyDriveだ。
ExcelやWord、PowerPointといったOffice文書をSkyDriveに保存すると、SkyDriveから直接閲覧や編集が可能。さらにSkyDriveから直接ファイルを新規作成できるなど、Office機能が非常に充実している。
Office文書のオンライン編集はGoogleドキュメントでも可能であり、Dropboxに保存したOffice文書を閲覧できる「GT-Document」といったAndroidアプリも存在するが、SkyDriveの強みはマイクロソフトが自ら提供するOffice機能ということ。ブラウザ上の再現性も高く、WordもExcelもPowerPointもクライアントソフトと同じインターフェイスで利用できる。ビジネスなどでOffice利用が多いユーザーには注目の機能だろう。
これまでもファイルをオンラインに保存し、外出先からも利用できるオンラインストレージサービスは数多く存在したが、ディスク容量の制限や利用できる端末の少なさから、どちらかといえばデータを「預ける」という利用形態に近かった。
これに対しクラウド型のオンラインストレージサービスは、データが自動的に保存され、オンラインを意識せずに使えるという点が大きな違い。利用端末もPCだけでなくスマートフォンにも対応が広がるなど「いつでも、どこでも、どの端末からでも」利用できることで、保存先を意識せず使えるようになっている。
単なるデータ保存だけでなく、オンラインで保存したデータをそのままアプリとして利用できる点も新しい。Pogoplugのようなプレーヤー機能やWindows Live SkydriveのOffice機能は、データを「預ける」以上の利便性をもたらしてくれる。こうした「データの保存」を超えてさらなる活用が可能になるクラウド型のオンラインストレージサービスは今後もますます広がりそうだ。
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