Oracle Clusterwareの導入により、可用性と親和性に加えて、実はもう1つ、価格面でもメリットがあります。
まずHA Cluster構成の場合、前述したようにOracle Clusterwareが使えないため、他社ベンダのクラスタウェアを購入する必要があります。RAC構成の場合は、別途クラスタウェアを購入する必要がないため、比較的安価で構築することが可能です。
RACの価格ですが、Enterprise EditionとStandard Editionで異なります。Enterprise Editionを購入する場合、有償オプションであるRACを購入する必要があります。一方Standard Editionでは、別途有償オプションを購入する必要はありません。これは、Standard Editionで使用可能な機能に、RACが含まれているためです(表1)
Enterprise Edition | Standard Edition | |||
---|---|---|---|---|
Processor (1CPU当たり) |
Named User Plus (1CPU当たり) |
Processor (1CPU当たり) |
Named User Plus (1サーバ当たり) |
|
Oracle Database本体 | 500万円 | 10万円 | 187万5000円 | 3万7500円 |
RACオプション | 250万円 | 5万円 | − | − |
最小ユーザー数 | − | 25 | − | 5 |
合計 | 750万円 | 375万円 | 187万5000円 | 18万7500円 |
表1 Oracleのエディションごとのライセンス価格 価格はすべて税抜き |
ただし、Standard EditionでのRACの使用は制限付きとなりますので、内容をよく把握しておく必要があります。制限は、以下の3つです。
それぞれについて説明します。
各OSによって異なりますが、Standard Editionではシステムに搭載可能なCPUソケット数に制限があります。具体的には、
上記が、RAC環境に搭載可能なCPUソケット数です。RACは複数のサーバから構成されるので、1台のサーバに搭載可能なCPUソケット数は、サーバ台数によって変わります(表2)。
サーバ1台に 搭載可能 なCPUソケット数 |
掛ける | サーバ台数 | IAサーバ、もしくは Apple Mac OS (最大4) |
そのほか (最大2) |
---|---|---|---|---|
↓1 | × | 2 | ○ | ○ |
1 | × | 3 | ○ | - |
1 | × | 4 | ○ | - |
2 | × | 2 | ○ | - |
2 | × | 4 | - | - |
4 | × | 2 | - | - |
表2 SE RACのCPUソケット数の制限 |
このように、Standard EditionではRAC環境を構成するサーバ台数や、搭載可能CPU数に限りがあります。仮にデータや処理の負荷が増えたとしても、サーバの増設やCPUの追加ができないケースが考えられます。この点からSE RACは、比較的「中・小規模」で、かつ「拡張性より可用性」を重視するシステムに向いているといえます。
親和性の話でも記載しましたが、クラスタウェアには多くの製品があり、それぞれに長所があります。しかしSE RACでは、そういった他社ベンダのクラスタウェアは使用できません。
もし、いままで使い慣れたクラスタウェアがあり、それを継続して使用したい場合は、Enterprise Editionを購入する必要があります注2。そのためSE RACを選択する際には、ほかのクラスタウェアと比べたときのOracle Clusterwareの機能を十分に確認する必要があります。
注2:Enterprise Editionを購入し、他社のクラスタウェアを導入する場合でも、Oracle Clusterwareの導入は必須です。その場合Oracle Clusterwareは、データベースとほかのクラスタウェアとの仲介役となります。
Oracle 10gの新機能に、ASMがあります。例えるなら「オラクル社製Cluster Volume Manager」といった位置付けです。OSでRaw Deviceの作成ができれば、ASMがRaw Deviceをまとめてディスクグループを作成します。Oracle Databaseは、そのディスクグループにデータベースを構成します。
これまですべてのプラットフォームに対応したCluster File Systemを持っていなかったオラクル社は、RAC環境を構築する際、他社のCluster File Systemを導入するかRaw Deviceを使用するかの選択肢しかありませんでした。他社製品の導入には別途費用がかかりますし、相性の問題もあります。また、Raw Deviceによるデータベースの運用は困難であり、管理者に負荷がかかります。
ASMの登場により、これらの問題が緩和されました。詳細は後述します。
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