本記事では、Oracleが提供する.NETプラットフォーム開発向けのミドルウェアやツールを使って、.NET環境でOracleアプリケーション開発を効率的に行うためのノウハウを解説する。(編集部)
今回は、実際の開発のシーンで「Oracle Developer Tools for Visual Studio .NET」(以下、ODT)をどのように使うかにフォーカスを当てて説明します。単に機能を説明しても少々退屈ですので、サンプルのアプリケーションを作成する中でODTの説明を行います。
データベース・アプリケーションを作成する場合、実際のアプリケーション開発のみならず、データベースの設定などが必要なケースも多くあります。このサンプル・アプリケーションの作成は、今回の「データベース設定編」と次回の「アプリケーション作成編」の2回に分けて行います。どちらもODTの機能をフル活用したVisual Studio .NET(以下、VS.NET)上からの作業となります。
サンプル・アプリケーションの作成に入る前に、ODTのインストールとVS.NETでの環境の設定を行いましょう。この作業の詳細については、OTN-Jの「.NET Developer Center」にドキュメントがありますので、ここでは概略のみを説明します。
VS.NETがインストールされた環境に、ODTをインストールします。インストール作業はおなじみのOracle Universal Installer(図1)より行います。
インストール後、VS.NETのメニューから「表示」をクリックして、Oracleエクスプローラを表示します(図2)。
ODTをインストールした当初はデータベースへの接続がありませんので、新しくデータベースへの接続を作成します。今回は、SCOTTユーザーでの接続とSYSTEMユーザーでの接続を作成しておきます。新しく接続を作成するためには、Oracleエクスプローラの「データ接続」を右クリックして、サブメニューの「接続を追加」をクリックします(図3)。
接続対象となるデータベースのデータソース名(接続識別子)をプルダウンから選択し、ユーザー名としてSCOTTを、パスワードにはSCOTTユーザーのパスワードを入力して「OK」をクリックすることで、SCOTTユーザーとしての接続が作成されます。同様の作業を繰り返し、SYSTEMユーザーの接続も作成しておきます。
まず、今回作成するサンプル・アプリケーションの概要について説明します。今回は「Oracle Data Provider for .NET」(以下、ODP.NET)10.2の新機能であるClientIdの機能を使用して、セキュリティを高めるサンプル・アプリケーションを作成することにします注1。
図4のサンプル・アプリケーションは、ClientIdを入力するテキストボックスに適当な値を入力し、検索ボタンを押すことで、ClientId値に応じた結果を返します。
このアプリケーションは、Oracleデータベースの「Virtual Private Database」(以下、VPD)の機能を使用します。まず簡単にVPDの説明を行い、ODTの機能を使用してVS.NETからOracleデータベースの設定を行います。
VPDの概念図は以下のようになります。
VPDでは、表、ビュー、シノニムに対して直接ポリシー(アクセス制御を定めたルール)を作成します。ユーザーがポリシー付きのオブジェクトにアクセスする場合、アプリケーションに関係なく、必ずこのポリシーが適用されます。ポリシーが設定された表にアクセスがあった場合、その問い合わせに対して、ポリシーに従う形で内部的にSQL文が書き換えられて実行されます。
VPDを使用することで、アーキテクチャ的に回避できないアクセス制御を提供でき、また、行レベルや列レベルでの細やかなアクセス制御を実装することが可能です。VPDのメリットを簡単にまとめると以下のようになります。
これらのポリシーの作成やポリシーを実現するファンクションの作成はデータベース上で行う作業になります。ODTを使用することで、これらデータベース上の作業もVS.NET上から行うことが可能です。それでは、VPDの設定をVS.NETから行ってみましょう。(次ページへ続く)
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