複数のディスクを組み合わせて使うストライプ・ボリュームとミラー・ボリューム。その作り方や障害時の対応方法は?
仮想化ソフトウェアを利用すれば、実機ではなかなかできないようなことでも簡単に行える。前回は、仮想環境におけるディスク関連の話題について取り上げた。Windows OSにおけるディスク管理の基礎や、サポートされている仮想ディスクの最大数、最大サイズ、ファイル・システムの制限などについても見てきた。今回は、ストライプやミラー・ボリューム、および障害の発生したミラー・ボリュームの復旧方法などについて見ていく。
ストライプ(ストライピング)は、別名RAID-0とも呼ばれ、複数のディスクに対して同時にアクセスしてアクセス性能を高める技術である。前回解説したスパン・ボリュームと似ているが、ストライプ・ボリュームの場合、構成する複数のディスクに対して同時にアクセスして、読み書き速度を高めている。例えば4台のディスクで構成されたストライプ・ボリュームに1Mbytesのデータを書き込んだ場合、それぞれのディスクに対して256Kbytesずつ同時に書き込み、書き込み速度を向上させている。読み出し時も同時にアクセスするので、ただ1台のディスクにアクセスする場合と比べて、理論上は最大4倍の高速化が行える。これに対してスパン・ボリュームの場合は、先頭のディスクから順番にボリュームに割り当てていくため、アクセス速度は向上しない。
もっともこの高速化は、物理ディスクでストライプ・ディスクを利用する場合の話である。ストライプ・ボリュームを構成する複数の仮想ディスクを同じ物理ディスク上に配置すると、ディスクの並列化による速度向上がまったく期待できないばかりか、物理ディスクでヘッド・シークが頻繁に生じるため、仮想ディスク1台のときよりも遅くなる可能性がある。だが機能的には仮想環境上でもほぼ同様に動作するので、ストライプやミラーなどのテストをすることは可能である。
ストライプ・ボリュームを利用するためには、2台以上の仮想ディスクを作成し、それを仮想マシンに接続する。スパン・ボリュームの場合と同様に、2台以上、最大32台までのディスクを1つのストライプとして設定できる。仮想ディスクのサイズは最大2Tbytesまでなので、32台でストライプ・ボリュームを作成すると、最大で64Tbytesのボリュームが作成できる。ただしスパン・ボリュームの場合と同様に、NTFS形式でフォーマットしても、作成できるファイルの最大サイズは(現在のところ)16Tbytesまでである(詳細は前回の記事参照)。
それぞれのディスクに同時にアクセスするため、各ディスクからは同じサイズだけ領域が確保される。ディスクのサイズが異なっていたり、すでにほかのパーティションなどが存在していたりする場合は、一番小さい空き領域サイズに合わせてストライプ・ボリュームの最大サイズが決定される。
以下に作成したストライプ・ボリュームの例を示す。3台のディスクにまたがって、すべて同じドライブ名が割り当てられていることが分かるだろう。
それでは、いま作成したストライプ・ボリュームやスパン・ボリュームの1つに障害が発生したらどうなるか実験してみよう。現実のコンピュータでは、ディスクが壊れることはよくあるので、その状況を体験しておくのは重要だからだ。
とはいえ、仮想マシン環境で再現可能なディスク・システムの障害は現実のものとは異なり、かなり限定されている。例えば一部分のセクタが読み書きできない、シーク・エラーになる、だんだん不良セクタが増える、いくつかのコマンドに応答しなくなる、応答速度が極端に遅くなってエラーを返す(現実のディスクでは不良セクタに遭遇すると何回かリトライし、最後はエラーを返す)、などといった症状は再現できない。せいぜい、まったくアクセスできなくなるか(ディスクを取り外した状態にするか、オフラインにする)、書き込まれているはずのデータがなくなる(ゼロ・データで上書きする)といった状態にしかできない。
今回は簡単にテストできるように、ディスクの先頭部分(ブート・セクタやパーティション・テーブル、パーティションの先頭部分)をゼロ・クリアするという障害を発生させてみる。具体的には、diskpartコマンドでディスクを選択し、cleanコマンドで先頭部分を消去してみる(前回の記事や、TIPS「diskpartのcleanコマンドでディスクの内容を消去する」参照)。実行すると次のようになる。
一番下に障害が発生したディスクやボリュームの情報が表示されているが、これはストライプを構成するディスクの1つが見つからないというエラーを表している(スパン・ボリュームの場合も同様に表示される)。
ストライプ・ボリュームやスパン・ボリュームの場合、データに対する冗長性や訂正能力はないため、このような状態になったら、もうデータの復旧はあきらめるしかない。ボリュームの再生も不可能なため、ユーザーが可能な唯一の操作は、ボリュームの削除((8))だけである。削除後、またディスクを接続/初期化して、新たにボリュームを作成し直す。
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